正月明け、病み上がりで身体が思うように動かないので
コタツに余っていたミカンの皮でみかん星人(C)ウゴウゴルーガ
を工作していたところ
何故か
が自宅にやってきて、寒い玄関先で
「冬は寒くて霊感が高まるので感性が研ぎ澄まされる」
というキ印な芸術論を延々語り続けた挙句、
俺の手に持ってた作りかけのミカン星人を見るなり
片桐
「That's Fantastic!」
と大興奮した様子で俺の作品を横取りし勝手に持ち帰りやがった、
あいつ早く死ねばいいのに。
あー...もう冬休みも終わりかぁ~...
新学期に向けて研究も頑張らないと
]]>【田中宅前】
俺 「うわー…思ったより寒いぞこりゃ。」 と、俺が自宅との温度差に身を凍えさせていると 目の前に高速の雪玉が飛んできた 「ドシャッ!」 そう思った瞬間、 雪だまは俺の顔に叩きつける様に飛び込み 俺は前のめりに倒れこんだ 優美 「あはははっ やったやった」 俺 「この野郎っ」 優美 「優美昔から雪合戦は得意だったんです」俺 「上等だっこの野郎!」
俺は燃え上がる怒りの熱を雪に込めると早乙女優美に向かい投げ続けたが、 俺の投げた玉は尽く軌道を反れ彼女に当たる事は無く そのまま時は過ぎ彼女との雪合戦は日暮れ頃まで続いた。 俺 「ぜーぜー…」 そして雪合戦が終る頃には俺の顔面はボコボコ、 腹部に裂傷、膝関節はギシギシと悲鳴を上げ、 手は霜焼けでアカギレだらけになっており 正に絵に描いた様な満身創痍となっていた。 雪合戦が得意といってもこれじゃ軍人レベルだ 優美 「すっごい楽しかったです。」 俺 「あ、あのね優美ちゃん。 遊びに誘ってくれるのは嬉しいんだけど、 こういうのはお兄ちゃんとやった方がいいんじゃないかな?」 優美 「お兄ちゃん子供の頃は一緒に遊んでくれたのに、 中学生の頃から「お前に付き合うと怪我するから嫌だ」 って、言って遊んでくれなくなっちゃったんです (ノ _ ;」 俺 「ハハハ…(成る程ね)」 優美 「それじゃ、雪が降ったらまたやりましょうね^^」 俺 「いやぁ…出来ればやりたくないかな」 そう言い残して、 大晦日の日に突如現れた雪女は過ぎ去った。 が、その日の夜は勿論の事、 翌日、つまり元旦も筋肉痛で傷の痛みは癒えず、 俺は自室の床で暖を取りつつ休養の為に 寝正月で一日を費やすハメとなった。 俺 「うう…何てこった、 大事を取って冬休み前半は一週間以上自宅療養に励んだってのに…」 俺はボロボロになった身体のあらゆる所に湿布を張りたくって 布団に篭り嘆きながらその日一日を過ごした。 そして元旦明けの翌日1月2日。 体力的な問題だけだった今回の筋肉痛は思いの外早く引き、 俺は清々しい朝を迎える事が出来た。 俺 「あーっ生きてるって素晴らしい!」 俺はそう叫ぶと朝の光を浴びる為、 閉じきったカーテンを一気に開いた 俺「わっ!」 そこに広がっていたのは一面に広がる銀世界。 そう、まだ雪は降り続けていたのである。 しかも連日夜通し降っていた為か一昨日の積雪量を 明らかに上回っている。 俺 「こりゃ凄い…」 これじゃどの道外出は無理だな、と 俺が大地の脅威を思い知らされていると 家のチャイムが鳴る音がした「ピンポーン!」
俺 「………」 俺は一昨日と同じ様な状況に嫌な予感を肌で感じ 表の雪景色を眺めながら居留守を決め込んだ 【BGMはシャイニング】 「ピンポーン!ピンポーン!」 俺 「…………」 「ピピピピピピピピ ピンポーン!」 俺はドラムの様に鳴り響き続けるチャイムの音に脅えながら 窓の隙間から恐る恐る訪問者を確かめた 俺 「………(;´Д`)」「ドンッドンッドンッドンッ!」 「ピンポーン!ピンポーン」
俺 「………ヽ(;´Д`ヽ)(ノ;´Д`)ノ」「ドドドドドドドト゛ーン!」 「ピピンポーン!」
優美 「センパーイ!」
俺 「キタ━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━!!」」
マズい…これは非常にマズい展開だぞ。 俺は彼女の訪問を知ると、 布団の中で彼女が過ぎ去るのを待つ事に決めた 俺 .......... _| ̄|○ 浩二の母 「浩二ーーーーー!あんたにお客さんよぉーー!!」 |玄関| λ............トボトボ お節介にも程がある母親の仲介により 俺は戦場に向う様な気分でガックリと肩を落としたまま 扉の向こうの彼女を出迎えた「ガチャ」
俺 「は、はい」 優美 「へへへ、先輩。また来ちゃいました。 雪合戦しましょう(^^)」 もうここは彼女に直接言うしか無いだろう。 友人の妹、かつ年下の女の子に強く言うのは気が引けるが ハッキリ言ってこのままでは迷惑だ 俺 「あ、あのね優美ちゃん。 今日は雪の積もり方も凄いし俺も体調が良くないんで…」 優美 「先輩そんなのいいから早く早くっ」 俺 「あ、ちょいま…qあwせdrftgyふじこlp…」 俺は早乙女優美に着ている寝巻きの袖を破られる程 強い腕力で引っ張られると、 まるでストリートの裏路地でモヒカンの不良に喧嘩を 売られる様に表に連れ出された。 俺 「だからさみぃーーーーーーーーよ! つーかよく俺を見ろよお前っ今寝巻きだろ!」 俺はもう完全に切れた様子で両手を交差して 上半身を摩りガクガクと震えながら彼女に訴えかけた 優美 「せんぱーい、いきますよー」 そして彼女は俺の訴えを無視して ドデカイ初球を俺の顔面めがけて投げつけてきた。「ドシャッ!」
俺 「うわっぷ!」 そしてその雪球は見事俺の顔にクリーンヒットした 優美 「ハハハハ、やったやったー! 先輩弱いなぁ」俺 「上等だこの野郎!」
俺は切れた、そして夕方まで一昨日と同じ様に 高校生の男女二人が壮絶な雪合戦を始めた。 そして… 優美 「先輩とっても楽しかったです!また…」俺 「とっとと帰れこの野郎!」
]]>【屋上】
ふう…身体に溜まった悪い空気が抜けていく様だ… 俺は屋上の隅に立ち空を眺めると、 ちょっとしたデューク東郷気分で黄昏(たそがれ)つつ、 夕焼けの空に漂う一筋の雲を片桐に見立て撃ってみた俺 「バキューン!」
すると、俺の想いが届いたのか その雲は突風が吹き荒れた突風に散らされる様にして バラバラに砕け散り夕闇の彼方へと消え去った 俺はその雲の残骸を目にしながら空に向って大声で叫んだ俺 「死ねー!」
俺が目の前に落ちた薬莢を拾うパントマイムをしていると、 背後から聞き慣れた声で大声が上がった「何者!?」
俺 「そっ その声は! 紐緒さんじゃないかっ」 俺は思わぬ出会いに胸躍らせた。 実はここ2ヶ月程、紐緒さんは科学部に 全く顔を出さなかったので会う機会が無かったのだ 突然の出会いに鼓舞する胸の高鳴りを抑えつつ、 俺は彼女に向かい声高らかに挨拶をした 俺 「どっどうしたんだい紐緒さんこんな所でっ!」紐緒 「だまらっしゃい小童がっ!」
俺はその鳴り響く怒号の声量に久々の彼女を感じ満足であった。 しかし、その直後普段の彼女からは信じ難い様子が見て取れた 紐緒 「はぁ…」 たっ…溜息だ! 完全無欠と思っていた彼女のメンタル面に一体何があったのだろうか… 俺は紐緒さんが心配になり、怒鳴られた余韻に浸る間もなく彼女に声をかけた 俺 「どうしたの紐緒さん溜息なんかついて?」 すると続いて彼女の口から 更に信じられない言葉がついて出た 紐緒 「全く…私らしくないから、苛ついていたんだけど、 言ってしまえば私スランプなのよ」絵 エ ー っ ! ?
