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スノーブラザーズ

  • Posted by: 連射太郎
  • 2007年7月19日 21:42

■1996年12月31日

追われる様に過ぎ去った日々を惜しむ間もなく
今日は96年最後の日、大晦日だ。

きらめき高校は先週24日から冬休みに入ったのだが、
ここ一ヶ月、俺は片桐に画を描くのを強制されたせいで腱鞘炎になったり、
何故か先日のスランプから一転、
覚醒したかの如く調子の良くなった紐緒さんの手伝いで
重量50キロの鉄塊を持ったまま立たされたり、
25万ボルトの電線が数百本通ったシリコン製のケースを持たされたりと、
体力・精神力的に精根尽き果てた状態だったので、
冬休みに入ってからの一週間は殆ど自宅に引き篭もり休養をとっていた。

窓から外を覗くと雪の積もり方が凄い、
一面の銀世界とはこの事だな。
昨日は大降りだったからなぁ…

そうだな、もう雪も降り止んだ頃だし
ここ一週間引き篭もりっ放しで身体も鈍ってるから
リハビリがてら近所のレコードショップにでも行くか。


俺はお気に入りのダウンジャケットを羽織るとジーンズを穿き、
久々の外出で微妙に込上がるテンションに身を任せ
勢いよく部屋の戸を開けて外に向おうとした、
その時
 
 
 
 
 
 
 
 
「ピンポーン」
 
 
 
 
 
 
 
 
まるでこちらの出方を伺っていた様なタイミングで
自宅のチャイムが鳴った

 
 
 


「ん?一体誰だ?」


俺は小走りで玄関に向かい
チャイムを鳴らした相手を確かめに行った
 
 
 
 
 
 
 
「ガチャ」
 
 
 
 
 
 
 

「はい、どちら様ですか?」
 
 
 
???
「こんにちわー」
 
 

「あ、君は、確か好雄の妹の?」
 
 
 
 
 
 
 
彼女の名前は早乙女優美。
クラスメートの友人「早乙女好雄」の妹で一学年下の後輩だ。
確か今年の入学式で好雄に紹介されて挨拶をした位で
その後は特に付き合いも無かったがどうしたのだろう急に?
 
 
 
 
 
 
 

優美
「そうです、お久しぶりです先輩(^^」
 
 

「どうしたの好雄が死んだの?」

 
 
優美
「死んでませんよぉっ!(^^;」
 
 
 
 
 
 
 
好雄の身に特に何も無いとなると益々
思い当たる節が見当たらない。
うーん
 
 
 
 
 
 
 

「じゃ、どうしたんだい今日はまた急に?」
 
 
 
  
  
 
 
 
 
優美
「外すっごく雪が積もってるんです。
 雪合戦しましょう」



「雪合戦?」

齢17の俺に思いもがけない刺客が現れ、
鳩が豆鉄砲を食らった様な顔で呆気に取られていると
彼女は半ば引きずる様にして俺を外に連れ出した
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

【田中宅前】


 


「うわー…思ったより寒いぞこりゃ。」
 
 
と、俺が自宅との温度差に身を凍えさせていると
目の前に高速の雪玉が飛んできた
 
 
 
 
 
 
 
 
「ドシャッ!」
 
 
 
 
 
 
 
そう思った瞬間、
雪だまは俺の顔に叩きつける様に飛び込み
俺は前のめりに倒れこんだ
 
 
 
 
 
  
 
 
優美
「あはははっ やったやった」
 
 
 

「この野郎っ」
 
 
 
 
 
 
 
優美
「優美昔から雪合戦は得意だったんです」
 
 
 


 
 



「上等だっこの野郎!」


 
 
 
 
 
 
 
 
俺は燃え上がる怒りの熱を雪に込めると早乙女優美に向かい投げ続けたが、
俺の投げた玉は尽く軌道を反れ彼女に当たる事は無く
そのまま時は過ぎ彼女との雪合戦は日暮れ頃まで続いた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「ぜーぜー…」
 
 
 
 
 
 
 
そして雪合戦が終る頃には俺の顔面はボコボコ、
腹部に裂傷、膝関節はギシギシと悲鳴を上げ、
手は霜焼けでアカギレだらけになっており
正に絵に描いた様な満身創痍となっていた。

雪合戦が得意といってもこれじゃ軍人レベルだ
 
 
 
 
 
 
 
 
優美
「すっごい楽しかったです。」
 
 

「あ、あのね優美ちゃん。
 遊びに誘ってくれるのは嬉しいんだけど、
 こういうのはお兄ちゃんとやった方がいいんじゃないかな?」
 
 
優美
「お兄ちゃん子供の頃は一緒に遊んでくれたのに、
 中学生の頃から「お前に付き合うと怪我するから嫌だ」
 って、言って遊んでくれなくなっちゃったんです (ノ _ ;」
 
 

「ハハハ…(成る程ね)」
 
 
優美
「それじゃ、雪が降ったらまたやりましょうね^^」
 
 

