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2006年3月 Archive
パーヤン危機一髪
- 2006年3月21日 15:16
■1995年 12月3日
科学部に入部してから早1月。
憧れの紐緒さんと同じ班で研究が出来るようになったものの
部活中の会話が
(機嫌の良い時)
俺
「紐緒さん」
紐緒
「集中出来ないわ。静かにしてて頂戴」
(機嫌の悪い時)
俺
「紐緒さん」
紐緒
「煩いわね。黙ってなさい」
の2、3パターンしか無いのは問題外だ。
何より彼女は最近、本格的に生体工学の研究を始めた様で、
体全体が黒の斑点模様で覆われている
青色の蛙を研究室にサンプルとして持ち込んでは
紐緒
「トシオ、餌よ」
と、木の殻に包まれたままのミノ虫を
10分おきに食べさせては頭を撫でて可愛がるという、
ほぼペット状態での扱いで熱心に世話を焼いており
ワクワク、パーヤン両先輩と僕は蚊帳の外で目もくれられない。
そして、この前パーヤン先輩が
その青色蛙が分泌した緑色の液体を浴びてしまったのだが
その際、普段顔色を変えない紐緒さんが顔面蒼白になって
紐緒
「小宮っ!これを飲みなさい今すぐによ!」
と、白衣の懐から取り出した黄緑色の液体と
500CCビーカー一杯分の水をパーヤン先輩に突きつけた。
先輩は紐緒さんのその尋常ならぬ態度に身の危険を察知し、
すぐ様手渡された液体を飲み込んだ。
すると紐緒さんは間髪入れずに
紐緒
「いいことっ今日一杯かけて10リットル分の水分を取りなさい!
でないと貴方は3日以内に全身に巨大な発疹が出来て死ぬわ!」
と、言い放ち、途端、部内は一堂騒然となり
その後部長から呼び出された紐緒さんは
部内への一切の研究生物の持込の禁止と
一週間の謹慎処分を言い渡された。
何やら揉めたそうだが今後の事を考慮したのか、
彼女はその条件を渋々飲み一週間の研究課題を
命じられ帰路についた。
ちょっと待て?もしやこれは大チャンスではないだろうか。
日ごろ放課後まで研究部室に入り浸り、
独自研究を続ける紐緒さんに声をかけるタイミングは
皆無に等しかったけれど、
今は学校内研究室の一切は禁止されている。
という事は、
独自研究を念頭におく彼女の行動パターンからいけば、
放課後は必然的に自宅研究を行っている筈っ
そして幸運な事に俺の手元には以前好雄から入手した
紐緒さんの個人データ+電話番号がある。
科学部の連絡網には彼女のデータファイルは一切なく
当然電話番号も記載されていないので、
部員彼女の連絡先を知っているのは俺だけなのだ。
俺は彼女の自宅に初めて電話をかける興奮と、
ドキドキと抑えきれぬ胸の鼓動を手のひらで押さえながら
受話器を手に取った
そして彼女が出た
俺
「あ、紐緒さんかい?
俺だよ同班で研究をしてる田中だけど」

紐緒
「なによ、貴方なの。最近馴れ馴れしいわね。
一体何の用?」
俺
「いや、この前研究所でゴタゴタがあって
今科学部に立ち入り禁止になってるから。
もし研究室に忘れてきて必要な物があれば
俺が代わりに取ってこようかなって思って」
我ながら見事な機転だ、
この言い回しなら不自然な好意を悟られる事なく
こちらの親切が彼女に吉として伝わる筈
紐緒
「貴方私の注意力をナメてるの?
あたしの管理能力と行動回路は置き忘れなんていう
陳腐な事はしないわ」
しまった、彼女の対人能力は
人の親切心を感じ取るセンサーが破損していたんだ
すっかり忘れていた
俺
「あ、そうか。
ごめんよ、何か役に立てる事があればと思って」
紐緒
「まあ、貴方の忠誠心は買っておきましょう。
あ、そうだ小宮に渡したい錠剤薬があるんだけど、
貴方彼女の電話番号は持っているかしら?」
俺
「あ、連絡網に載ってたと思う、ちょっと待ってね…
えーと…」
俺は科学部の連絡網に載ってた
パーヤン先輩の家の電話番号を彼女に伝えた
紐緒
「ご苦労様、まあ、ありがとうと言っておくわ。
不慮の事故とはいえこの年で人殺しにはなりたくないもの」
どういう生き物だったのだろうあれは…

