カワイイ娘ニハ旅ヲサセヨ

十二国記 〜紅蓮の標 黄塵の路〜赫々たる王道 紅緑の羽化〜(PS2)

ラノベかな?

2003年:十二国記 〜紅蓮の標 黄塵の路〜
2004年:十二国記 〜赫々たる王道 紅緑の羽化〜


私を異界へ喚んだのは、誰!?
ある日突然、謎の青年・景麒が現れ、見知らぬ土地へと連れ去られた陽子。
そして、闇から躍り出る魔獣たちが、容赦なく襲い掛かる。
帰るあてもないこの異界で、陽子の待ち受ける新たな運命とは・・・

小野不由美原作の大人気ファンタジー小説がアニメに続いてゲーム化。
十二国記シリーズの2作品を、まさかの原作を一切知らないでプレイ!
ゲーム→小説→アニメの順で楽しんだという、超変化球レビューです。

ゲーム紹介動画(YOUTUBE)



【十二国記〜紅蓮の標 黄塵の路〜レビュー】

1.数多くのADV分岐点

"女の子主人公だから"という動機だけで購入した本作。
まさかラノベ感全開の異世界ファンタジー作品だとは思わなかった・・・。
この手のゲームは原作を知らずにプレイするのはかなり厳しい。
そこで、
公式攻略ガイドブックを購入してプレイ。
この攻略本を見て仰天しました。なんというシナリオ分岐の多さ!
原作シナリオをこんなにも変えちゃっていいのか?
しかし蓋を開けてみたら、これがまたよくできているADVになっています。
開始直後の大きな分岐では、アニメ版シナリオ「杉本同伴ルート」、
原作小説シナリオ「陽子単独ルート」に別れます。
アニメから入った人も、小説から入った人でも、十分楽しめるでしょう。
2.RPGパートはおまけ要素に近い

ジャンルはアドベンチャーRPGなのだが、これはADVを楽しむゲーム。
異世界ファンタジー作品なのでRPG化しやすい題材ですが、
十二国記はラノベのようでラノベではない変わった作品。
主人公の陽子もずっと一人旅なので、RPGとして膨らませるのは難しい。

敵との戦闘は、中盤までADVパートの流れで戦うことになります。
レベル上げをしたり、探索したりというRPGの楽しみ方はできない。
敵を倒して入手できる属性石を、武器のカスタマイズして強化する程度。
また、アイテムの種類が異常に多い。
世界観を際立たせるための演出と思うが、他の部分に力を入れてほしかった。
ちなみに、2周目引継ぎ要素がない。なにしてんねんKONAMI・・・
3.原作と違ったシナリオを楽しむのも一興

ADVの分岐には、主人公:陽子の"王気"に影響します。
この王気は3種類、勇気の王・慈悲の王・冷徹の王があります。
最も高い王気によって、最終章の展開が変わり、6種類のEDがあります。
原作通りなら勇気の王になりそうですが、他人を信じられなくなる展開に
嫌気が差したら、鬼になればいい!
陽子を助けてくれた、飴をくれる玉葉親子に襲い掛かることもできる。

オリジナルキャラクターも健在。
杉本の同伴有無で大きく分岐した後、オリジナルキャラの3つに分岐。
さらに楽俊or延王ルートが複雑分岐、そしてEDの王気分岐へと至る。
原作と異なった展開を十分楽しめるでしょう。
総評:シナリオの完成度は高い、だがしかし・・・
総合的には50点程度。
原作を壊さずに様々なルートを用意したシナリオを、フルボイスで仕上げたのは素晴らしい。
かなり複雑な展開を矛盾点なくシナリオを組み立ててあります。相当苦労したはず。声優さんもね。
ちなみに、原作を知らずにプレイした私にとっては、突然の異世界に迷い込むシナリオに嫌気がさしました。
日本にいるときは周囲の人間がみんなクズ。十二国に流れついたあとも、ことごとく裏切られる。なんだこのシナリオは、と。
(原作小説を読んでみたら、思いのほか原作通りでした。映像・ボイスがつくとかなりキツく感じますね。)
RPGパートについては厳しい評価になるが、それよりもADVとして2周目以降のプレイが苦痛でしかないシステムが問題。
これだけ多くの分岐パートを作っておいて、アイテム・レベル・能力すべて2周目はリセットされるとか致命的。
あとは演出かな。オープニングなし、エンディングも簡素で盛り上がりに欠けます。
いい点もあげておきます。
小説は読まずにアニメだけ見た方にとって、難解な世界観と聞きなれない古代中国用語の数々はかなりわかりにくい。
その点ゲームをやればテキストで表示されるので、理解度が深まります。人物名も覚えやすいですよ。

