- 2006年5月 3日 16:09
■1996年 2月11日
科学部に入ってから早3ヶ月、
日々紐緒さんと同じ班で研究をしているが
相変わらず彼女は自主研究に没頭しており
僕等の部活動には目もくれない。
先日は虫籠一杯に見た事無い形の幼虫を敷き詰めて持ってきて、
30分に一回位、緑色の液体をスポイトで差し込んでいたが
あれは一体何だったんだろうか。
つーかパーヤン先輩の一件から部活を締め出された挙句、
生物の類の持込を一切禁止されたのはどうなったのだろうか。
そういえば紐緒んさんは
今自宅で小動物を使った生態実験をしてるけど
薬物反応が曖昧で難を示してるとか言ってたっけ。
確か、近所に動物園が建設されたって
街角情報誌に書いてあったな。
動物観察がてら紐緒さんを誘ってみるか、
見慣れない動物の溜り場だし
彼女の生態研究に役立つ事も少しはあるだろう。
と、俺は早速彼女を動物園に誘う為
電話連絡をしてみる事にした
俺
「あ、紐緒さ…」
得体の知れない鳴き声
「プギャルフ゛ゥアッーァ゛ァ゛ー!!」
俺
「ッギャーーーー!」
紐緒
「こら、ミチオ!静かにしなさい!」
ミチオ
「ホウッーゥ゙ゥ゙ゥ゙ー…ヒョビャー…」
俺
「っあ、ひっ紐緒さん…今の鳴き声は一体?」
紐緒
「あたしが実験用に可愛がってる
ルームメイトで巨大マングースのミチオよ。
今日の夜までの命だけどね」
ミチオ
「シャゥゥゥヴー!!」
俺
「そ、そう…元気いいね。
ところでマングースって実験用の
飼育許可ってあるんだっけ」
紐緒
「安心しなさい、元はただのモルモットだから。
ちょっとした化学反応によってこの程度の種別変換は可能なのよ」
俺
「…わー、凄いね」
紐緒
「崇めなさい」
俺
「うん、ところでさ、近所に動物園が出来たらしいんだけど、
良かったら紐緒さん一緒に行かない?」
紐緒
「動物園?何故にそんな場所へ行く必要があるの?」
俺
「いやー、
あそこなら研究の参考になる動物も沢山居るんじゃないかと思ってさ」
紐緒
「成る程、たまには、
野外調査もいいかもしれないわね。
いいわ、付き合って上げる」
よしっやったぞ!
研究の口実を元に紐緒さんと
初めて二人きりになるチャンスだっ
そして俺は足早に動物園に向かい
入り口で紐緒さんを待った。
待つ事3時間、
ようやく紐緒さんが現れた
紐緒
「時間通りね、さっさと中に入るわよ」
俺
「そうだね、中に入ろう
そして俺と紐緒さんは動物園に入ると、
早速当動物園の目玉でもあり紐緒さんも気になっていたという
巨大コアラを見物しに行った。
俺
「でけ〜…」
紐緒
「………壮観ね」
僕等はまずそのコアラの巨体に圧倒された、
何といっても体長3m、平均60〜80cmというコアラとしては
マンモスクラスのでかさだ。
物珍しさを越して感心していると
紐緒さんが話しかけてきた。
紐緒
「どう思う浩二君?」
俺
「何が?」
紐緒
「このコアラよ」
俺
「え?」
俺
「うーん…とりあえずデカいよね。
後、眼つきが怖いかな。
皆可愛いとか言って愛されてるけど
背中向けたら襲われそうな気がするよ」
紐緒
「それよ!!」
待ってましたと言わんばかりに紐緒さんは
大きな声を上げて僕を指差した。
そして僕に向けたその指をグルりと後方の檻の方へと向けると
今度はその中に居る動物を指差し僕にこう尋ねてきた
紐緒
「浩二君、あれは何?」
俺
「へ?熊だけど。それが?」
紐緒
「そうね。奴を見て何を感じるかしら?」
俺
「近づく距離と共に死が近くなっていくなと」
紐緒
「それじゃあ今度はこっちを眺めて頂戴っ」
と、紐緒さんが言うと、何を考えてるのか、
今度は僕等が元々目にしていたコアラの方を指し示した
俺
「デカ過ぎて遠近感が狂うよ」
紐緒
「違うのよ、見るのはあの柱に食い込む強靭かつ鋭利な爪よ」
俺
「っ!!」
紐緒
「そうっそして今度は熊を見なさい
その四股に装備されてる爪よっ」
俺
「こっこれわ!!」
紐 緒
「そう、、所詮コアラは獣。
周りの思い込みが決め付けてる勝手な判断で安全な草食動物扱いされているけど、
キッカケが無いだけでそれを与えてやればあっさり獰猛な獣になるに違いないわ!」
俺
「で、でも…コアラが人を襲うなんてあまり聞かないよね」
紐緒
「いい事!よく聞きなさい!
《MOTHER》Mを取れば《OTHER》他人よ。
すなわち熊と脳さえ入れ替えてしまえばコアラも同等…
いえ、熊の数段上の戦闘力を身につけた肉食獣へと変貌するわ。」
俺
「!」
紐緒
「そしてキッカケを与えた奴等に
人間同様の学習・言語能力を身に付けさせ…
っと、喋りすぎたわね」
俺
「え、どうしたの?」
紐緒
「何でもないわ」
俺
「でも気になるよ」
紐緒
「黙りなさい]
俺
「はい」
そうして、
紐緒さんとの動物観察を終え1日が終了した。
タメになる力説も色々聞けて参考になったなぁ。
にしても途中で途切れたあの話が気になる。
隙をついて徐々に聞き出していってみよう。