紐緒
「それじゃあ、
私研究で忙しくて貴方の相手してられないの。
出来ればもうかけてこないで頂戴」
俺
「あ、ごめん。解った、必要最低限にするよ」
そういって俺は電話を切った。
パーヤン先輩
そういえば今日は学校休んでたけど
生きてんのかなぁ…

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モアベター
- 2006年3月17日 15:06
■1995年 10月15日
科学部に入部して始めの一週間。
文化祭まで後2週間を切っており何かと活動に忙しい時期ではあるが
入りたての部活動でそこまで考える余裕は今の俺には無い。
部活動1日目、俺はパーヤンとワクワクさんの先輩二人に
手取り足取り実験のイロハを教えてもらった。
先輩二人は思いの他、教え方が上手で
俺は1日目にして機材の扱い方、薬剤調合のコツ等、
基本的な事は一通りマスターする事が出来た。
さて、当の目的である紐緒さんであるが
同じグループで部活動をしているものの
部長に言われた研究テーマを全て無視し
ノートに向かってブツブツ独り言を言いながら
書き込みをし続けているかと思えば、
急に机を「ダン!」と叩き
「見えたわ!!!α Ω+3Wよ!」
等と宜保愛子ばりの突発的な発作を起こし
急に僕等グループ仲間を指差し
紐緒
「何ボサっとしてるの!
フラスコとエタノール液それと電球を2個っ
そして+−ドライバーを用意しなさい!
単一電池を5本よ!」
と叫び、鬼の形相でこちらを睨みつけ
紐緒
「何してるの!さっさとして頂戴!」
と、ヒステリックに研究材料を催促してきた。
この異常事態にパーヤンとワクワク先輩の二人は特に驚く様子も無く、
慣れた様子で紐緒さんの提示した材料を用意しに散った。
仕方ないので自分も紐緒さんに言われるがまま材料を探しにいった。
そして材料を集め机に置くと、
紐緒さんは不気味な笑みを浮かべながら
ポケットから複雑な形をした金属部品を
次々と取り出し特殊工具を使い組み立てていった。
その間、実に10分程。彼女は驚くべきスピードで
ラジコンについてるリモコンの様な形をした機械と、
せみ程の大きさの虫型ロボットを作り上げてしまった。
俺「ひ、紐緒さん…これは一体」
紐緒
「ふっふっふっ…これぞ低予算かつ、
最小限の材料で構成された超高性能スパイ衛星ロボ、
《ムシケラー1号》よ!」
わくわく&パーヤン先輩
「お〜!」
俺
「しかし、これどうやって使うの?」
紐緒
「簡単な事よ、まずこのロボのスイッチをボタンでONにする。
起動確認が出来たらこのロボの視線レンズから見えた映像情報が
手元のコントローラの液晶に映像として表示されるわ。
まあ、遠隔操作に慣れるには多少時間がかかるかけど
ゲーム感覚で出来ると思うわ」
たった数時間の研究の間にこんな高性能メカの構成を…
一体彼女の頭はどうなってるんだろう
と、彼女は淡々とその機械の構図を説明すると
理数系らしい態度で論より証拠といった具合に
そのメカのボタンをボャッキーよろしくポチっとしてみせた。
すると横に置かれたムシケラーが金属質な音を立てて羽ばたき
実験室の窓から外に飛び出していった
パーヤン
「凄いわー!本当に飛んじゃったのね!」
パーヤン先輩が驚いていると、
俺はその虫ロボが捉えた映像が気になり
コントローラーに表示された映像を覗かせてもらった。
俺
「紐緒さんちょっと覗かせてもらうよ」
紐緒
「あら、ズウズウしいわね。
まあいいでしょう。手伝ってもらった御礼よ、
少しだけ見ていいわ」
覗いた液晶モニタの中には何と
帰宅途中の穴吹が映っていた。
何やら足元に落ちている
雑誌をじーっと見つめながら
股間を押さえている様だ。
こいつは本当に何を考えているのだろうか。
何はともあれ紐緒さんの才能は本当に素晴らしい。
彼女なら本当に僕の体を任せられるかもしれない。
いつか告白出来る日まで彼女と先輩方との
サイエンスライフを楽しもう。
授業なんてやってられないねこりゃ。