俺は今自分の中で大きく弊害になってる一つの活動が 活字になり心の叫び声に混じる位驚いた。 スランプっ 何より普段傲慢極まりない紐緒さんが負を認める自覚を持ったというだけで これはもう十分一大スペクタルなサプライズであるっ 俺 「どっどうしたのさ紐緒さんっ 本当にらしくないよっ!いつもの強気はどうしたのさ 俺は思わず激励とも動揺ともつかない、 彼女に対する印象というか日頃の感想をぶつけてみた紐緒 「貴方に私の何が解るっていうの?」
紐緒
「はぁ…究極破壊兵器の最後の部品は
どうすればいいのかしら…」
っえー!?
俺 「おいっ片桐なんだよ!? そのワカガシラっていうふざけたイントネーションの呼び名は!」 片桐 「な〜に、あんた自分の話も知らないの? 古式不動産跡継ぎの話し、他の皆ももう知ってるわよ」What,s!?
どっどういうことだ!? また水面下で何かが動き始めているというのか、 ともかく妙な事になったらたまらん…こいつ今「噂」とか言ってたな、 このあてつけがましい仇名の意味も知ってるかもしれん 少し詳しく問いただすとしよう。 田中 「なあ、片桐、 その「若頭」っていう尋常じゃない仇名は何なんだ」 片桐 「うーん…そうねぇ、じゃあ詳しく教えて上げるから ちょっと私のお願い事も聞いてくれるかしら?」 俺 「話し?あぁ何でも聞くからとりあえず この腸煮えくり返りそうな気持ちをどうにかしてくれ」 片桐 「解ったわ、それじゃあ話すわね…」 俺 「ちょっと待った!」 片桐 「really?」 俺 「そういう時はWhatだこの野郎!」 片桐 「Thank you.」 よく考えたら、ここで込み入った話を聞くのはまずいな… 何しろネジの外れたこいつの事だ、まずい噂だった場合にも拘らず、 生徒が大勢居るこの廊下でおおっぴろげに話されたりしたら俺の立場が無い。 一先ずは周りに人気が無い場所までこいつを誘導して 話を聞きだすとするか 俺 「なあ片桐、ここでそういう話をするのは気が引ける。 校舎裏の花壇に移動してゆっくりと話を聞かせてくれないか?」 片桐 「really?本当に?」 俺 「だから復唱するなよ。 ここでゆっくり話してたら休み時間終っちゃうだろ。 いいのか、悪いのか、どっちなんだよ?」 片桐 「解ったわ、場所は任せましょう」 俺 「よし」 そして俺達は校舎裏に移動した【校舎裏花壇】
そして校舎裏。 片桐の会話は相変わらずエセ英語が日常会話と復唱的にダブり 文に起こすと大変長くなってしまうので割愛するとして、 問題である噂の内容を要約すると、 先ずは俺の察し通り例のスタジアムの一件が発端となり 古式さんと俺が既に交際をしているという話。ここまでは予想がつく。 だが問題はここからで、 俺自身この噂に関しては取るに足らないゴシップとして 周りが飽きるまでほっとこうと遠巻きに静観を決め込んでいたが 恐らく古式さん自身は良い気分で聞いてはいないだろうな… と、申し訳なく思っていたのだが、あろう事かあのスタジアムの一件以来、 何故か古式さんは俺に好意を持ち始めているらしいとの事である。 またその噂を直に聞いた古式さん自身がそれを否定する様子も無く 俺との交際を暗に仄めかす態度を取ったとの事だ。 まあ、だとしてもここまでなら別に俺に対して損害は無く、 逆に彼女が俺を好いてくれている事は光栄であるのだが 問題は当の古式さんの家庭環境にあったのだ。 これは片桐がある雑誌記事の切り抜きを見せてくれた事で発覚したのだが 以前古式さんに直接聞いて彼女の実家が 有名な不動産会社を運営してる事が解ったが、 どうやら不動産といっても「カタギ」では無い方の仕事らしく 主な事業は高利貸しを行ったり、地上げで確保した土地に アミューズメント施設(主にギャンブル)を開業する等、 更に、中国、イタリア等、裏産業が大変豊かな御国との外資産業にも 積極的に投資を行っており世界各国のマフィアとも 繋がりがあるそうで裏の世界ではその名を知らぬ有名な御方との事である。 つまり、 古式さんと俺が本格的に付き合っているという 既成事実が出来上がるという事は…うわぁ…
俺 「そ…そんな。誤解もいいところだぜ」 片桐 「何よあんた古式さんと付き合ってるんじゃないの?」 田中 「よく見ろって、俺が彼女と釣合うナリしてるかよ」 片桐 「Fantasticって感じね」 俺 「的確だな」 片桐 「でも、彼女も実際あんたの事好いてるみたいだし、 何か思う所があったんじゃないの、あんたなんかしたの?」 俺 「バカいえ!俺はただ彼女に誘われてスタジアムに…」片桐 「attention please!」
俺 「な、何だよ?」 片桐 「あんた本当に解ってないのね… よく考えてみなさいよ、まず女の子が自分から 気のない男を誘うと思うの?」 俺 「カマかける位なら普通にするだろう」 片桐 「あんたねぇ、まがりなりにも御令嬢よ御令嬢! 世間知らずなBox Girlが、精一杯貴方にPromotionかけたの。 それも初めて、「あぁこの人の為なら何処までも…」この気持ち解る?」 俺 「用途間違えてる英語についてはこの際無視するとして、 想ってくれるのは、悪い気はしないけど、 家庭環境とかそういうのが絡んでくるとなると 話しはまた別だな…うーん困った」 片桐 「だったら貴方から直接古式さんに 気持ちの折り合いつける機会伺えばいいじゃないの」 俺 「ん?」 片桐 「だから自分から古式さんが言い寄ってきたタイミングで 事情を説明して 「これこれこうだから、 これからはプライベートで会うのは控えたいんだ。」 って、はっきり伝えて距離おけばいいのよ。OK?」 俺 「あ、成る程。それもそうか、 次に向こうから誘ってくれたりした時に 断るタイミングで事情を説明すればいいんだな。 元を正せば前も俺が誘ってる訳では無いし。 ありがとうっ片桐、 お前意外と頭いいじゃないか!」 片桐 「これでノープロブレムよ、さあ、一段落ついたら 私の話しを聞いてもらうわ」 俺 「ん?ああ、確か何か話しするとか言ってたな。 まあいいや、聞くだけならただだし、 何だよ話しって? 片桐 「実はね。貴方に絵を描いてもらいたいのよ」 俺 「え?」 片桐 「そうよ」 うーん、相変わらずなんてクレイジーな野郎だ。 小・中、そしてこのきらめき高校でも美術で ロクな評価を貰った事の無い俺に絵を描けだと? いい度胸してやがる、描いてやろうじゃないか。 俺 「いや、まあ。噂の真相ならず色々と 相談に乗ってもらった訳だし簡単なので良かったら描くけど 俺、絵下手だぜ。」 片桐 「Thank You どうもありがとう。 それじゃ紙と鉛筆を渡すからお願い。」 