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2006年12月 Archive

アイルビーバック

  • Posted by: 連射太郎
  • 2006年12月 3日 15:57


 
 
 
波乱含みの文化祭も終わり、
部活に勉強、そして休日はガス抜きに友人と遊びに行ったりと、
相変わらず平々凡々としながらも高校生活2年目にしてようやく地に着いた
学園生活を楽しみ始めたという感じだ。
  
 
と、思っていたのも束の間、何やら最近我が校の女子生徒の間で
俺に関する変な噂が流れているとクラスメートで友人の篠崎から耳にした。

その内容はどうやら古式さんと俺との間に何かあるという様な内容である。
古式さんといえば例の古式不動産の御令嬢、
いわゆる「お嬢様」というやつだ。
そういえば彼女とは以前スタジアムに行った時以来だが、
恐らくその時の様子を誰かが目にして噂になったんだろろう。
 
 
 
うーん、だがそう悪い気はしないぞ。
噂の相手は可愛い上にお嬢様の古式さんだ。性格も悪くないし。

何よりこういう噂は一人歩きするから俺個人が否定しても無駄だろうし、
様子見てればその内影を潜めるだろう。「人の噂も何とやら」というやつだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
と、悠長に構えてた俺の態度が祟ったのか解らんが、
数日経つとその噂話はさらに妙な展開を見せていた。

今度は間接的ではなく隣のクラスの女子が
俺の背後で例の噂話を話していたのを直接耳にしたのだが
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
女子生徒A
「ほら…見てあの人よ…」
 
 
 
女子生徒B
「へー…高校2年で、流石の貫禄ね。」
 
 
 
女子生徒C
「シルバーヘアに、眉金よ、かなりのやり手ねぇ…」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
一体なんだっていうんだこの妙な空気はっ!
こんなんじゃ気になって部活の研究にも身が入らない…

と、集中力を削がれる妙な噂話が続く事数日、
懐かしいアイツが俺の前に姿を現した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

片桐
「あっ、ワカガシラ」

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


っえー!?


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


「おいっ片桐なんだよ!?
 そのワカガシラっていうふざけたイントネーションの呼び名は!」
 
 
片桐
「な〜に、あんた自分の話も知らないの?
古式不動産跡継ぎの話し、他の皆ももう知ってるわよ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


What,s!?


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
どっどういうことだ!?
また水面下で何かが動き始めているというのか、
ともかく妙な事になったらたまらん…こいつ今「噂」とか言ってたな、
このあてつけがましい仇名の意味も知ってるかもしれん
少し詳しく問いただすとしよう。
 
 
 
 
 
 
田中
「なあ、片桐、
その「若頭」っていう尋常じゃない仇名は何なんだ」
 
 
片桐
「うーん…そうねぇ、じゃあ詳しく教えて上げるから
ちょっと私のお願い事も聞いてくれるかしら?」
 
 

「話し?あぁ何でも聞くからとりあえず
この腸煮えくり返りそうな気持ちをどうにかしてくれ」
 
 
片桐
「解ったわ、それじゃあ話すわね…」
 
 

「ちょっと待った!」
 
 
片桐
「really?」
 
 

「そういう時はWhatだこの野郎!」
 
 
片桐
「Thank you.」
 
 
 
 
 
 
 
よく考えたら、ここで込み入った話を聞くのはまずいな…
何しろネジの外れたこいつの事だ、まずい噂だった場合にも拘らず、
生徒が大勢居るこの廊下でおおっぴろげに話されたりしたら俺の立場が無い。

一先ずは周りに人気が無い場所までこいつを誘導して
話を聞きだすとするか
 
 
 
 
 
 
 

「なあ片桐、ここでそういう話をするのは気が引ける。
校舎裏の花壇に移動してゆっくりと話を聞かせてくれないか?」
 
 
片桐
「really?本当に?」
 
 