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ソーハッピー
- 2006年3月17日 14:43
■1995年 10月8日
俺は紐緒さんの事がが忘れられなく、
その後、好雄に連絡を取り彼女の事について色々聞き出すと、
科学部で部活動をしているという事が発覚した。

紐緒さんは部活動のグループで共同実験を行う傍ら、
放課後も単独で実験室に篭り真夜中まで物凄い金属音を立てて
得体の知れない「何か」を組み立てているとの事だ。
そうしたいかがわしい噂が常に付きまとう彼女は、
若干16歳のマッドサイエンティストとして
校内の不良グループですら恐れ遠ざけられているとの事。
高校生にしてなんて貫禄だろうか。
「機械の体」「マッドサイエンティスト」
「実験」「研究」「薬剤」…
かつて体験した事の無い刺激的な単語が
俺の脳髄を駆け巡る音が聞こえた、
そして俺は一つの英断を下した
「科学部に入ろう」
そして彼女に機械の体を貰うまで実験に没頭し続けよう。
かつて銀河鉄道の鉄郎がそうであった様に
俺を追い詰めた不良グループに一矢報いてやるんだ。
俺は熱き思いを胸に現在所属する吹奏楽部に退部届けを申し出ると
後日、早速彼女の所属する科学部に入部の手筈を取った。

そして休日の昼下がり、
学校に赴き校門の前で待っていた
科学部部長に案内され科学実験室へ入り込んだ。
そこには白衣を纏った研究学生達が各々実験器具を手に
何やら調合・機材組み立て等の実験研究を行っていた。
薬品・実験器具の混ざり合う鼻をつく刺激臭、
そしてカチャカチャと音を立てあう
フラスコ・ビーカーがぶつかりあう音…
思えば、小・中学校と理数学系統に無縁だった
俺としては実に新鮮な感覚だ。
初めてマトモに見渡す実験室に喜びと戸惑いを隠し切れずにいると
背後から聞き覚えのあるハスキーボイスが耳に鳴り響いた

紐緒
「あら、貴方本当に来たのね?」
俺
「よろしく紐緒さん!」
部長
「お?田中君は紐緒さんと知り合いかい?
じゃ丁度いい、君は紐緒君とグループを組みなさい。
2年の富永君と、3年の小宮さんとの4人グループで薬剤調合を行う様に」
なんと言う好都合だろう、俺はこうして
彼女と上手い具合に同グループで部活動を続ける事になったのだ
俺
「よろしく紐緒さん」
紐緒
「やれやれ、仕方ないわね。
それじゃあ席を案内するからこっちにいらっしゃい」
俺は颯爽と背を向ける彼女の後をつけ奥に進み
彼女が所属するグループの席に向かった
紐緒
「小宮、富永、新入部員を連れてきたわ。
色々と教えて上げなさい」
彼女は2年の先輩をそれぞれ呼び捨てにすると、
これから同胞として部活動を行う2名の先輩の視線を
俺の方へと向けさせた
富永先輩
「こにちわぁ」
気の抜けた声で汚れた白衣を纏う
あまりに華奢な富永先輩はNHK教育の番組に
よく出てるワクワクさんの眼鏡を変えたバージョンだろうか?
以後俺は心の中で彼の事をワクワクさんと呼ぶ事にした
俺
「初めまして、よろしくお願いします。」
小宮先輩
「こんにちわー!よろしくねー!」
テンションもトーンも高い彼女の声と、
独特のパーマ(恐らく天然?)そして目じりに寄ったシワ。
林家パー子がシワを誤魔化す為化粧をふんだんにしたといった様相である。
ただパー子と一つ違うのは男の俺を遥かに凌ぐ巨漢ぶり。
170センチの俺が見上げる頭二つ分程大きなその巨体は、
少なく見積もっても180センチ以上はあるんじゃないだろうか?
以降、俺の心の中で彼女の事を「パーヤン」と呼ぶ事にする。
俺
「初めまして。足手まといにならない様に頑張ります」
俺は両先輩に頭を下げると初日実験の1日目を開始した。