俺は片桐からメモ帳と鉛筆を受け取ると 花壇の周囲から適当な被写体を探し始めた 俺 「あ、鳥が大人しそうにしてるな、 あれ描いてみようか?」 片桐 「Freedom please」 俺は返答の意味がよく解らないので とりあえず絵を描き始めた 俺 「………」 片桐 「………」 30分経過 俺 「出来た!」 片桐 「どれ、見せて頂戴」 片桐 「What!?何なのこれは?」 俺 「だから鳥だっつってんだろ」 片桐 「………」 俺 「(フッフッフッ…見たか、 幼少時に親父に似顔絵を描いた際に両親から 美的センスの将来性を見放された俺の絵を)」 片桐 「素晴らしいわ」 俺 「っえ? 」 片桐 「この微妙なタッチ… 曲線、そして質感っ圧倒的な力強さ!」 俺 「っちょ、おい…」 片桐 「あー!あたしの目に狂いは無かったのね!」 俺 「いや、お前の目絶対おかしいって」 片桐 「そんなこと無いわ、私はこれを伝えたかったのよ、 貴方の中にキラリと光る美術の可能性。 そしてそれは今確信に変わったわ!」 俺 「えーえー?」 片桐 「浩二君、私と一緒に未来のイラストレーターを目指しましょう」 爆竹を噛ませて思いっきり頬をぶん殴ってやりたい気分だが、 とりあえず、こいつを抑えない事には話しにならん。 俺 「理由が解らないのはいつもの事として、 いやー、無理だって、俺絵下手だし 何より好きな訳でもないし、パスしとくよ」 片桐 「ふっふっふっ… 残念だけど解答の誘導権は私の方にあるのよ」 俺 「は?」 片桐が不敵な笑みと共に嫌な悪寒が 俺の中を駆け巡った 片桐 「貴方、ゆかりとの付き合いに距離を置きたいのよね」 俺 「ゆかり?」 片桐 「貴方が気になる古式さんの事よ?」 俺 「え?」 片桐 「彼女ね、私のとぉ〜っても仲の良いお友達なの。 親友って言った方がいいのかしら」 俺 「えっえっえっ!?」 片桐 「つまり、あたしの口添え次第で アンタと彼女の関係はどうにでもなるって訳よ!」 きらめき高校 裏校舎展示物 考える人(ロダン) 俺 「明日からよろしくお願いします先生」 片桐 「頑張りましょうね、浩二君♪」 俺の学園生活は早くも波乱の一途を辿り始めた。 ]]>「シュゴオオォォォォォォォッ!」
(バーナーの音) 俺 「紐緒さんっ!」 紐緒 「何よ?」 (振り向き様にバーナーを向けて) 俺 「わっ!紐緒さん火止めて、火っ!」 紐緒 「止めたわよ。何よ?」 俺 「あ、あの…忙しい中悪いんだけど、 実はお願い事があって…」 紐緒 「いいわよ」 俺は彼女の思いがけない返答に面を食らい思わず声を上げた 俺 「えっ!?だって俺まだ何も言ってないよ?」 紐緒 「私は貴方の依頼を承知したと言ってるの。 それとも貴方如きの願いを叶えられない程 私の能力が不足だとも言うのかしら?」 俺 「あ、ありがとう、それでお願いなんだけど、 今週末文化祭があるじゃない、 それで設計やアイディアは僕と先輩二人でやってあるから 機械の組み立てとセッティングとかの仕上げをお願いしたいんだ」 紐緒 「文化祭?あ、そういえばそんな下らないものもあったわね。 全く研究の邪魔になるイベントがあったものだわ」 俺 「で、どうかな紐緒さん。やってくれるかい?」 紐緒 「貴方何か勘違いしてない? 私は先に「いいわよ」と答えてるの」 俺 「ありがとう。それにしても何故二つ返事を?」 紐緒 「貴方にはこの間の修学旅行で手伝ってもらったからね。 あの一戦で貴重なレポートが取れたわ、 その御礼というか貸しを返す為よ。」 俺 「助かるよ、それじゃ設計図と アイディアのレポートを渡しておくよ」 紐緒 「何々…レーザーアートショー… ……あら、貴方にしては中々面白いじゃないの」 俺 「そ、そう?いや、滅多に評価してもらえないから そう言われると嬉しいよ。」 紐緒 「成る程ね…使い方を変えれば ああいう風にも出来るわね」 俺 「……」 一抹の不安は過ぎるものの紐緒さんは快く承諾してくれた、 これで文化祭の事はとりあえず何とかなりそうだ。俺・パーヤン・ワクワク先輩 「...................(;゚Д゚)」
【髭前】
俺 「あちこちでモッサリしてるなぁ…」 紐緒 「ふん、随分大層なポーズを取ってるじゃない」 紐緒さんは銅像のポーズが気に入らないのか、 大地を指差すクラーク像に向って腕を組み、 仁王立ちしながら睨みをきかせていた 俺は場の空気を和ます為に間を割って彼女に話しかけてみた 俺 「ま、まあまあ…紐緒さん。 それより、Boys be ambitious 少年よ大志を抱け、良い言葉じゃないか。 一世一代の大物を目指す紐緒さんによく似合うよ」 すると紐緒さんはキッとこっちを睨みつけ、 僕の言葉を理路整然と訂正し始めた 紐緒 「一緒にしないでほしいわね…私の目指すのは『野望』 そう…企てた私すらついていけなくなりうる大いなる計画と行動、 そしてそれにすがる幾千幾万の僕(しもべ)達」 俺 「ひ、紐緒さん…」 うーん、悦に入ってるぞ… 別の意味で場を和ませてしまったのだろうか 紐緒 「そう…金でも名誉でもない… 皆が私の野望に慄きっ畏怖しっ称えっすがるのっ! 称えよ我が身を!私こそが新世界の王となる者よ!」 参ったなあ、いつにも増して重症だ 俺 「ひ、紐緒さん」 紐緒 「浩二君その時、貴方は私の傍に置いて上げるわ」 ドキッ お、おおっ何だこの展開は ママレードボーイみたいになってきたぞ 俺 「ひ、紐緒さん、それって…?」 紐緒 「私に仕え生涯、糧となるわね」 くぅ… 俺 「嫌です」 紐緒 「貴方、自己中心な人って嫌われるのよ」 それをそっくり彼女に返してやりたい気持ちで一杯だったが、 まあ、彼女なりの愛情表現なのだろうか、俺は堪えてみた 俺 「気をつけるよ」 と、僕らが髭の前で話していると、 柵を越えた羊が一匹、目の前に現れた。 「メン゛エ゛ェ〜〜〜」 俺 「あ、ウールだよ、紐緒さん」 紐緒 「……」 紐緒さんは羊に気付くなり奴の方をじっと凝視し始めた。 俺 「どうしたの紐緒さん?」 紐緒 「そういえば、原型はこんな感じだったかしら…?」「メェエ゛ーーーーーー!!!」
羊は紐緒さんの異様なオーラに気付いたのか一目散に逃げ帰っていった