「だから復唱するなよ。
 ここでゆっくり話してたら休み時間終っちゃうだろ。
 いいのか、悪いのか、どっちなんだよ?」
 
 
片桐
「解ったわ、場所は任せましょう」
 
 

「よし」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
そして俺達は校舎裏に移動した
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

【校舎裏花壇】

そして校舎裏。

片桐の会話は相変わらずエセ英語が日常会話と復唱的にダブり
文に起こすと大変長くなってしまうので割愛するとして、
問題である噂の内容を要約すると、
先ずは俺の察し通り例のスタジアムの一件が発端となり
古式さんと俺が既に交際をしているという話。ここまでは予想がつく。
 
だが問題はここからで、
俺自身この噂に関しては取るに足らないゴシップとして
周りが飽きるまでほっとこうと遠巻きに静観を決め込んでいたが
恐らく古式さん自身は良い気分で聞いてはいないだろうな…
と、申し訳なく思っていたのだが、あろう事かあのスタジアムの一件以来、
何故か古式さんは俺に好意を持ち始めているらしいとの事である。
またその噂を直に聞いた古式さん自身がそれを否定する様子も無く
俺との交際を暗に仄めかす態度を取ったとの事だ。

まあ、だとしてもここまでなら別に俺に対して損害は無く、
逆に彼女が俺を好いてくれている事は光栄であるのだが
問題は当の古式さんの家庭環境にあったのだ。
 
これは片桐がある雑誌記事の切り抜きを見せてくれた事で発覚したのだが
以前古式さんに直接聞いて彼女の実家が
有名な不動産会社を運営してる事が解ったが、
どうやら不動産といっても「カタギ」では無い方の仕事らしく
主な事業は高利貸しを行ったり、地上げで確保した土地に
アミューズメント施設(主にギャンブル)を開業する等、
更に、中国、イタリア等、裏産業が大変豊かな御国との外資産業にも
積極的に投資を行っており世界各国のマフィアとも
繋がりがあるそうで裏の世界ではその名を知らぬ有名な御方との事である。

つまり、
古式さんと俺が本格的に付き合っているという
既成事実が出来上がるという事は…
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


うわぁ…


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
俺 
「そ…そんな。誤解もいいところだぜ」
 
 
片桐
「何よあんた古式さんと付き合ってるんじゃないの?」
 
 
田中
「よく見ろって、俺が彼女と釣合うナリしてるかよ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
片桐
「Fantasticって感じね」
 
 

「的確だな」
 
 
片桐
「でも、彼女も実際あんたの事好いてるみたいだし、
 何か思う所があったんじゃないの、あんたなんかしたの?」
 
 

「バカいえ!俺はただ彼女に誘われてスタジアムに…」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


片桐
「attention please!」


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「な、何だよ?」
 
 
片桐
「あんた本当に解ってないのね…
 よく考えてみなさいよ、まず女の子が自分から
 気のない男を誘うと思うの?」
 
 

「カマかける位なら普通にするだろう」
 
 
片桐
「あんたねぇ、まがりなりにも御令嬢よ御令嬢!
 世間知らずなBox Girlが、精一杯貴方にPromotionかけたの。
 それも初めて、「あぁこの人の為なら何処までも…」この気持ち解る?」


「用途間違えてる英語についてはこの際無視するとして、
 想ってくれるのは、悪い気はしないけど、
 家庭環境とかそういうのが絡んでくるとなると
 話しはまた別だな…うーん困った」
 
 
片桐
「だったら貴方から直接古式さんに
 気持ちの折り合いつける機会伺えばいいじゃないの」
 
 

「ん?」
 
 
片桐
「だから自分から古式さんが言い寄ってきたタイミングで
 事情を説明して
「これこれこうだから、
 これからはプライベートで会うのは控えたいんだ。」
 って、はっきり伝えて距離おけばいいのよ。OK?」
 


「あ、成る程。それもそうか、
 次に向こうから誘ってくれたりした時に
 断るタイミングで事情を説明すればいいんだな。
 元を正せば前も俺が誘ってる訳では無いし。

 ありがとうっ片桐、
 お前意外と頭いいじゃないか!」
 
 
片桐
「これでノープロブレムよ、さあ、一段落ついたら
 私の話しを聞いてもらうわ」
 
 

「ん?ああ、確か何か話しするとか言ってたな。
 まあいいや、聞くだけならただだし、
 何だよ話しって?
 