紐緒
「解らない事があったら、何でもその二人に聞きなさい。
私は他人の事に構ってられないから。」
俺
「…」
こうして俺の科学部1日目は終了した。

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ラブ
- 2006年3月12日 14:37
■1995年 9月24日
今週は本当に色々あった…
いや、ある意味運命的ともいえるべき週だろうか。
俺と彼女が知り合うキッカケともなった日があったのだから…
俺はここ最近、
日常に顔を出す様々な煩悩を取り払う為、
しばらく学業、それも自分が苦手な理数系の
問題に専念する事にした。
そして昼休み中、数学の予習をしていると
後ろから誰かが鈍器の様な物で俺の後頭部を叩く音がした。

気がつくと、目に入ったのは骸骨の模型に、
試験管、ホルマリンづけにされた蛙。
そう、理科実験室の中だった
そこで俺は何故かベッドの上に横たわり
金属バンドの様な物で
四股を固定されている自分を確認した。
そして、上半身露になった自分の腹周りを確認すると
そこには何か見慣れない記号で
端々にテキストが刻み込まれていた。
こっこれは一体!?
俺が自分の身に起きているそんな不可解な現象に
驚いていると彼女は姿を現した

ほっ、惚れた!
妖艶な美声に、クールな目つき。
華奢なボディラインに薬剤の香り漂う髪。
そして俺が身を任せていると彼女は耳元でこう囁いた。

俺「はい…」
そして夢虚ろな実験室の中、
俺は彼女の人体実験を
なすがままに受け入れた。
そしてどの位時間が経ったのか、気づけば放課後。
俺はその彼女の人体実験が始まる前の状態で
元通り教室の自分の席に座っていた。
あれは夢だったのか…俺がそんな事を考えていると、
実験前に自分が勉強していたノートの端に達筆な字体で
メッセージが書き込まれているのを確認した
何々…

紐緒さんか…今度、好雄の家に電話をかけて
彼女について聞いてみよう。

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思春期
- 2006年3月12日 14:32
■1995年 9月1日
今週から新学期。
と、まずクリアしないといけない問題が二つ程あって…
一つはこれ

で、もう一つはあれ

な訳である。
うーん…あれの方はまあ部活への出席日数を
自習に変えて減らす事で何とかなると思うのだが
これはなあ…学校に登校する事で
席の近さにより嫌でも近くになるし
何より意識すればする程、小学生の頃に
親戚付き合いで無理やり飲まされた焼酎のお陰で
泥酔になった時みたいな気分になり酷く憂鬱だ。
と、まあ新学期早々俺の雑念thinkingは留まる事を知らない訳で、
俺はこの状況を打破する為に新学期1日目の
9月1日直接穴吹に話を聞く事にした
そして、2時限目の歴史が終了した時、
俺は思い切って穴吹に声をかけてみた
俺
「なあ、穴吹」
穴吹
「何だい田中君?」
授業を終えると同時に、
俺はくるりと後ろを振り向き穴吹の
顔を間に当たりにし、その表情に
1学期と微妙な変化があるのを見逃さなかった
パッチリと見開いた二重の目。
そして希望に満ち溢れた口元。
何より潰れたニキビは消え、
綺麗な肌色は瑞々しく活気を感じさせる。
こっコレわっ
恋してる漢(おとこ)の姿だ!
俺
「いや、なんでもないんだ。ごめんな」
俺はそういってその場を凌いだ。
そして俺にとって3学期までの永い3ヶ月間が幕を開けた。

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せいやっせいやっ
- 2006年3月 7日 13:27
■1995年 8月20日
今月は夏休み。
俺たち学生が開放される数少ない長期休暇の一つだ。
既に残すところ後10日となった高校生初めての
夏休みは「公私」共に非常に疲れる月間となった。
まず公私の「私」の方。
8月9日。いつもの様に庭で飼い犬のスナフキンに
骨っ子を齧らせていると普段寡黙な
自宅の電話が鳴り母が出た。
母が受話器を手に取り片手に軽く会釈をする
というギャグをかました後、
叫ぶ様な声で俺を呼び出した。
母「浩二ー!早乙女君ですってよ!」
田中
「はーい。」
何の用だろうと電話に出ると、
受話器の向こうの好雄は何か興奮気味な様子で
こう切り出してきた
好雄
「浩二、遊園地行こうぜ」