俺 「ひ、紐緒さん…?」 紐緒 「あら、嫌だわ。違うのよ、ちょっと 研究用に牧場から仕入れた1頭を研究してたら 呼吸器官や足が増えちゃって」 彼女の性格はつかめてきたものの、 相変わらず何を生み出そうとしているかはさっぱりである、 うーん未知の生物… そうだ、野生の力はねじ伏せたが、 今度はもう一つの敵について聞いておかねば。 俺 「紐緒さん、そういえば野生の力には勝利したけど、 もう一つ言ってた未知の生物ってあれは一体なんなんだい?」 紐緒 「ふっ、よく聞いてくれたわね。 そう、奴等こそ愚かにも科学の分析力の外で 人々を脅かす大いなる敵よ。」 俺 「そ、それは一体なんなんだい?」 そう聞いた直後、 彼女の顔がキッと険しくなったのが見て取れた。 紐緒 「今日の夜、ロビーに来なさい。」 俺の答えは決まっていた 俺 「喜んで行くよ」 紐緒 「今度の敵は手強いわよ、 貴方の常識の外に居るかもしれない」 俺 「信じてるよ」 すると紐緒さんの表情はパッと明るくなり、 それでこそ私の下僕よと褒めてんだかけなしてんだか 解らない言葉をかけてくれた。 ああ、健全な高校生の修学旅行中、 俺達は北海道の一角で何を決意してるのだろうか…
そして、日も暮れ本日5日目の深夜、 俺は部屋をこっそり抜けるとロビーで紐緒さんを待っていた。 そして待つ事数分、約束通り紐緒さんがロビーに現れた 紐緒 「探したわよ浩二君、さてこれから調査に出かけるわ」 彼女は以外な言葉を口にした。 調査か…一体何を。 俺 「調査ってどこに行くんだい?」 紐緒 「ホテルのそばの農場にいい研究テーマがあったのよ」 俺 「なる程…そこに奴が居るんだね」 彼女は口元をニヤリと緩ませると頷いて見せた。 そして俺達はホテルを抜け敵地に向けて歩き始めた。
【ホテル近く農場】
ここはホテル近く深夜の畑。 辺りをよく見渡すと一定ラインで田畑が荒れており 離れて見ると模様の様にも見えてくる。 風邪は強く草木が揺れて唸り声を上げている割に虫や動物の鳴き声は一切無く、 どこか不思議な空気が漂っていた。 俺 「紐緒さんここは一体? 彼女は周囲を警戒しながら信じられない一言を口にした 紐緒 「ここがミステリーサークルね、私が解明してみせるわ」 ミ…ミステリーサークルっ するとまさか 俺 「ひっ 紐緒さん!まさか敵っていうのは…?」 紐緒 「慌てるんじゃないの。 私が解析したいのはあくまでこの不自然な円陣よ、 愚かなオカルト主義者達の誤説を根底から否定する為に これは人工による物というのを解明する為に調査するの」 俺 「あっ…そ、そうだよね。」 紐緒 「ほらっ突っ立ってないでまずは調査よ調査。 真ん中辺りから調べて頂戴」 俺 「うん、解ったよ」 と、俺が返事をしたその時だった、 空から眩いばかりの閃光が降り注ぎ 俺は目を細めながらもその光の先にある上空を確認すると そこには見た事も無い形の航空機が高速で点滅しながら まるで虫の様に不規則な動きで飛び回っていた。 俺 「ひっ…紐緒さん!? あれは口には出したくないけどまさかUFOじゃ!!!」 紐緒 「馬鹿を言わないで! この世に未確認飛行物体など存在する筈がないでしょうっ 私が化けの皮を剥がしてくれるわ!」 俺 「ひ、紐緒さん!こっちに飛んでくるよ!」 紐緒 「浩二君っ腕を貸しなさい!」 俺 「はいっ!」 俺は先日の熊との対決の時と同じ様に彼女に腕を捲って針を刺させた 俺 「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
俺は腹の底から盛り上がる異常な力を抑える為に 強烈な絶叫を上げ気を落ち着けた。
そして円盤から降りてきたのは今までに俺が見た事も無い生物だった。 色は白く、身体の表面は遠目からも解る程ヌメヌメと湿っている。 目には白目が無く、何か機械のビープ音の様な高周波を 口から発しながら我々に指を向けていた。 俺は紐緒さんの方をチラりと見て合図を送ると 次に絶叫を張り上げ戦いのノロシを上げた
再生ボタンで田中の絶叫の模様が見れます
紐緒 「浩二君っ私が奴らを叩きのめす兵器を作るから それまで貴方は時間稼ぎをしなさい!」 俺 「解ったよ」
そういって俺は奴にかかっていったが、 その後、奴が僕の目をキッと睨み付けるなり 俺に向けられた指から強烈な光線が放てられ、 俺はその光に縛られて身体を宙に持ってかれた直後 大地にその身を叩きつけられてしまった
「ドゴォーン!」
紐緒 「浩二君っ!」
紐緒さんは手に持ったスパナを落とすと俺の方に駆け寄り、 俺を肩に抱え込んで奴等の方を睨みこう一喝した
紐緒 「今日の所は見逃して上げるけど次こそは覚えてなさい!私こそ近い将来この地球を治める未来の王っ紐緒結奈よ!」
そして彼女のその声を聞くと 俺の視界は徐々に暗闇に覆われていった
・
・・
・・・・・・
気付くとそこはホテルのロビーだった 紐緒 「目が覚めたのかしら?」 俺 「あっ?紐緒さん、俺は一体…」 俺がまだ状況を理解しきれないでいると、 彼女は複雑な表情でこう言った 紐緒 「貴方のせいで負けたじゃないの」 俺 「ご、ごめん…」 紐緒 「まあ、いいわ。次こそは必ず勝つわよ」 俺 「ああ、解っているよ」 紐緒 「いいわね」 俺 「うん」 そう、次こそは必ず… そして僕等の北海道での戦いは静かに幕を閉じた。 そういえば目を覚ました時、 険しかった紐緒さんの顔が少し和らいだ様な気がしたけど気のせいかな。 ]]>
うわぁ…
そこに居たマルコメは忘れもしない、 昨日阿寒湖で青ざめた顔をしていたストロボ(穴吹)だった。 あの事件があってからというもの俺のこいつに対する印象は最悪である。 クラスメート時代も何とかしてケツを掘られまいと避けてきて、 ようやく2年になると別なクラスになり もう会う事もあるまいと安心してはいたが、 あろう事か、こんな形で再開するとは… それにしても …なんて格好してやがる 好雄 「どーしたんだ浩二、 早く行こうぜ?」 穴吹 「あ、田中君も一緒に来るのかい?」 俺 「い、いや…俺、 急用思い出してさ、悪いな好雄」 好雄 「なんだー?そうなら先言っとけよな、 行こうぜ、雄誤」 穴吹 「うん、それじゃあ田中君」 俺 「あ、ああ…」 いやあ、参った…まさか好雄と穴吹がまだ付き合っていたとは… 他人の人脈ってのは深いもんだ。 俺はそう感心しつつ、 これからの自由行動の問題が残されてる事に気付いた。 うーん、観光地にまで来て一人で名所巡りってのも虚しいなあ… しょうがない、土産探しがてらデパートにでも入って余った時間はブラブラするか と、高校2年の修学旅行とは思えない 非常にネガティブなブラリ旅を企てていると、 後ろから聞きなれた声が俺の背中を呼び止めた 紐緒 「浩二君、私に挨拶も無いのね」 あ、紐緒さんだ、どうしたんだ一体 俺 「あ、おはよう紐緒さん。 どうしたんだい、紐緒さん別クラスなのに」 紐緒 「貴方、もしかして一人なの?」 俺 「え、そうだけど。どうしたんだい?やぶからぼうに」 紐緒 「危険よ…危険だわ! 私が一緒についていって上げる」 ん、なんだ!? 予想外に有難い事ではあるが相変わらず理由が解らんぞ、 とりあえず反感食らうと怖いので黙って従うとするか 俺 「あ、ありがとう。助かるよ…」 紐緒 「当然ね、それじゃ行きましょう」 俺 「どこに行くんだい?」 紐緒 「いいから私について来なさい」 俺 「はい。」 という訳で、相変わらずのペースで俺は紐緒さんに連れ去られた。【時計台】