【十二国記〜赫々たる王道 紅緑の羽化〜レビュー】

1.堅苦しい政治がはじまる

前作で慶国の王となった陽子。今回は政治につくことになる。
― 政は頼りになる官が見つかるまでが苦しい ―
異世界から来た陽子にはこの世界の知識がない。
そこで、こっそり王宮を出て市井の様子を伺い、見聞を広めるという物語。
まずは、遠甫という"道を知る者"だという老人にお世話になる。
ここまでは原作同様。
いくつか選択肢が出るが、ADV要素は薄くシナリオは一本道。
第二章からはオリジナルストーリーとなり、最終章で原作に回帰します。
シナリオを通して、主人公:陽子の視点でのみ描かれるので、
二人の少女、鈴と祥瓊の物語はほとんど語られることはない。
そのため、原作を知らないとどうしようもない。
2.ADVパートは廃し、RPGパートを強化

原作シナリオがゲームには不向きのため、ADV要素は廃止したと思われる。
物語を知った上で、陽子の視点で楽しめるようRPG部分を強化。
前作では一人旅だった戦闘も、三人パーティで編成できる。
半獣の楽俊、オリジナルキャラ2名が加わる。最終章で桓魁と虎嘯が加入。

システムも変化し、水寓刀のカスタマイズがなくなり、
使令(召喚獣)をセットしてステータスを強化。特殊技を使えるようになる。
LV上げやダンジョン探索などRPG要素がかなり増えています。
ただ、前作よりも属性のダメージ反映が雑になっている印象を受ける。
中盤あたりからは、戦闘に少し飽きが来る。もうひと工夫必要かな。
3.オリジナルストーリーを堪能できる

序盤と終盤が原作シナリオ。中盤はまるごとオリジナルシナリオだ。
原作イベント部分は、アニメのシーンのイラストを見ることができる。
オリジナル部分ですが、不自然な部分はないので安心。
全7章で構成されており、朝議で出されたミッションをこなしていく。
ルート分岐は2回だけある。

ゲーム システムは全般強化されていて、ミニゲームも増えています。
護衛の召喚獣集め、称号集め、札帳集め、イラスト集めと充実。
十二国記大好きな人のためのクイズも、さらに100問追加されています。
クイズが超難問!
小説「黄昏の岸 暁の天」まで読んでないと厳しいぞ。
総評:良くもなく悪くもなく、ファン向け作品。
総合的には40点程度。
RPG部分を強化したので、遊びやすくなってはいる。だが原作を知らないと話にならない。
ちなみに、原作となる「風の万里 黎明の空」は、陽子が主人公ではないのだ。
明治時代の海客の少女:大木鈴、国を乱した芳王の娘:祥瓊、慶国の王となった:陽子。
この三人の成長ストーリーであり、それぞれの思いを胸に3人が運命の邂逅をはたす。ファンタジー色の薄い作品だ。
私はゲームから入ったわけだから、大木鈴と祥瓊のシナリオが語られないまま最終章へ。急展開について行けず・・・。
終わりどころもわからないので、「え?さっきのラスボスだったのかよ」状態でED。
演出も弱い。
この後小説を読んで、アニメ「風の万里 黎明の空」編を見たが、よく映像化できたなと感心。
やはりこの原作シナリオでゲーム化は無理があったと思う。

十二国記シリーズ感想

ゲームをはじめて数十分。「これは合わない」と感じました。
このラノベ臭全開のはじまり方はダメだ、と。
日本のごく普通の女子高生が、わけのわからない異世界に連れ去られるというファンタジー展開。

プロローグで景麒の問いに、10回「許す」と答えないでいるとゲームオーバー。開始5分でバッドエンドだ。
陽子の迷い込んだ異世界は、古代中国に似ているが、完全に原作者の頭の中の架空世界。
全ての生物は木の実から生まれる、仙籍に入ると年をとらなくなる、などなどファンタジーすぎる設定の数々。
異世界ファンタジーが苦手な私には終盤まで馴染めませんでした。

続けて〜赫々たる王道 紅緑の羽化〜をプレイ。
こちらは舞台設定が整って、陽子が慶国の王になっており、独特な世界観も頭に入っていたので問題ありませんでした。
ただ、シナリオが語られていない部分が多すぎる。
原作を知らずにプレイする人は私くらいしかいないでしょう。知っていればそこそこ楽しめたと思います。

RPGらしくなって、フィールド移動もできるようになった。キャラクターもかわいい!
楽俊を筆頭に様々な技を堪能できるので、原作好きにはもってこい!
しかし最終章のシナリオが、いまいちピンとこない。なので小説を読みました。