こいつもかぁ…っ
まさか穴吹だけでなく好雄までもがホモだったとは…
うーん、どうするか俺よ。
でもまた俺がここで断ったら、
恋愛のお約束パターンである
「逃げる相手程追い詰めたくなる」
という、心理の法則に従う事となり、
ますますコイツを煽ってしまう事になる。
それはマズいぞ
一先ずは言いなりになっておこう。
俺は色んな被害妄想が脳裏を駆け巡ると
慌てて好雄にOKの返事をした
好雄
「ホントかっ!それじゃあ待ってるからな」
好雄の奴は鼻息も荒くそう言うと、
一方的に電話を切ってしまった。
参ったなぁ…
とりあえず約束場所に行くとするか。
俺は今朝飲み忘れた冷蔵庫の中のジョアを一気飲みし
憂鬱な気分を抑える様にしながら
そのまま好雄の待つきらめき遊園地へと足を向けた

俺
「着いちゃったなぁ…とりあえず好雄探さないと」
そして俺はカップルだらけの昼下がりの真夏の遊園地で
クラスメートの男友達を探し回った
俺
「熱っちぃなぁ… …何で俺こんな事してんだろ」
そして20分程探し周ったところで、
ようやく大広場の裏手で待つ好雄を探し当てた

好雄
「おっそいぞ、浩二。せっかく呼んでやったのに」
田中
「いや、だって俺頼んでないじゃん。
なんだって急にこんなとこへ…」
俺が恐る恐る呼びつけた理由を問うと、
好雄は満面の笑みで答えてきた
好雄
「バーカ、俺だってお前と男同士だけで遊園地なんて趣味じゃねーよ」
その返答は以外な一言だった、
そして俺はホッと胸を撫で下ろすと
好雄は息もつかずに俺をここに呼んだ理由を語った
好雄
「実はな浩二、お前の為に女の子二人を誘い出して、
ダブルデートしようと思ってな。
ほら、お前だって貴重な高校一年目の初夏、
寂しく一人ぼっちで過ごしたくないだろぉ」
ああ、なんと言う事…神様、仏様、好雄様。
俺は好雄を拝む様にして涙ぐんだ笑顔で好雄の肩にポンと手をおくと
誤解に誤解を重ねた自分の不信感を謝罪する様にして礼を言った
俺
「ありがとう好雄…俺嬉しいよ」
好雄
「なーに、いいって事よ。」
カラっとした笑顔で好雄はそう言った
俺
「ところで好雄、その女の子達は何処にいるんだよ?」
好雄
「ああ、彼女達今トイレに行ってるからさ。
もう戻ってくるぞ…あ、ほら戻ってきた
おーい二人ともこっちだ、こっち」
好雄はが呼ぶその方向に向かい
俺が視線をやるとそこに居たのは
見覚えのある二人の女子だった
一人は…なんだクラスメートの詩織じゃないか。
詩織は家も隣で幼い頃同じ小学校に通っていたので
馴染みではあるが、特に恋愛対象という訳でもない。
まあ、こいつの人脈だとこんなもんか

そしてもう一人、こっちも見覚えあるぞ。
うーん、顔は見覚えあるんだけど…なんか服装が違うような…
俺は向こうに見えた顔のパーツをそのままに、
頭の中で着せ替えをしてそいつの名を思い出していると
向こうの方から声をかけてきた

片桐
「はーい、コンニチワ。田中君」

うぅわあ〜…
何という事だ、同じ吹奏部の片桐じゃないか。
ただでさえ距離をおいて付き合っているというのに
災難とは正にこの事。
俺ががっくりと肩を落としていると
好雄がまたあの満面の笑みで俺の肩に
ポンと手を置き語りかけてきた
好雄
「感謝しろよな!」

このヤロウ
もうどうしようも無くなって笑っていると
好雄がそのまま場を仕切る形で行く場所を指定した
好雄
「それじゃ、大観覧車でも行くか」
どうするか、選択肢は二人に一人だが。
うーん、やっぱりここは詩織を選択しよう。
彼女なら大人しいし
小学校の頃一度同じクラスになった事もあるので
話題に困る事なく適当にやり過ごせるだろう。
少なくともカタコトの英語で情報量が倍になる
あいつよりは比較的マトモな会話がし易い筈だ。
よし、詩織と乗ろう!
俺はそう決めて詩織に声をかける事にした
俺
「あのさ藤崎、俺と…」
俺がそこまで言いかけた時、あいつが始動した