俺 「でかいねぇ」 紐緒 「目立つ場所に時計があるのは便利ね」 俺 「学校か何かでも昔から使われてる手法だよね。 合理的だね」 紐緒 「さっさとデジタルにすればいいのに」 俺 「そ、そうすると文化的価値が薄れるんじゃない…」 紐緒 「ふん、伝統主義ね。科学の敵よ」 俺 「そ、そうかもしれないね」 紐緒 「その内、私の目覚まし時計にしてくれるわ」 俺 「あ、それは便利だねぇ」 紐緒 「ほほほほほ!」 俺 「ははは」 と、俺等は観光に来てる周りの人間から冷ややかな視線を感じながらも、 時計台の内部見学等もさせてもらいそれなりに楽しんだ。 紐緒 「ふう…陳腐な構造の建物ね、 私だったら3日でこれ以上の建物に仕上げられるわ」 俺 「流石だねぇ」 紐緒 「北陸を拠点にして発射基地を設ければ 他国への牽制になるわね…」 俺 「紐緒さん!?」 俺は彼女のただならぬ眼力に脅え 思わず大声を出し彼女を現実の世界に引き戻した 紐緒 「あっ ひ、独り言よ。 気にしないでいいわ」 明らかに本気を感じさせたが 下手に深入りしてとばっちりを食らうと怖いので黙っておこう そうだ、あのロビーで言ってた「危険」について聞いておくか 俺 「紐緒さん?」 紐緒 「なっ何よ!? 時計台の地下に巨大誘導騨の発射基地とコントロール室を 設立すれば他国の住民全てを統治下におけるとか目論んでないわよ! こ、この人は… 俺 「い、いや、それは思ってないんだけど。 ほら、今日声をかけてくれた時に「危険」って言ってたじゃない。 あれの意味が解らなくて、もしよければ教えてくれないかな」 紐緒 「ふう、馬鹿ね貴方、 北陸には敵が沢山居るのよ…」 俺 「敵?」 紐緒 「そう、敵よ。人の肉体では遠く及ばない猛獣や、 得体の知れない非科学的生物」 俺 「猛獣や非科学生物!?な、なんだいそれは!」 俺は彼女のその言葉に興奮し、 思わず声を荒げてしまった。 すると彼女は信じられない一言を口にした再生ボタンで紐緒さんと田中の会話の模様が見れます
俺 「くっ熊と!?危険って熊!? つーかどうやった戦うんだよ紐緒さんっ」 紐緒 「ふっ、馬鹿ね、科学の力が何の為にあると思っているの、 浩二君。」 俺 「はっ!」 俺の脳に閃光の様なインスピレーションが過ぎった 俺「そ、そうか紐緒さん。 君は科学と自然を闘わせるんだね!」 紐緒 「そう、そして科学者は常に自然や野生と敵対関係にあるの、 半人前とはいえ科学者の端くれである貴方が狙われるのもまた運命」 俺 「そんなボクを守ってくれようと…」 紐緒 「ようやく私の偉大さが理解出来てきたようね…」 俺 「ありがとう紐緒さん…」 俺が感情に振り回され感激してると、 彼女は畳み掛ける様に誘いをかけてきた。 紐緒 「浩二君、明後日も一緒に行って上げるわ。 きっと奴はくる筈よ」 俺 「うんっありがとう!」 そして、明後日の自由行動の約束もして 俺と紐緒さんは分かれようとした、その時である「ぐわぉほぅー!」
俺「やっ野生だ!」
俺
「えっえっ腕って!?」
紐緒
「いいからっ!さっさと腕を巻くって私に任せなさい!」
俺
「はっはい!」
俺は彼女に一括されると腕を捲り彼女のなすがままにした
すると彼女はポケットから黄土色の液体が入った太い注射器を取り出し
俺の腕にぶっとい針を躊躇無くさしてみせた
その針が俺の血管を刺した瞬間、
俺の全身に稲妻の様な衝撃が走ったのを感じた
そして興奮とも快楽ともつかない感情であの熊に対決を挑んだ、
幸い紐緒さんが熊との対決場所を誘導してくれた為、
他の観光客にその惨劇が目に付く事はなかった。
闘いの結果は
科学の力が勝ったのだ。
この力さえあれば彼女がいう野生の他に忍ぶ得体の知れない生物、
また、俺を追い詰めたあいつらに報復を…
その後、俺と紐緒さんは時計台に戻り
二日後の再開を約束した
紐緒
「ちなみに今日の事は私と貴方の秘密よ。
それじゃ明後日の自由行動、ロビーで待ってなさい」
俺
「ああ、紐緒さん楽しみにしてるよ、
ちなみにこのビルドアップ効果っていつ消えるの?」
俺はTシャツからはちきれんばかりの筋骨隆々の
胸板をパンパン叩きながら彼女に薬の期限について聞いた
紐緒
「1〜2時間って所ね。先ほどの活動量でかなりの体力を
消耗してると思うから、もうすぐ効き目は切れると思うわよ」
俺「そうか、良かった…
流石にこの体じゃホテルに帰れないからね」
紐緒
「ただしっ」
俺
「ん、なんだい?」
紐緒
「急激なビルドアップの反動で、
今晩と明日に凄まじい筋肉痛が貴方を襲う筈よ。」
俺
「えっええー!?マズいよそれじゃっ
団体行動出来ないじゃんっ」
紐緒
「慌てるんじゃないわよ、これを上げるわ。
いいこと、今日食後と朝起きてから2錠ずつ水で飲みなさい」
俺
「ん、このカプセルは何?」
紐緒
「鎮痛剤、及び、精神安定剤よ。
強力だから服用量は間違えない様にね」
俺
「こ、この薬に副作用は…?」
紐緒
「無いわよ。安心しなさい」
俺
「ほっ…」
そして俺と紐緒さんの北海道修学旅行、激動の日が始まりを告げた。
]]>
【釧路】
まず、釧路にて「漁業市場」を見学 非常に生臭い。 正に商品管理といった具合にきっちり箱詰めにて整備されてる魚連中を見ると 人は自然を材料に生きてるんだなあ、と、 しみじみ海の恩恵を感じ感慨深いものがあった。 また、魚の入った木箱にそれぞれサイズの表記らしく 「大」「小」「中」の3サイズ他、「大中」「中小」等、細かく表記があるのだが、 「小大」等のサイズは、箱についてる模様で「小犬」と 書かれてる様に見える物が複数あり何ともシュールな光景だった。 更にここに来るまで殆ど何も喋らなかった美津島が 箱詰めされた無数の魚を見るなり 「ギョギョッ!」 と、わざとらしいボケを何度も繰り返していたのだが、 俺も好雄も彼を傷つける事になると悪いと思い あえてそのスタンドプレイを交わしつつ魚見学を続けた。そして、次に向うは「摩周湖」。摩周湖では近くの広い展望台から静寂に広がる広大な湖と、 色彩豊かな山々を見たりして3人で自然をゆったりエンジョイ出来た。
【阿寒湖】
