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パーヤン危機一髪

  • Posted by: 連射太郎
  • 2006年3月21日 15:16

■1995年 12月3日

科学部に入部してから早1月。
憧れの紐緒さんと同じ班で研究が出来るようになったものの
部活中の会話が
 
 
 
 
 
 
(機嫌の良い時)


「紐緒さん」
 
 
紐緒
「集中出来ないわ。静かにしてて頂戴」
 
 
 
 
 
 
 
(機嫌の悪い時)


「紐緒さん」
 
 
紐緒
「煩いわね。黙ってなさい」
 
 
 
 
 
の2、3パターンしか無いのは問題外だ。

何より彼女は最近、本格的に生体工学の研究を始めた様で、
体全体が黒の斑点模様で覆われている
青色の蛙を研究室にサンプルとして持ち込んでは
 
11040065.JPG
 
 
紐緒
「トシオ、餌よ」
 
 
 
 
と、木の殻に包まれたままのミノ虫を
10分おきに食べさせては頭を撫でて可愛がるという、
ほぼペット状態での扱いで熱心に世話を焼いており
ワクワク、パーヤン両先輩と僕は蚊帳の外で目もくれられない。

そして、この前パーヤン先輩が
その青色蛙が分泌した緑色の液体を浴びてしまったのだが
その際、普段顔色を変えない紐緒さんが顔面蒼白になって
 
 
 
 
 
 
紐緒
「小宮っ!これを飲みなさい今すぐによ!」
 
 
 
 
 
 
 
と、白衣の懐から取り出した黄緑色の液体と
500CCビーカー一杯分の水をパーヤン先輩に突きつけた。
先輩は紐緒さんのその尋常ならぬ態度に身の危険を察知し、
すぐ様手渡された液体を飲み込んだ。
すると紐緒さんは間髪入れずに
 
 
 
紐緒
「いいことっ今日一杯かけて10リットル分の水分を取りなさい!
でないと貴方は3日以内に全身に巨大な発疹が出来て死ぬわ!」
 
 
 
と、言い放ち、途端、部内は一堂騒然となり
その後部長から呼び出された紐緒さんは
部内への一切の研究生物の持込の禁止と
一週間の謹慎処分を言い渡された。
 
何やら揉めたそうだが今後の事を考慮したのか、
彼女はその条件を渋々飲み一週間の研究課題を
命じられ帰路についた。
 
 
 
ちょっと待て?もしやこれは大チャンスではないだろうか。

日ごろ放課後まで研究部室に入り浸り、
独自研究を続ける紐緒さんに声をかけるタイミングは
皆無に等しかったけれど、
今は学校内研究室の一切は禁止されている。

という事は、
独自研究を念頭におく彼女の行動パターンからいけば、
放課後は必然的に自宅研究を行っている筈っ

そして幸運な事に俺の手元には以前好雄から入手した
紐緒さんの個人データ+電話番号がある。

科学部の連絡網には彼女のデータファイルは一切なく
当然電話番号も記載されていないので、
部員彼女の連絡先を知っているのは俺だけなのだ。

俺は彼女の自宅に初めて電話をかける興奮と、
ドキドキと抑えきれぬ胸の鼓動を手のひらで押さえながら
受話器を手に取った
 
 
 
 
 
そして彼女が出た
 
 
 
 
 

「あ、紐緒さんかい?
俺だよ同班で研究をしてる田中だけど」
 
 
95_12-3_narenaresii.jpg

紐緒
「なによ、貴方なの。最近馴れ馴れしいわね。
一体何の用?」
 
 

「いや、この前研究所でゴタゴタがあって
今科学部に立ち入り禁止になってるから。
もし研究室に忘れてきて必要な物があれば
俺が代わりに取ってこようかなって思って」
 
 
 
 
 
我ながら見事な機転だ、
この言い回しなら不自然な好意を悟られる事なく
こちらの親切が彼女に吉として伝わる筈
 
 
 
 
 
紐緒
「貴方私の注意力をナメてるの?
あたしの管理能力と行動回路は置き忘れなんていう
陳腐な事はしないわ」
 
 
 
 
 
しまった、彼女の対人能力は
人の親切心を感じ取るセンサーが破損していたんだ
すっかり忘れていた
 
 
 
 
 

「あ、そうか。
ごめんよ、何か役に立てる事があればと思って」
 
 
紐緒
「まあ、貴方の忠誠心は買っておきましょう。
あ、そうだ小宮に渡したい錠剤薬があるんだけど、
貴方彼女の電話番号は持っているかしら?」
 
 

「あ、連絡網に載ってたと思う、ちょっと待ってね…
えーと…」
 
 
 
 
 
俺は科学部の連絡網に載ってた
パーヤン先輩の家の電話番号を彼女に伝えた
 
 
 
 
 
紐緒
「ご苦労様、まあ、ありがとうと言っておくわ。
不慮の事故とはいえこの年で人殺しにはなりたくないもの」
 
 
 
 
 
どういう生き物だったのだろうあれは…
 
 
 
 
 
95_12-3_aitenaino.jpg

紐緒
「それじゃあ、
私研究で忙しくて貴方の相手してられないの。
出来ればもうかけてこないで頂戴」
 
 

「あ、ごめん。解った、必要最低限にするよ」
 
 
 
 
 
そういって俺は電話を切った。

パーヤン先輩
そういえば今日は学校休んでたけど
生きてんのかなぁ…
 
95_12-3_asitakara.jpg

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