片桐
「Person of me 私は田中君と乗るね!」

わあっ
もう、どうにでもなれ。
と、俺は断る訳にもいかなく
そのまま片桐に腕を引っ張られる形で観覧車へとむかった
片桐
「Let's go early. ほら、早く行くわよ田中君」
俺
「はい…」
俺は堪忍して相変わらず不便な話し方をする
片桐に腕を引っ張られる形で大観覧車へと足を進めた

片桐
「そういえば夏休みは何をして過ごしているの?」
俺
「昼寝」
片桐
「夜は?」
俺
「熟睡」
片桐
「あっはっはっ、浩二君って本当ユニークな人ね(笑)」
俺
「あはは、そう?(名前で呼びやがった)」
他愛も無い会話でこちらへの興味を打ち消そうと試行錯誤したが
彼女のツボに入ったのか彼女は一人でやたらと盛り上がり
その後、観覧車が周りきるまで延々と自分の事を話し続けていた。
そして観覧車が周りきった後、彼女は満足そうに
片桐
「もう一周しない?」
と、切り出してきたので
あの独特の噛み合わなさは
もうゴメンと、俺は
田中
「あ、向うにホラーハウスがあるよ」
と、
観覧車の先に見えた
ホラーハウスを指差した

片桐
「そうね。それじゃ、行きましょう」
よし、あそこなら多分アトラクションの仕様上、
暗くてお互いが見えないし余計な事喋る必要なさそうだぞ。
何よりコイツが怖がって中で逃げてくれれば
俺はハグれたっていうのを言い訳に不可抗力で
この強制デートを回避する事が出来る
そして俺と片桐はアトラクションの中に入っていった。

ホラーハウスの中は、
風の咽び泣く音がBGM代わりに使われていて
青白い作り物の人魂がグロテスクな妖怪の蝋人形達を
薄っすらと照らすといった中々凝った作りになっていた
また、趣向なのか足元の板の補強が
恐らくワザと弱く作られておるようで
地面を踏む度に「ぎいっ…」「ペキッ」と、
きしむ音を立てている。
うーん、これは中々…
これなら片桐も怖がって途中で逃げ出す筈だ。
悪く思わないでくれよ、
今日は早く家に帰って忍たま乱太郎を見たいんだ。
と、片桐の方に目をやると
思いもがけない一言が返ってきた。
片桐
「Fantastic!とても美しい情景ね田中君」
俺
「え?」
片桐
「素晴らしいわ、この木の香りと
幻想的に彩られたブルーのスポットライトと
血肉の散乱したDoll達っ 」
しまったぁ…そういえばこいつは一般人と
趣向が180度違う物に興味を示す変人だった…
俺が失策を自覚した時には既に遅く、
その後、片桐はホラーハウスの隅々まで隈なく鑑賞し
俺にその芸術性を語り続けてくれた。
そして、5時間後、遊園地の営業時間が終了する頃、
俺等は警備員の注意でようやく外に出る事が出来た。
片桐
「まだ物足りないわ、また今度きましょう田中君」
俺
「ははは…(一人で来いよ)」
外に出た頃にはもう好雄と詩織は先に帰ってて居なかったので
僕等はそのまま帰宅した。
これが公私の「私」の方の災難。
そして公の「公」の方なのだが、
今週、吹奏楽部の夏合宿があったのだが
合宿先の宿がそれはそれは凄いものであった
藁葺き屋根に部員1人につき2畳半の畳部屋ワンルーム。
そしてなぜか裏庭で6頭の豚と牛を飼育しており
夜は動物の鳴き声が煩くて眠れない。

と、まあ環境の劣悪さもさる事ながら、
問題は合宿中の練習であった。
合宿の練習は流石にこの環境で行うのは無理なので
近くにある廃校の音楽室を借りてやる事になったのだが…
事もあろうにあの片桐とのペア権を引いてしまった俺は
合宿中、片桐との共同練習で過ごす事になってしまったのだ