その後、「阿寒湖」周辺の観光ショップに立ち寄り、 研究材料になるだろうとマリモを3瓶程購入した。 他にも思ったより色々な種類の店があり3人で物色しながら買物を楽しむ事が出来た。 女子は相変わらず芳田グループの元を訪れてる為、 我々男子は別班状態となり担任が集合をかけるまでは蚊帳の外である。 それと、余談ではあるが別クラスの誰かが観光ショップの店員と喧嘩になったとかの騒ぎで 一時ショップ近辺が騒然としていた。 そういえば、2年になり別クラスになった穴吹の青ざめた姿も見かけたけど、 あれあいつのクラスだったのかなあ…何にせよいざこざはゴメンと 俺はヤジウマに混ざり距離を一定に保ちつつその様子を恐る恐る眺めていた。【網走】
そして旅行2日目。 今日は網走の旅館を出発し近隣にある観光名所の王道 「博物館、網走監獄」を見学する予定だ。 博物館に着いて早々案内係のおっさんが 「はい、こんにちわー皆さん、 ここでは、素行の悪い子は本当にぶち込まれますので しっかりオジさんの言う事聞いて下さいね」 と、パンチのあるボケをかまし 我々生徒連中の心をグッと掴んだ後も、 「囚人の労働時間は1日11時間」 「使用可能な給料は手に入る給料の約5分の1」 「基本は檻の中で生活し、 その間名前は捨て番号で管理される」 等々 「オジさんも昔はよく臭い飯を食ったもんさー」 等と、本気か冗談かよく解らないスリリングなブラックジョークを展開し 生徒達の心をガッチリ掴んでいた、只者ではない。 そして、多少ネガティブな気分で網走を後にし次に旭川に向った。 【旭川】 ここではラーメン村に移動しグループで決めた好きな店に入り、 昼食を兼ねてラーメンを食事にする事が出来る。 女子連中は相変わらず木本のグループに行ってしまって居なかったので、 美津島、好雄と相談した結果3人一致で「味噌がいい」という事で 味噌ラーメンが美味そうな元祖・旭川ラーメンに入り本場の味噌ラーメンを堪能した。 コッテリしてるんだけど、後味はスッキリで麺に透明感があり喉ごしはツルって入ってくる。 非常に満足感のある食事だった。 【札幌】 そして、その後、札幌の宿泊地に移動し北海道旅行の2日目が無事終了した。 班人数を半分削られて男子校状態である事以外は順風満帆であり屈辱的でもある。 いよいよ、明日からは自由行動だ。 うーん、そういや無計画だったな、どうしたもんだろうか。 ]]>危険だ
俺 「ひ、紐緒さん。 是非参加したいんだけど、 残念だが俺の力じゃまだまだ 君の助手すら役不足になりそうで…」 紐緒 「そう。なら無い頭を駆使して精一杯考えなさい」 俺 「ありがとう」 紐緒 「褒めてないわよ」 うーん、それにしても意外な進展だ。 カマをかけられたのかも知れんが、 まさか彼女の方から直接誘いがあるとは。 何はともあれ少し嬉しいぞ、 これを機に様子を見ながら少しずつ近付こう。 そして、俺は相変わらず合宿中も紐緒さんと微妙な距離関係を保ちつつ、 ワクワク、パーヤンの両先輩と課題研究に没頭し、 まるで万華鏡かの如く色鮮やかな大気の成分研究に勤しんだ。 そして合宿も最終日 俺 「ふぅ、いよいよ今日で合宿も最終日か… 色々あったが楽しかったな」 気だるい疲労感に包み込まれながら 合宿中の研究成果に思いを馳せていると、 部長から号令がかかった。 部長 「皆ー!そろそろ夕食の時間ですっ 食堂に集合して下さい!」 あ、もうそんな時間か。 と、気付くと午後7時を回っており 不思議なもので気付くと急に腹が減ってきた 「グーギュルルルルー…」 我ながら凄い腹の虫だ… 俺 「うーん、とにかくさっさと食堂に行こう」 が、食堂に向う途中も腹の鳴りは一向に鳴り止まず 先ほどまで空腹で感じていた胃の違和感が 別な危険信号である事に俺は気付いた 俺 「んっ!?…ぎゅっ」 やっ、やばいぞ! アメリカのボロレストランでイカスミと思って食べてしまった 腐ったカルボナーラの食後以来の危機だっ そして周りを見渡すと、 俺同様、科学部員の殆どが床に倒れこんでいた。 何か知らんが恐らく食中りだろう… いつ食った物が駄目だったんだろう 俺 「と、とりあえずトイレに…」 俺はトイレに向かい、 手塚治虫に出てくる漫画キャラの様に 不自然な前傾姿勢で必死の小走りをし始めた 俺 「くーっ…競歩の選手って大変なんだなあ…」 括約筋をキツくしめながら トイレに向かい鬼の形相で手塚走りをしていると 食堂の方角に紐緒さんが見えた 紐緒 「うーんおかしいわね…」 俺 「あれ、紐緒さんだ。 どうしたんだろ?」 首を傾げながら今朝の我々の朝食が入ってる 鍋の中身を神妙な面持ちで覗き込む彼女を、 手塚走りを止めマイケルジャクソンの ムーンウォーカーの様になりながら眺めていると 次に彼女は衝撃の台詞を口にした紐緒 「薬の調合を間違えたのかしら?」
俺 「そうか、彼女が今朝の食事を作ったのか」 . . . . . . . . . . 俺 「腹も腰も痛いなぁ…」 そして予想通り波乱含みの合宿は紐緒さんの最終兵器により 科学部員殲滅という形で幕を閉じた。 来年は参加パスしようかなぁ…ぅ゛ぁっ!? 「グリョリョリョ」
]]>「ボゴッ!」
俺 「っぎゃ!!」
女の子声が耳に届いた直後、俺の顔面に強い衝撃が加わると一瞬で 目の前が真っ暗になり俺は一時の間気を失ってしまった。 そして数分後、俺は顔に残る痛みを散らす様に頭を振り 先ほど衝撃のあった鼻骨周辺をさすりながら ゆっくりと起き上がり、眼を見開いた。 すると目の前には髪を三つ編みにした、 テニスラケットを手に持った女の子が立っていた 女の子 「だいじょうぶですかぁ?」 俺 「…ん…き、きみは誰だい?」 女の子 「ごめんなさい、 テニスをしておりましたところ サーブミスで貴方の方にボールが飛んでしまいまして…」 俺 「あー、いいよいいよ。 っていうか、本来テニス部のコート裏で 寝てた俺も悪いんだし。」 女の子 「そうですか。それはよろしゅうございました。 それでは…」 俺 「っとと、待った待ったっ せめて名前ぐらい聞かせてくれよ!」 女の子 「これはこれは…失礼いたしました。 私、古式ゆかり、と申します。 そちら様のお名前もお伺いしてもよろしいでしょうか?」 俺 「俺は田中浩二、よろしくね (うーん、この娘の名前どこかで聞いたような…)」 女の子 「こちらこそ、よろしくお願いいたします。 それでは、私、練習がありますので失礼いたします。」 俺 「うん、それじゃまたね」 うーん、どこかで聞いた事があるんだよな… 古式、古式… というか、うちの学校には何であんな パンキッシュなヘアスタイルをした女子生徒が多いんだろうか。 これでは不自然な俺の白髪もまるで目立たない。 まあ、それはそれで好都合な訳だが。 と、俺が先程ボールをぶつけられた顔を さすりながら記憶を手繰っていると校庭にチャイムが鳴り響いた。 