 
片桐
「実はね。貴方に絵を描いてもらいたいのよ」
 
 

「え?」
 
 
片桐
「そうよ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
うーん、相変わらずなんてクレイジーな野郎だ。
小・中、そしてこのきらめき高校でも美術で
ロクな評価を貰った事の無い俺に絵を描けだと?
いい度胸してやがる、描いてやろうじゃないか。
 
 
 
 
 
 
 

「いや、まあ。噂の真相ならず色々と
 相談に乗ってもらった訳だし簡単なので良かったら描くけど
 俺、絵下手だぜ。」
 
 
片桐
「Thank You どうもありがとう。
 それじゃ紙と鉛筆を渡すからお願い。」
 
 
 
 
 
 
  
俺は片桐からメモ帳と鉛筆を受け取ると
花壇の周囲から適当な被写体を探し始めた
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「あ、鳥が大人しそうにしてるな、
あれ描いてみようか?」
 
 
片桐
「Freedom please」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
俺は返答の意味がよく解らないので
とりあえず絵を描き始めた
 
 
 
 
 
 
 

「………」
 
 
片桐
「………」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

30分経過
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「出来た!」
 
 
片桐
「どれ、見せて頂戴」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
片桐
「What!?何なのこれは?」
 
 

「だから鳥だっつってんだろ」
 
 
片桐
「………」
 
 

「(フッフッフッ…見たか、
 幼少時に親父に似顔絵を描いた際に両親から
 美的センスの将来性を見放された俺の絵を)」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

片桐
「素晴らしいわ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「っえ? 」
 
 
片桐
「この微妙なタッチ…
 曲線、そして質感っ圧倒的な力強さ!」
 
 

「っちょ、おい…」
 
 
片桐
「あー!あたしの目に狂いは無かったのね!」
 
 

「いや、お前の目絶対おかしいって」
 
 
片桐
「そんなこと無いわ、私はこれを伝えたかったのよ、
 貴方の中にキラリと光る美術の可能性。
 そしてそれは今確信に変わったわ!」
 
 

「えーえー?」
 
 
片桐
「浩二君、私と一緒に未来のイラストレーターを目指しましょう」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

爆竹を噛ませて思いっきり頬をぶん殴ってやりたい気分だが、
とりあえず、こいつを抑えない事には話しにならん。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「理由が解らないのはいつもの事として、
 いやー、無理だって、俺絵下手だし
 何より好きな訳でもないし、パスしとくよ」
 
 
片桐
「ふっふっふっ…
 残念だけど解答の誘導権は私の方にあるのよ」
 
 

「は?」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
片桐が不敵な笑みと共に嫌な悪寒が
俺の中を駆け巡った
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
片桐
「貴方、ゆかりとの付き合いに距離を置きたいのよね」
 
 

「ゆかり?」
 
 
片桐
「貴方が気になる古式さんの事よ?」
 
 

「え?」
 
 
片桐
「彼女ね、私のとぉ〜っても仲の良いお友達なの。
 親友って言った方がいいのかしら」
 
 

「えっえっえっ!?」
 
 
片桐
「つまり、あたしの口添え次第で
 アンタと彼女の関係はどうにでもなるって訳よ!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

きらめき高校 裏校舎展示物 考える人(ロダン)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
俺 
「明日からよろしくお願いします先生」
 
 
片桐
「頑張りましょうね、浩二君♪」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
俺の学園生活は早くも波乱の一途を辿り始めた。


 
 

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