片桐
「そういえば浩二君譜面は読めるようになった?」
俺
「うーん、それ見て吹くの面倒くさいから即興で吹ける様に
タイミングで伴奏暗記出来れば楽かなと思って
吹き続けてるんだけど」
片桐
「無茶な人ねぇ」
俺
「でも片桐さんだってその方が楽だし、
譜面書く時間を実技練習に回せるだろ」
片桐
「うーん…そうねぇ、それじゃあパブロフの犬はどうかしら?」
俺
「は?」
片桐
「ほら、物理で習ったでしょ。
犬を使った条件反射実験。
出したい音を出す直前に体の一部に
刺激を与えて覚えさせていけば
演奏中自分の体叩くだけで伴奏部分の記憶が導かれて
譜面要らずで吹ける様になるって寸法よ
名づけてパブロフの笛。どう?」
俺
「成るほど〜。面白いかも。」
俺は片桐のこの机上のに納得してしまった。
俺はこういう科学を用いられた解説に弱いのだ。
今思えば、未だに少年誌に掲載されている
「残像で手が分裂する必殺技」等の子供だましに乗ってしまう
自分の未熟さをもう少し考慮してからこの屁理屈に乗るんだった。
が、時既に遅し。
片桐
「それじゃあまず私が手伝って上げるわ。
実験開始よ」
田中
「いや、でもどうするのさ?
俺が吹いてる時に体を叩いて覚えさせるの?」
片桐
「ふっふっふっ…違うわよ、
そんな生半可な刺激じゃ体は覚えないわよ。
コレを使うのよっ」

俺
「うわ〜っ革製じゃないか!?死んじゃうよ!」
片桐
「そこまでする訳ないじゃない。
貴方が吹くフレーズの区切りに合わせて
体の特定部分に痛みとその伴奏を記憶させてくのよ」
俺
「うーん…」
片桐
「これやれば練習量半減するわよ」
俺
「頼むよ」
と、俺は片桐のS気質の部分を知らず
根拠も無いパブロフ式演奏方法を
片桐と練習し始めてしまった。
片 桐
「 ほ ら っ ! 一番は肩っ!」
「 ピ シ ャ ア っ ! 」
俺 「 ッ ギ ャ ァ ! 」
片 桐 「 2 番 は 膝 よ !」
「 ピ シ ィ ッ ! 」
俺
「 フ ギ ャ ッ ! 」
片 桐
「3 番 は 背 中 ! 」
「 ビ シ イ ィ ッ ! 」
俺 「 ウ ワ ァ ゛ ッ ! ! 」
そして、他部員の怖がる様子を尻目に
僕等二人は廃校の一角にある教室で音楽という名の
暴力を繰り広げ続けた。
・裂傷8箇所
・打撲3箇所
・痣20箇所以上
恐らくここまで肉体的ダメージを追った
吹奏楽部員は至上始めてではないかと思う。
こちらが公私の「公」の方の災難。
残り一週間は自宅療養で精一杯過ごそう…。
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スタンドバイミー お断り
- 2006年3月 3日 23:10
■1995年 7月10日
今週は期末テストがあった。
比較的得意な歴史・音楽・美術の科目で得点を稼ぎ、
また苦手としている数学・物理等の問題も張ったヤマが
見事的中し選択問題では好結果を出す事が出来たと思う。
それと古文の問題であるが、
ただでさえ滅法苦手な科目なのに
原稿用紙1枚に400字詰めで「古文調に昨日の日常風景を書き記せ」
等という迷惑極まりない実施用紙が配られたので
「我思ふ、故に我あり。」
と、座右の銘を短くマトめ事なきを得た。

と、ここまでは何事もなく順調そのものであったのだが、
俺を一番悩ませる事となったその問題は
得意科目である英語の筆記試験中に起きた。
英語の試験当日、テストを早めに終えた俺が
机を枕代わりに仮眠を取っていると
前席で試験を受けてる女子の筆箱に入ってた
コンパクトの中に後ろの席の穴吹が
なんか物凄い形相で俺を睨みつけている姿が見えた。
何か「フーフー」鼻息鳴らして背中まで風圧きてるし、
怖えなぁ…俺何かあいつに悪い事したかなぁ…
怯えた俺はそのまま横向きに寝返りを打ち完全に寝たフリを決め込んだが
コンパクトに映る穴吹は更に鼻息を荒くし前のめりになって、
いやらしい目つきで俺の席に机ごと近づいてきた。
「ギギィ〜…」
俺「(ひぇ〜…穴吹がホモっていう噂は本当だったのか…
野球部でカマオみたいな声上げて内股でバッティング練習
してるって噂は聞いてたけど…)」
俺は「自分の貞操を奪われる」という
期末試験中、前代未聞の危機を回避する為、
長い長い残りの30分寝たフリをし続けた。
何か試験以上に精神力を消耗した気がする…
そしてきたる試験結果発表の7月15日。
その日は点数発表以外はホームルームと
赤点をとった奴だけが行う補習だけの筈だったのだが…。
更なる問題はこで起きた。
今回は特に酷い赤点も無かっただう後は終わりを待つだけと、
何気なく自分の机の中を弄っていると
ツルツルとした覚えの無い触り心地の
教科書が一冊入ってるのを確認した。
俺「おかしいなぁ?試験期間中だったから教科書の類は
全部自宅に持ち帰ったかロッカーにしまった筈なのに。」
俺は首をかしげつつ
中にある冊子を引きずり出した。