「いやぁ…出来ればやりたくないかな」
 
 
 
 
 
 
 
 
そう言い残して、
大晦日の日に突如現れた雪女は過ぎ去った。

が、その日の夜は勿論の事、
翌日、つまり元旦も筋肉痛で傷の痛みは癒えず、
俺は自室の床で暖を取りつつ休養の為に
寝正月で一日を費やすハメとなった。
 
 
 
 
 
 
俺 
「うう…何てこった、
 大事を取って冬休み前半は一週間以上自宅療養に励んだってのに…」
 
 
 
 
 
 
 
俺はボロボロになった身体のあらゆる所に湿布を張りたくって
布団に篭り嘆きながらその日一日を過ごした。


そして元旦明けの翌日1月2日。
体力的な問題だけだった今回の筋肉痛は思いの外早く引き、
俺は清々しい朝を迎える事が出来た。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「あーっ生きてるって素晴らしい!」
 
 
 
 
 
 
 
俺はそう叫ぶと朝の光を浴びる為、
閉じきったカーテンを一気に開いた
 
 
 
 
 
 
 
俺「わっ!」

そこに広がっていたのは一面に広がる銀世界。
そう、まだ雪は降り続けていたのである。
しかも連日夜通し降っていた為か一昨日の積雪量を
明らかに上回っている。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「こりゃ凄い…」


これじゃどの道外出は無理だな、と
俺が大地の脅威を思い知らされていると
家のチャイムが鳴る音がした
 
 
 
 
 
 

 

「ピンポーン!」


 
 
 
 
 
 
 

「………」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
俺は一昨日と同じ様な状況に嫌な予感を肌で感じ
表の雪景色を眺めながら居留守を決め込んだ
 
 
 
 
【BGMはシャイニング】
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ピンポーン!ピンポーン!」
 
 
 

「…………」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ピピピピピピピピ ピンポーン!」
  
 
 
 
俺はドラムの様に鳴り響き続けるチャイムの音に脅えながら
窓の隙間から恐る恐る訪問者を確かめた


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


「………(;´Д`)」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「ドンッドンッドンッドンッ!」
「ピンポーン!ピンポーン」


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


「………ヽ(;´Д`ヽ)(ノ;´Д`)ノ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


「ドドドドドドドト゛ーン!」
「ピピンポーン!」


優美
「センパーイ!」


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


「キタ━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━!!」」


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

マズい…これは非常にマズい展開だぞ。

俺は彼女の訪問を知ると、
布団の中で彼女が過ぎ去るのを待つ事に決めた
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

..........  _| ̄|○
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

浩二の母
「浩二ーーーーー!あんたにお客さんよぉーー!!」

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
|玄関| λ............トボトボ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
お節介にも程がある母親の仲介により
俺は戦場に向う様な気分でガックリと肩を落としたまま
扉の向こうの彼女を出迎えた
 
 
 
 

「ガチャ」


 
 

「は、はい」
 
  
 
 
 
 
 
 
 
優美
「へへへ、先輩。また来ちゃいました。
雪合戦しましょう(^^)」
 
 
 
 
 
 
 
もうここは彼女に直接言うしか無いだろう。
友人の妹、かつ年下の女の子に強く言うのは気が引けるが
ハッキリ言ってこのままでは迷惑だ
 
 
 
 
 
 
 

「あ、あのね優美ちゃん。
今日は雪の積もり方も凄いし俺も体調が良くないんで…」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
優美
「先輩そんなのいいから早く早くっ」

 
 

「あ、ちょいま…qあwせdrftgyふじこlp…」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
俺は早乙女優美に着ている寝巻きの袖を破られる程
強い腕力で引っ張られると、
まるでストリートの裏路地でモヒカンの不良に喧嘩を
売られる様に表に連れ出された。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「だからさみぃーーーーーーーーよ!
 つーかよく俺を見ろよお前っ今寝巻きだろ!」

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
俺はもう完全に切れた様子で両手を交差して
上半身を摩りガクガクと震えながら彼女に訴えかけた
 
 
 
 
 
 
 
 
優美
「せんぱーい、いきますよー」
 
 
 
 
 
 
 
 
そして彼女は俺の訴えを無視して
ドデカイ初球を俺の顔面めがけて投げつけてきた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


「ドシャッ!」


 
 
 
 
 
 
 

「うわっぷ!」

 
 
 
 
 
 
 
そしてその雪球は見事俺の顔にクリーンヒットした
 
 
 
 
 
 

 
 
 
優美
「ハハハハ、やったやったー!
 先輩弱いなぁ」
 
 
 

俺 「上等だこの野郎!」

              俺は切れた、そして夕方まで一昨日と同じ様に 高校生の男女二人が壮絶な雪合戦を始めた。                           そして…


優美
「先輩とっても楽しかったです!また…」
 
 


「とっとと帰れこの野郎!」


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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