※この記事は、過去にゲームバラエティサイト『ゲマニズム』にて投稿させていただいた記事です。
RPGツクールを徹底検証(マスターアップ編)
ソフトウェア側の落ち度によりゲーム開発を断念してしまった『はまりんクロニクル』。天才ツクール職人はまりんの意志を引き継ぎ、わたしがマスターアップを目指します。
まずは、はまりんの描いていた世界観設定についておさらいしていこう。
神の宣託を受けた主人公はまりんは、世界を救うために神の力を受け継いだ五英雄を探すことになる。
アスリア王家の姫:ゆう
風の戦士:しんじ
炎の守り神:イーサ
神の力を授かった3人を見つけたはまりんは、世界を魔界へと変えようとたくたくらむ魔王たけしを倒すため、光の神殿を目指して旅に出る。また、アスリア王から聞いたいにしえの言い伝えでは、以下のような世界観が伺える。
聖なる山、海の下、風の塔、炎の中、死の城に神がいる ―
この5つの神の存在は間違いなく主人公たちとリンクしているであろう。『風の塔』はしんじ、『炎の中』はイーサで確定。『聖なる山』がはまりん、『海の下』がゆう、『死の城』がしげると予想。彼らはこの神々の子孫であると想定して進めることにした。
次にキャラクター設定をおさらいしよう。ゲーム内の会話や行動から、主人公たちははまりんの身近な人物をモデルとしているのは間違いない。そこで、”実在するはまりん”を妄想しながらキャラ付けしてみた。
推定年齢:12歳 性格:ヤンチャ
特徴:腕相撲で女の子に勝てない
推定年齢:12歳 性格:おてんば
特徴:普段はおしとやかだが怒ると怖い
推定年齢:16歳 性格:冷静沈着
特徴:スーツにバンダナをコーディネートする勇敢な青年
推定年齢:高卒20歳 性格:バカ
特徴:力自慢のやる気わくわくワークマン
推定年齢:不明 性格:不明
特徴:壊れパラメータの最強人物
以上の世界観が、攻略およびデバッグ作業で見えてきた『はまりんクロニクル』の情報だ。実に興味深いではないか。
それでは、このゲームの完成を目指して手直ししていこうと思う。とはいえ、新たにマップやモンスターを作ったりしてしまうと、それはもうはまりんのRPGではなくなってしまう。よって、はまりんが既存で作成してあったダンジョンを活用して、伝説の神器を入手できるようにしようと思う。
・迷いの洞窟
・東の洞窟
・炎の神殿
・光の神殿
この4つがすでに作られていたダンジョン。
そして設定されていた4人の神器。
神の包丁(はまりん専用)
グランド・ロッド(ゆう専用)
エンペラーダガー(しんじ専用)
ヒュージ・ドリル(イーサ専用)
この4つの武器を手に入れることが重要だ。
まずは、ラストダンジョン光の神殿を考察しよう。
はじまりの街であるアスリア城下町を出ると、西側に山脈で囲まれた洞窟がある。これはおそらく古の神がいたという“聖なる山”に該当するのだろう。そしてこの場所こそが光の神殿であると思われる。
最初の街から見える謎の建造物・・・これはドラクエ1で竜王の城が見える場所にあったギミックと同じだ。はまりんのイベントクリエイター能力が本能的に発揮されたのだと思いたい。
この”聖なる山”が光の神殿であると確信したのには理由がある。はまりんが作りかけだった光の神殿には1か所だけイベントが作られていたのだ。
上記画像のまるく囲った場所。ここには本棚が設けられており調べるコマンドによって一冊の本が読めるようになっている。
ひかりのものが神のちからをもつと、みちはひらくだろう。(原文ママ)
“ひかりのもの” ――聖なる山の神の子孫であるはまりんを指す。
“神のちからをもつ” ――はまりんが神器を入手したことを指す。
神器:神の包丁を持っている状態で本棚の左側に設置された場所へ行くとイベントが開始されるようにフラグが設けられていたのだ!