原作小説シリーズの感想

参りました。こりゃ売れるわけだ。
小野不由美の小説は読んだことがなかったが、「屍鬼」は有名なので名前は知っていた。
この「十二国記」にはシリーズ順番がなく、ナンバリングされていない。
登場人物も各国の様々なキャラクターに焦点をあてている。このシリーズが完結することはないでしょう。
さて、今回はオススメの読む順番を紹介しよう!(講談社版ではなく、挿絵が少し入っている新潮社版を読みましょう)
まずは陽子が主人公のシリーズ2作目「月の影 影の海」だ。

これが〜紅蓮の標 黄塵の路〜のシナリオとなっているが、ゲーム最終章の偽王:舒栄を倒すシナリオは描かれていない。
まずはこの作品から読みました。はっきり言って、面白くない。
もしゲームもアニメも知らずに小説から入っていたら、間違いなく投げていたと思う。
文章はかなり丁寧で心理描写の変化も上手い。ラノベとは大違いではあるが、何しろ異世界ファンタジー色が強すぎる。
ただ、ゲームをやったことで、視覚を通して想像しやすくわかりやすかった。面白くないが、これを読まないことには始まらない。
だから我慢して、続けて5作目「風の万里 黎明の空」を読んでほしい。

これが、〜赫々たる王道 紅緑の羽化〜のシナリオになる。
ここで一気に「十二国記」の考え方が変わった。はっきり言って、面白い。
プロローグは、東京へ向かう途中に虚海に流されてしまう大木鈴ちゃんのシナリオからはじまる。
この作品の主役は、大木鈴・祥瓊・陽子の3人。この女の子3人の成長過程が実に見事に書かれている。
アニメやゲームを体験済みの場合、次は4作目「東の海神 西の滄海」がいいだろう。

陽子に助力する延王:小松尚隆と、麒麟:六太の物語。実に500年前のことだ。
外伝的な意味合いだからといって、読まずに避けるたりしないように。なぜならこのあとは全部外伝なのだ。
次にオススメするのは、全く別の国での出来事を触れるといい。3作目「風の海 迷宮の岸」だ。

本作では"麒麟"という存在がどういうものかよくわかる。もう十二国記の虜になっているはず。
南に位置する泰国。そこの麒麟:泰麒が生まれる前に"蝕"に流され、日本にいた。
ただ、日本にいる場面は語られないので、異世界ファンタジー色は薄めだから大丈夫。
ちなみにこの主人公:泰麒のその後にあたる作品がある。
それが1作目「魔性の子」だ。しかしこれは無理して読まなくていい。舞台は完全に日本で、これだけ毛色が違うホラー作品だ。
そこで、今度は北西の恭国の物語。6作目「図南の翼」へ挑もう。

12歳のヤンチャ娘が王になるために旅へ出る物語。この作品がヤバすぎる、ハイパー面白い!
「風の万里 黎明の空」でチョットだけ登場した恭国の女王:珠晶ちゃん。彼女の90年前のサクセスストーリーだ。
祥瓊が恭国にいたシーンで、麒麟に「アンタってほんとうバカね」と言い放ち、豪快にビンタしたインパクトは忘れられない。
珠晶ちゃんは芯がしっかりした子だから感情移入しやすい。終盤の盛り上がりがすごい、そしてラストシーンで思わずニヤリ。
今までの作品は余興に過ぎなかったのだ。
当サイトを見ている人なら、小さな少女が頑張る作品が好きな人も多いでしょう。そんな人には絶対に損はさせない自信がある。
最後は7作目「黄昏の岸 暁の天」で締めようじゃないか。

陽子も出てくるので読みやすいでしょう。3作目「風の海 迷宮の岸」の続編という位置づけ。
さすがに「図南の翼」の後だと物足りなさはあるが、シリーズ集大成と言える。面白いかどうかは言うまでもない。
この後に発売されたシリーズは短編集ですので割愛します。

十二国記は、ラノベ作品しか読まない若者層がラノベ卒業のいい機会になる大作小説だ。
これは中国歴史小説の部類に入れていいでしょう。
夢枕獏の「沙門空海 唐の国にて鬼と宴す」以来、久々に中国史小説で面白い作品に出会えた。ありがとう。

さぁ、小説読み終えたらやることが残っていますよ!

ゲームに戻りましょう。六太の十二国記講座で、クイズに挑戦しよう!
何も知らずにゲーム1作目をプレイしたときには、初級編すらなかなかクリアできなかった私が100問突破しました。
ゲーム2作目なら全200問用意されています。十二国記の"道"は険しいですぞ。

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