エ
ッ
エ
ロ
本
だ
ッ
!!
ガ
ッ
コ
の
机
に
エ
ロ
ホ
ン
だ
ぁ
っ
!!
し か も 穴 吹 の が 何 故 俺 の 机 に ! ?
俺はすぐさま、
そのエロ本を自分の鞄に隠す様にしまい込むと
後ろに居た穴吹の様子をチラりと伺った
すると目が合った穴吹は、
ニヤニヤして俺の方を見つめ返してきた。
「目が合う」→「ニヤける」→「俺が好き」→
「大好き」→「プレゼント」→「勃たせる」→
「強姦」→「アヌス!」→「モロッコ」

(クリスタルキング状態)
俺「先生、具合が悪いので早退します」
元よりその日は点数発表以外特に必要な出席理由は無かったので
俺は安全面を考慮し、結果を見ず担任に早退を申し出てそのまま帰宅した。
翌日、自宅を通りがかった担任がポストに
採点結果用紙を入れてくれたらしく
俺はそれで一通りの試験結果を確認した。
出来としては、まあまあの結果だったと思う。
物理・数学をもう少し根つめてやれば
もっと順位が上がるかな、という感じだ。

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そんな事より、この期末試験で、
進路より厄介な悩みが一つ増えた。

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3人寄れば馬鹿がみる
- 2006年3月 1日 22:54
■1995年 7月9日
来週から期末テストだ。
俺は試験対策として先月の中間位から部活を休み
得意科目の強化を中心に行い、
苦手科目は基礎問の無難な問題のとこに山を張り
予習しといたので特に問題は無いだろう。
さて、問題の俺の弱点である「数学」と「科学」だが、
奇策としてNHKの科学番組を見て攻略のポイントを
見出そうと半ばギャンブル狙いで休日中NHKを延々と見続けた。
が、いざ番組をつけると、
何か電池で動くモーター紙飛行機や
輪ゴムを動力源とした牛乳パックの巨大ロボ等、
シュールな工作物しかやってなく
その後「顕微鏡で覗いた世界」という
なんかウニュウニュしたハラワタの様な生物が万華鏡の様に層を成して
動き続ける奇怪な番組を2時間位立てつづけに見ていた所で
今朝食べたトーストを戻してしまい
科学は体力的に無理
と悟った俺は予習を諦める事にした。
そういえば近頃部活に出席すると「これでもか」という程、
片桐彩子がフレンドリーに話しかけてくる。

俺
「何で君はいつもそんな体勢で話しかけてくるの?」
片桐
「何で?」
俺
「話にくくない?」
片桐
「だってSexyでしょ♪(もっと首を捻りながら)」
俺
「恐いよ…」
片桐
「そうかしら?」

ああ嫌だ…こんなエクソシストに出てくる
悪霊にとりつかれた少女の様なポーズが可愛いと思い込んでる
奇人とは一刻も早く縁を切らなければ。

そして先日、
好雄とクラスメートの北原の3人で
喫茶店に集まり話をしていた。
期末も近いので3人で苦手科目の情報収集でもしようとしたのだが
いざ三人で話始めると
好雄
「そういえば大木凡人ってヤクルト古田の親戚なんだってよ」
北原
「そうそう、浅草に〔バドガール〕っていうソープランドが出来たんだって。」
俺
「この前渋谷で募金勧誘されてさあ…」
好雄
「俺この前コンポ買ったんだよ、ソニーのヤツ」
北原
「アメリカのトイレってウンコする個室ドアの下
がら空きなんだってさ」
俺
「今週のマガジン読んだ?」
と…情報収集以前に全く会話が噛み合わなかった。
なぜ俺等はいつもツルんでいるんだろう。
そして俺は非常に不毛な時間を過ごした事に
後悔する間も無くテスト前夜を迎えた。

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