「光の神殿を開く扉」というのはまさにこのことだったのだ。はまりんの描いていたこの壮大なRPGの全貌が、今ならこの私にも手に取るようにわかる。何度でも言おう。はまりん、君はまさにツクール界の神の子だ。
次にまよいのどうくつの説明をはじめる。
3階層作られていたこのダンジョンは、なんとレトロゲームの定番とも言える無限ループの仕掛けを再現しようとしていたのだ!若干12歳の少年は果敢にも高難易度のイベントダンジョンの作成に挑んだ。各移動先にイベントを設け、ループさせるよう移動場所を設定していた。しかしこのダンジョンを完成するには至らなかった・・・
その結果が、攻略編で謎に包まれていたあのメッセージにつながるのだ。
迷いの洞窟を完成させられなかったはまりんは「おれバカ!」と、自分のふがいなさを素直に表現した。なんてピュアな少年なんだ・・・
そう、この洞窟の入り口こそ迷いの洞窟への入口だったのだ。その証拠にこの場所は、ゆう・しんじ・イーサを仲間にした状態だと入ることが可能になるフラグが設けられていた。
そんな迷いの洞窟を手直ししようと思う・・・が、神の子はまりんが実現できなかったギミックを、私が完成させられるわけがない。
なので3つのうち1つの階層に到達した時点でボスモンスターを配置させることにした。これが私のツクール技術では精一杯なのだ。中央に徘徊するエンカウントシンボルを配置。ふれた時点でモンスターとの戦闘が開始されるようにイベントを設けた。
相手は事前に作成されていたセイントドラゴン。ただパラメータが異常に高かったので、申し訳ないがボスの強さは調整させてもらった。LV10になるとゆうちゃんが治癒魔法をバンバン覚えるので回復できる手段があれば倒せるようにしてある。
そして、このボスモンスターを撃破することで、ゆうちゃんの神器グランド・ロッドがドロップするように設定。これでゆうちゃんの最強アイテム入手イベントは終了となり、新たに次の神器入手可能となるイベントスイッチを設けた。
次に向かうのは炎の神殿だ。
「ずっと前におれの村『フジ』のそばにある祠にある石の様子が変わった理由を探すためだ」
これはイーサが仲間入りする際に話していた会話だ。つまりこの場所の様子がおかしくなっているというのが、はまりんの考えたシナリオだ。
この炎の神殿はフジの村の東側から入ることができるようになっていた場所である。デバッグ編でも入ることができたが、奥へ進むことができないように設定されていた。
残念ながらこのダンジョンは入口の1階層しか作成されていなかった。ダンジョンの構造を増やすことははまりんに対する侮辱にあたるので、この1階層で完結させるようにボスを設置した。
まずは通れなかった場所2マスに神器グランド・ロッド入手によって通れるようにイベントを作った。そしてちょうど穴蔵がある場所にオブジェクトを設置。ここでは真っ赤な壺を配置した(祠の石に見合うオブジェがなかった)。
この壺にきたがわとのバトルイベントを作った。強烈なインパクトのボスモンスター北川。はまりんは”北川”を炎の神殿の守り神を汚す存在にしようとしたのではないか?きっとそうに違いない。フジの村のNPCとの会話から、このダンジョンには守り神が祀られているとなっている。その様子がおかしくなった原因こそ、この北川なのだ。
そんなきたがわを撃破することで、炎の戦士であるイーサの神器:ヒュージ・ドリルを入手できるようにした。
残るダンジョンはひがしのどうくつのみ。
東の洞窟については不本意な形になってしまったことを許してほしい。このダンジョンの出口に設けられた移動先は、大陸のはるか東側に設定されていた。しかしその場所は何も手を付けられておらず、現時点では移動できない場所になっていた。
そこで仕方なく、中に入ることができなかった洞窟を利用することにした。場所は港町グーンから船で行ける桟橋の先、ここを東の洞窟とする。炎の神殿攻略後にこの場所へ進入できるようフラグを設置した。
この洞窟内部はかなり広大なマップだが完全に作りかけ状態。
設置されているイベントは1つ。ダンジョンに入ると自動的に発生するようになっていた。主人公が左を向く→右を向く→数秒ウェイト→会話発生の流れだ。
「この洞窟の中に、エルティアナ姫が・・・?」
まさかの新キャラ、エルティアナ姫の登場だ。しかしこの情報だけでの考察は厳しい。アスリア王の姫であるゆうちゃんとは別の人物だよなあ・・・はまりんの構築していた世界観がはるかに壮大だったことが伺える。
これはさすがに私では補完できない。
だから速攻で見つかる位置にエルティアナ姫を投入!