いけねっ!? 今日は科学部の合同研究発表の日じゃないか! 早く部室に行かなきゃっ 俺は思わず飛び上がると 科学部へとすっ飛んでいった。 そして科学部 俺 「遅れてすいません! 発表の方を… と、俺が言いかけたその時、部室の教団にはすでに紐緒さんが立ち、 パーヤンとワクワク先輩を両サイドに配置させ研究発表を行っていた。 紐緒 「遅かったわね浩二君、 早くこっちに来なさい」 ワクワク先輩 「あっ、田中くん、こんにちわぁ」 パーヤン 「こっちょお!」 と、いつもながらキビキビとした 紐緒さんに頼りない先輩二人に誘われ 俺は黒板の前に立った。 紐緒 「それじゃあ早速あれを用意して!」 「パンッ!パンッ!」 紐緒さんが手を二つ叩くとワクワク先輩とパーヤンの二人は 部室の奥にある部屋に行き何かを取りにいった。 俺 「紐緒さん、一体何をするんだい?」 紐緒 「生育研究の一環ね。まあ、大した物ではないわ。 軽いお遊びだからアンタは黙って見てなさい」 俺 「解ったよ」 いつもながら冷淡…もとい、淡白な口調に俺が従っていると ワクワク先輩が奥から巨大なキャスター付きの水槽を引きずってやって来た ワクワク先輩 「持ってきたよぉ、紐緒さ〜ん」 パーヤン 「キャーっ!大きいわねぇ!」 俺 「こっこれは!!」 ウーパールーパーだっ! しかし、これはデカい…間違いなく2mはあるぞ… しかも何故か水槽の中には水が入っていない! こ、これは一体… 俺 「ひ、紐緒さん…確かウーパールーパーは水中生物じゃ」 紐緒 「元々サンショウウオの一派なんだから、 呼吸器官だけ成育後に肺呼吸する様にイジったのよ。 それと昼間の生活に適する様、 栄養素を大気中から光合成出来る様にね。」 ワクワク先輩 「可愛いねぇ」 パーヤン 「本当ねーっ!」 ワクワク、パーヤンの両先輩は食い入る様に 水槽の中をノロりノロりと動き続ける ウーパールーパーを眺めている。 俺 「…」 紐緒 「えー、皆さん。この様にアルビノ個体生物であるアホロートル、 俗称ウーパールーパーはその体質故 体内にて色素合成が不可能な不完全生態でありました。 その為、紫外線防止の為のメラニンを体内に含有しないので 日中の飼育には大変デリケートになる必要がありましたが、 この度、私の研究により一定環境下でこの生物を飼育する事で大幅に巨大化し、 更に、本来彼等にとっては有害となる筈の太陽光から必要なエネルギーのみを摂取させ、 紫外線他、害となる成分は排泄物として体外排出する事で 永続的に自給と育成が可能な生物に進化させる事が出来ました。 現在、このウーパールーパーの体長は2m32cm。 依然進化しておりこの成長を止める場合は 日の光が比較的弱い夜間飼育に切り替え、 大気中で光からのエネルギー摂取を抑制させる必要があります」 と、紐緒さんは淡々とこの巨大な生き物に関する 研究成果を発表していた。 うーん、それにしても光を天敵とする生 物の特徴を逆手に取り光合成で進化する 生き物に変えてしまうなんて… 流石、紐緒さんだ。もう自分で言ってて訳が解らない。 と、我が班(正確には紐緒さん)の研究発表も終わり、 その後も他班による研究発表は滞りなく終了した。 そして研究発表が過ぎて早2週間、 その週末に紐緒さんから思いがけない誘いがあった 紐緒 「あ、浩二君」 俺 「ん?どうしたの紐緒さん、何か用?」 紐緒 「今度の日曜空いてるわよね」 俺 「というか命令でしょ。逆らえないよ」 紐緒 「当然ね」 俺 「で、何」 紐緒 「それなら話は早いわ、 植物園に行くわよ。」 俺 「植物園?あー、そういえば 学校の近くに新しく出来たって聞いた事ある、解ったよ。」 紐緒 「忘れるんじゃないわよ。 それじゃ明日また会いましょう」 んー、植物園か。 植物と先日の研究成果は何か深く関係がありそうだな、 ま、明日行って直接伺ってみるとするか。 そして日曜、 それじゃ早速植物園に行くとしよう。 植物園に着くと珍しく紐緒さんが自分より先に来ていた、 俺は少々途惑いながらも彼女に挨拶をした。 俺 「や、やあ、ごめんね。 待ったかい?」 紐緒 「別に待ってないわよ、約束時刻通りだから。」 俺 「良かった。それじゃあ早速…」 紐緒 「中に入るわよ浩二君」 俺 「はい」 相変わらず紐緒さんにリードされっぱなしで中に入ると そこには園内一杯の色鮮やかな植物が咲乱れていた。 俺 「わー、これは凄いね」 俺がその様子に心打たれてると、 紐緒さんは目の前に咲く奇怪な模様の花を しげしげと見つめながらブツブツと独り言を言い始めた。 紐緒 「うーん、いいわね。 これは使えるわ。うちのもこの位育てておきたいわね」 俺 「紐緒さん?」 紐緒 「何よ」 俺 「いや、食虫植物見ながら 何ブツブツ言ってんのかなと思って…」 紐緒 「秘密よ」 俺 「そ、そう。それとこの前の研究成果凄かったね。 今回この植物園に来た事と何か関係があるのかい?」 紐緒 「秘密よ」 俺 「そう…」 紐緒 「えぇ…」 俺 「紐緒さん」 紐緒 「機密よ。」 俺 「機密かあ…」 僕等の植物園見学の時間は それなりに楽しく過ぎていった。 ]]>俺「っぎゃー!!」
「ぶるるるるるっ!」」(首振り)」 俺 「飛び散る!っから…、お前!」 時既に遅し。 スナフキンは差し出した俺の右手になみなみと廃棄物を吐くと、 首を思いっきり横に振り俺の体に疎状にゲロを飛び散らせた。 俺 「お袋ー!スナフが吐いたよー!」 母 「あー、さっき御飯食べたばっかりだからね。 吐いた後、拭いときなさいよ。」 俺 「っえー!?」 「ハッハッハッハッ…」 留学、部活動、独り暮らしと、 長い間実家を離れていた俺に対する部外者意識ともとれるスナフキンの反逆により 俺の登校は30分あまり遅れ遅刻ギリギリの中、 過酷な研究の間に身につけた気力と根性により無事定時に学校へと辿り着けた。 やれやれトンでもない目にあった… 飼い主の恩を忘れやがって。 そして、その後はいつも通り授業を平淡にやり過ごし授業を終えると 憩いの場である科学部へと歩を早めた。 そういえば、 5月頃にパーヤンが復学するって言ってたな。 紐緒さんは「生まれ変わる」って言ってたが、 果たしてどういう意味なのだろうか。 どの道、体調が整えば挨拶の為部活には顔位出すだろう、 そうすれば解る事だ。 今は研究と真の目的を紐緒さんに伝える為、 自分の事を率先して考えなければ。 そして科学部。 部活内はいつもの様な慌しい様子とは打って変わり、 各々自席の場に直立不動で部長の立つ黒板の方に視線を向けている。 と、俺はいつもと違う部室内の様子に途惑いながらも 自分の持ち場に入りワクワク先輩に状況を問いただした。 