ゲーム日記:倫敦精霊探偵団 Episode.14
~前回までのあらすじ~ 19世紀、蒸気機関の発明により、めまぐるしい発展を見せる倫敦。 |
■ 精霊探偵ヴァージル
国籍:不明
本名:不明
超自然なものと会話することができる不思議な人物。
人間よりも、妖精のたぐいに親しみを感じている。
内気で人間嫌い。
第十四話 ~もうひとつの倫敦~
秋がはじまった。
冷たくなった夜風が屋根裏部屋を吹き抜けていく。
薄汚れた毛布にくるまりながら、ボクは奇妙な声にゆり起された。
『ぼくは・・・今・・・・・た、たすけて・・・くれ・・・』
頭の中に響くその声に、ヴァージルさんの顔が浮かんだ。
「倫敦万博を閉鎖しないと、このままでは大変なことが起こってしまう」
そう言い残し、彼が倫敦から姿を消して一ヶ月ほど経っていた。
その間、万博は”表向き”には順調に開催されていたけど、
ボクたちの前にはドラゴン騒動、怪人結社の襲撃があった。
ヴァージルさんが去ってから、ボクたちは道標を失いつつあった。
― 翌朝 ―
事務所の前には、早くもアリエスと“相棒”が待ち構えていた。
「ちょっとちょっと!あたし昨日の夜、ヘンな声きいたのー」
そう。アリエスもボクと同じ声を聞いていたんだ。
“相棒”はどうかはわからないけど・・・
こうして、ボクたちはヴァージルさんを探しに出かけたんだ。
ヴァージルさんが住んでいた、古いアパートを訪れた。
はじめて出会った頃と同じように、彼の部屋は草花で覆われていた。
『来てくれたんだね・・・帰れなくなってしまったんだ・・・』
そこに、ヴァージルさんはいた。
しかし、実体を持たない幻のように、すぐに消えてしまった。
どうやら彼は、”精霊の世界”に行ったきり、戻れなくなってしまったようだ。
人間であるボクたちの気配が精霊界にあれば、その存在をたよりに
人間界へ帰ることができるはずだと言う。
“人間であるボクたち”
ヴァージルさんの言葉がひっかかる。
まるで、自分は人間ではないと言っているような言い回しだった。
アパートを出ると、そこは開発地区の一角・・・
のはずだったけど、まったく違う世界が広がっていた。
見覚えのある、高台のパブがある地区のようだ。
霧で覆われたその場所は、”倫敦”であって”倫敦”ではなかった。
人の気配がしないのだ。
アリエス 「なんだかイヤな予感がするー!」
ここが精霊界 ―
風景は今の倫敦と一緒のように見えるけど、建物の配置が変わっていた。
人の気配はしないが、ピリピリした”殺気”がボクたちを襲う。
精霊界を彷徨うウィスプや、ヒトの形を成さない影・・・
悪しき魂が頻繁に襲いかかってくる。
無機質なこの場所を迷い続け、アリエスと”相棒”は疲弊している。
“音”のない倫敦。
普段は耳障りでしかなかった蒸気機関の騒音すら懐かしくなっていた。
ただ、ある匂いをたよりに、ボクたちは足を進めた。
花の香り。
精霊界にただよう、生命の息吹を感じることができる。
やがて、見覚えのある場所へとたどり着いた。
そこは、霊園だった。
人間の魂の眠るその場所で、見覚えのある人物が見えてきた。
「・・・この近くにあの人が・・・もうすぐ・・・」
これで3度目の出会いだった。
体の大きな紳士と、髪の長い貴婦人。
やはり、誰かに会いたがっているようだ。
アリエスは、今度こそといわんばかりに、二人のもとへと駆けていった。
すると・・・あたり一帯がまばゆい光に包まれて・・・
気が付くと、そこは公園高台の散歩道。
鮮やかな景色がよみがえる。
そこは、ボクたちの倫敦。人間界の倫敦へと戻ってこられたんだ。
そして、高台から倫敦を眺めているヴァージルさんがいた。
「ありがとう・・・やっと戻ってくることができた」
久しぶりの再会。
だけど、彼の横顔は依然にも増して悲壮感が漂っていた。
「でも、キミたちの行ったもう一つの世界が消えつつあるんだ・・・」
精霊界が消えてしまう。
それが、どんな結果を生み出すのかわからない。
なぜ消えてしまうかも、ボクたちにはわからない。
「ひょっとすると、この世界も・・・でも・・・キミたちなら・・・」
倫敦が消える ―
なぜなのか?いったい何が起こっているのか?
高台から眺める倫敦は、いつもと変わらない景色が広がっている。
夏は終わりを告げ、花々は大地に眠りにつく季節がやってくる。
また新たな芽吹きにむけて、眠りにつくようになる。
鳥たちは囀り歌いながら、冬の訪れを待たずに旅立ってゆく。
試練の訪れを感じさせる、冷たい南風が吹き抜けていった。
Episode.14 ~もうひとつの倫敦~ END
【公式サイト】http://www.bandaigames.channel.or.jp/list/_vg/lon0.htm
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