- 2006年5月 7日 17:14
■1996年 3月24日
5時限目の授業を終えた俺は帰宅準備をする奴等を尻目に、
MY巾着袋に実権に使う試験管とMYビーカーが入っているのを確認すると
急ぎ足で紐緒さんとワクワク先輩の待つ実験室へと向った。
そういえばパーヤン先輩はその後2月まで通学したものの、
やはりあの蛙が原因なのか(もしくは解毒用に紐緒さんに飲まされた液体)
1月の中盤から学校に来なくなり、2月の中頃から
体調が悪化し今は自宅療養を取っているそうだ。
うーん、流石に心配だから
紐緒さんにも連絡取る様に言っておくかな。
こんな言い方はしたくないが諸悪の根源は彼女な訳だし。
そうだ、物思いに耽ってる場合ではない。
早く実験室へと向わなければ。
と、急いで廊下に飛び出た俺に語りかける女の声が聞こえた
???
「浩二君」
俺
「ん、誰お前?」
俺は、心の中で思いっきりはてなマークを飛び出してみたものの、
彼女はやたらと親しげな様子で語りかけてくる。
この口調に流石にアンタ誰?はまずいだろうと感じ、
入学式の時に好雄の奴から譲ってもらった
目ぼしい女の子データが記載されまくった
手帳の写し書きの中から彼女の情報を探し出した。
あったあった…
えーと…俺の方も一応下の名前使って読んだ方がいいな。
名前は…
俺「 なんだい、うたおりさん? 」
詩織
「???」
やっヤベー
なんか俺すっごい間違えてる?
無難に上の名前で言っとくか
俺「あ、悪い ふ、じさきさん。
先輩に君に凄く声の似てる
うたおりさんって人が居てね。
振り向く前に返事しちゃって」
藤崎
「ふーん、そうなんだ。
あ、えっとね今度の日曜日空いてるかな?」
今度の日曜は特に部活の予定も無いし、
まあテストも終ったばかりだから暇といえば暇かな
俺
「あ、うん。忙しくはないよ、
どっちかって言ったら暇な方かな。」
藤崎
「ふふ、なーにそれぇー(笑)」
くーっなんだこの女はっ!
ムズ痒いっ!こんなの放ってさっさと実験室に向わなければ
俺
「あの、ふじさきさんゴメンちょっと俺部活に行…」
藤崎
「あ、それでね、もし良かったら
買い物に行くんだけど付き合ってほしいのね」
俺
「はぁ?」
藤崎
「ほら、もう春でしょ。
冬服との入れ替えもしたんだけど、
新しい服が欲しくなっちゃって」
俺
「いや、あのね…」
藤崎
「本当、それじゃあ…えーと。
今週の日曜にショッピング街で待ち合わ…」
俺「じゃいいよそれで!」
藤崎
「ありがとう、それじゃ楽しみにしてるね」
俺はとりあえずその女を振り切り遅刻気味になってる
実験室へと足を向けた。
全くうちのクラスにはイヤミな金髪といい
さっきのバンダナといいどうしてこうも
エゴイストが多いんだろうか。
そして科学部にやっとう着し今日の実験開始。
早速紐緒さんに当の課題である
パーヤン先輩の安否を気遣う様に釘をさしておいた。
俺
「紐緒さん、小宮先輩の事なんだけど、
もう休学して2ヶ月経つし連絡取ってみたらどうだい?」
と、彼女はその問いかけに以外な応答を返した
紐緒
「ふふっ…まー黙って見てなさい。
彼女は生まれ変わるのよ。後、2月後にはね」
俺
「うっ、生まれ変わる?」
紐緒
「そう、これは彼女自身が望んだ事でもあるの。
若干の休学も辞さないとの判断も彼女の意思よ。
学校側もそれを理解してるわ」
俺
「そ、そうだったんだ」
紐緒
「だから外野は黙って見てなさい。
目にもの見せてくれるわよ」
俺
「た、楽しみにしてるよ」
と、相も変わらず課題を無視し、
今日は虫籠一杯に肥大化したムカデ(蛙は持ち込みを禁じられた為)に、
餌をやっては5分に一度紫色の液体をそのムカデの腹に注入する
という独特な生物実験を行っていた。
そうしてパーヤンの居ない研究生活+学校の授業、
という平々凡々とした学園生活は過ぎていき
約束していた問題の日曜を迎えた。
うーん…平日の研究・授業で疲労も溜まってるし
出来れば休日は寝て過ごすか、NHKの科学番組でも
見ていたいんだけど。
まあ、仕方ないな、買い物に付き合うと
約束した手前一応待ち合わせ場所に行くとしよう。
同じクラスの女だし約束すっぽかして
何かと悪い噂を立てられても困る。
と、俺はクラスメートのふじさきの待つ
ショッピング街入り口へと向った。
と、そこには既にふじさきが待っていた。
俺
「悪い悪い、待った?」
藤崎
「ううん、今丁度きたところ」
俺
「そう、良かった」
藤崎
「それじゃあどこに行きましょうか?」
うーん洋服が欲しいと言ってたけどなあ…
この手の女は選ぶのに試着やら何やらで延々と時間がかかりそうだし、
とりあえず小物屋か何か入って適当な物勧めて帰るとするか
俺
「そうだね、それじゃあ
あそこの小物屋さんに入ろう」
詩織
「それじゃ行きましょう」
そして俺等は小物ショップに入り物色を開始した
入って10分程すると、俺が割りと興味のあるアンティーク工具やら、
また研究材料に使えそうなパーツっぽいものもあり
それなりに楽しんで商品を見ている自分に気づいた。
うーん、古物ってのも中々味があっていいなあ。
と、俺が骨董品に目覚めつつあるとふじさきが声をかけてきた。
藤崎
「ねぇ、浩二君、これなんてどうかな?」
っえぇ〜?
わっかんねーよ、っていうかこえーよ。
何だこれ?
うーん、俺の見方が悪いのかもしんないな。
もっかい目を凝らしてよく見てみるか。
余計こえーよ。大体何なんだよこれ、
何に使うかサッパリ予想つかねーよ。
藤崎
「どうかな?」
う〜ん…でもなあ。
ここで何か色々言って逆恨みされるのも嫌だし、
無難に答えとくか。
俺
「…う、うん。いいんじゃない、
君によく似合うと思うよ。」
藤崎
「えっ本当?凄い嬉しい」
………
こうして俺の強制ショッピング初体験は無事に事なきを得た。
その後、彼女の洋服の買い物に3時間延々と付き合わされた挙句、
家が隣だというだけで荷物持ちまでさせられた事以外は。
つーかよくよく考えたら、元来の目的はそれか。
なんだったんだあいつは。