俺 「富永先輩、どうしたんですか一体? なんかいつもと様子が違うみたいですけど。」 ワクワク先輩 「あっ、田中く〜ん。 あのねぇ、予定より少し早んだけど 小宮君が今日から復学するらしいんだよねぇ」 俺 「えっそうなんですか!?」 俺は期待と不安が入り混じる複雑な心境で、 隣に立つ紐緒さんを覗き込んだ。 その表情は不適な程り自信に満ち溢れており、一片の曇りもない。 この彼女の自信は一体何を示しているかだろうか、それはもうすぐ解る。 そして次の瞬間、部室内の空気を取り仕切るかの如く 部長の第一声が部屋に鳴り響いた。 部長 「皆聞いてほしい。先日から体調不良を訴え 一時休学していた小宮君だが、 この度、無事復学する事になった。 彼女の休学期間において、各々部員の学年も上がり また、小宮君の事をよく知らない新入生も 居ると思うのできちんと紹介しておこう。」 そして部長が手招きをすると奥から小宮先輩が現れた。 部長 「小宮君入りたまえ」 パーヤン 「皆さん、こんにちわー!」 あれっ?おかしいぞ? ハイトーンボイスに太い身体。 見上げる様な巨漢ぶりは健在で、 これといった大きな変貌は見当たらない。 うーん、これはどういう事なのか。 俺は紐緒さんに耳打ちをして事情を問いただしてみた。 俺 「紐緒さん、話が違うじゃないか。 小宮先輩に大きな変化は見られないよ」 と、俺の言葉を耳にした紐緒さんは 思いっきり呆れた様子で僕に解説を始めた。 紐緒 「全く、貴方という人は。 人体において重要な箇所を見落とすなんて。 正にこれを 近・視・眼 的というのかしらね。」 俺「近視?」 俺はその言葉を耳にすると、 小宮先輩の眼の辺りを確認した。 俺 「あれっ眼鏡が無い? 小宮先輩コンタクトじゃなかったですよね?」 紐緒 「そう、生まれ変わったのよ。 彼女は新しい世界を見る力を手に入れたの。」 元々、小宮先輩は視力が弱く、 漫画に出てくる牛乳瓶の蓋底をそのまレンズにした様な 眼鏡をかけていたのだ。 この班に入って2ヶ月程した頃 パーヤン先輩本人から聞いた話なのだが、 彼女は幼少の頃、ある事故で眼に障害をきたしてしまったらしく、 それ以後、年々視力の低下に悩まされていたそうだ。 そうか、こういう事だったのか。 俺は紐緒さんに明るい笑顔を返した。 紐緒 「不慮の事故とはいえ他人に迷惑をかけたせめてもの償いね。 まあ、小宮に飲ませた血清に混入してた抗生物質が 彼女の眼球を圧迫する外的要因を取り除く事が出来るのに 気づいたのは事故の後の事だけど。」 俺 「でも、良かったね。 小宮先輩、昔から眼科に通い続けてても 治らないって言ってたのに」 紐緒さんと言葉を交わしていると、 教壇で挨拶を終えたパーヤン先輩が こちらの方にやってきた パーヤン先輩 「ありがとう、紐緒さん。」 紐緒 「たまたまよ、 そういう状況にあったから処置をしただけ。 それにしても、99%成功するとはいえ、 1%の確証が持てない治療実験を受けた貴方も大したものね」 パーヤン先輩 「本当にありがとう…」 パーヤン先輩はいつものハイトーンボイスではない 落ち着いた声で薄っすらと眼に涙を浮かべ、 紐緒さんに深々とお辞儀をすると、 自分の持ち場に戻り、遅れた研究活動を取り戻すかの如くせっせと動き始めた。 ワクワク先輩は事情を察してか知らずか、 その様子を穏やかな表情で見守っていたのがとても印象的である。 俺 「それにしても、本当に凄いね。 分析と処方だけで他人の身体を治しちゃうなんて」 紐緒 「貴方に住所を教えて貰ったお陰ね。 簡単な検診と本人とその両親の承諾を 受ける事が出来たわ。」 俺 「いやいや」 紐緒 「それと、科学と医学は深く関係してるのよ。 貴方、そんな事も理解しないで研究を続けてる訳? 少しは精進なさい」 俺 「はい…」 と、前半しみじみと調子の狂った本科学部ではあったが、 その後はいつもと変わらずといった様子で、 相変わらず紐緒さんは自主研究、 僕等は課題をこなす為、お互い黙々と活動を開始した。 ただ、この一件が影響したのか前より紐緒さんの取る行動に 「怖い」「怪しい」といった印象が薄れてきている事に俺は気づいた。 テーマはどうであれ彼女は常に信頼出来る志を持って研究を続けている。 今はそれが理解出来る気がするのだ。 と、視力の回復したパーヤン先輩も戻り いつも通りの我が班の部活動は再開された訳だが 相変わらずのハードスケジュール。 体力・精神力共に浪費が激しい生活の中、 俺は自分なりの青春を謳歌させるべく 必死に学校生活に食らい続けていた。 紐緒 「あ、浩二くん」 俺 「あ、あれ?どうしたの紐緒さん? 今日は随分と早い上がりなんだね。」 紐緒 「一緒に帰るわよ」俺 「っえー!?」
紐緒 「何よ、バカみたいに大声出して。 そんなに私と帰るのが嫌なの?」 俺 「いや、そうじゃないけど、珍しいというか、天変地異というか…」 紐緒 「嫌じゃないならさっさと行くわよ」 俺 「あ、待って、紐緒さん」 俺はキビキビと動く彼女のペースに翻弄されながらも、 ご機嫌な様子で彼女の後をついていった。 紐緒 「ところで貴方、明日は暇?」 俺 「そうだね、暇かな。 これといった活動はないかな。 今週の休日は部活もお休みだし。」 紐緒 「そう、それじゃあ私に付き合いなさい」 俺 「また唐突だね。別にいいけど何をするのさ」 紐緒 「映画に行くのよ。 研究資料になりそうな作品が上映されてるの」 俺 「どんなの?」 紐緒 「ホラーよ」 俺 「ホラーか…」 紐緒 「ホラー」 俺 「2回言わなくてもいいよ」 紐緒 「で、どうする訳?」 俺 「解った、行くよ。」 紐緒 「当然ね」 そして約束の日曜日。 俺は映画館に行き紐緒さんが資料用にと見たがっていた フランケンシュタインの現代リメイク版「フンガー」を観賞した。 俺「(うーん、流石、原作がしっかりしてるだけあって中々面白いな)」 誘われた映画の面白さに感心しつつ スクリーンライトに照らされる紐緒さんの横顔を覗くと 激しく邪心に満ち溢れた顔をしていた。 やっぱこの人は信頼出来ない。 俺 「お、面白かったね」 紐緒 「もう一度観るわよ」 俺 「えっ!?」 紐緒 「ワンカットどうしても気になるシーンがあるの。 観るわよ浩二君」 そして俺は頑固な映画監督の様になった紐緒さんに付き合い その後、6時間に亘り閉館の時間まで同じ映画を延々と観続けた。 また、その週だけでは納得いかなかったらしく、 翌週の日曜も紐緒さんは同じ映画に俺を誘い その日も閉館まで延々とツギハギの化け物を観続けるハメになってしまった。 やっぱりこの人は信頼出来ない… ]]>