会話も一言だけ。
「あげる!」
こんな場所で姫は何をしているのか一切無視して、しんじの神器:エンペラーダガーを譲り受けた。ふがいない私のツクール能力を許してくれ。
これではまりんの作成してあったすべてのダンジョンを紹介できた。
あとは、神器:神の包丁の入手。
イベントボス:みむみむの登場。
そして描かれることのなかった最後の英雄しげるをどう料理するかにかかっている。
もうダンジョンがないので、神の包丁イベントはフィールドに設置することにした。湖の小島にオブジェクトを作る。エンペラーダガー入手後にイベントが発生するように設定した。ここに包丁が落っこちてるってだけでは味気ないので、水辺にいそうなボスモンスターを配置。
ここは当然みむみむとのバトルが繰り広げられる。みむみむはこれと言って特徴がないボスであることが何よりもの特徴である。それがみむみむなのだ。そのネーミングを評して神器:神の包丁をドロップするように設定してあげた。
これじゃ作者のはまりんが納得しないだろうが、はまりんの作った食材をすべて料理することの難しさはハンパじゃないのだ。
これですべての神器は揃った。残すは光りの神殿での魔王たけしとの決戦だ。そして、最後の英雄しげるはどこに!?
『はまりんクロニクル』最終バトルへ
最終決戦の場所となる光の神殿は山に囲まれている。ここへ移動するには飛空艇の入手が不可欠だ。しかし飛空艇の作り方がわからない。キャラクター編集画面に飛空艇があるので必ず作れると思うのだが私の知識では限界のようだ。
そうなると、光の神殿へ行くにはワープを使うしか道はない。
おこがましくも、ここで私のシナリオを追筆させてもらうことにした。
ワープ場所ははじまりの場所”はまりんの部屋”に決定した。
今まで家に帰ることができなかったお母さんとのイベント。そこへイベントを追加して神の包丁を入手したことで帰宅できるように付け加えてみた。以下、私の作ったシナリオ文章になります。
~神の包丁入手時のセリフ~
「こ、これは!!かあちゃんの包丁だ!・・・一度家に帰ろっかな。」
~自宅イベント~
はまりん「ただいま!!かあちゃん包丁あったぞ!!」
(BGM変更)
母さん「おお、ありがたや・・・ありがたや・・・」
(母、反対側を向く)
母さん「ついにこのときがくるとはのう。」
(ウェイト3.00秒)
はまりん「はぁー、ちょっと疲れたな。今日はゆっくり休むとするか。」
(主人公2Fへ移動)
母さん「気をつけるんじゃよ・・・」
このイベントを作成して、はまりんの部屋へ行くと追加イベントが発生して光の神殿へワープさせるようにしました。まあこんなんでいいだろ。ツクールでイベント作成するの疲れたし。
光りの神殿内部へ。はまりんが最後に手がけたラストダンジョンの扉の仕掛けの前へ。神の包丁を手に入れたはまりんは、神殿の結界を破ることに成功するのだ。
もうこれが本当に最後。はまりんの作ったネームドボスモンスターを総出演させてやろう。
中央の橋に固定ボス3連戦だ!
初戦:ウインドドラゴン
2戦目:ファイヤドラゴン
3戦目:たけしのみぎうで
どれも最強クラスの攻撃力を誇るツワモノだ。
特に危険なのが2戦目のファイヤドラゴン。攻撃力が高いので下手すると一撃で沈んでしまう。そこで・・・ちょいとばかり4人の勇者をチートレベル上げ。LV30まで育成して挑んだ。
このボス3連戦により、まだ料理していないはまりんの作ったキャラクターは”たけし”と”しげる”だけとなった。
4人の英雄たち。
神の子、はまりん
海の下の神の子孫、ゆう
風の塔の神の子孫、しんじ
炎の中の神の子孫、イーサ
彼らは冒険の終着点へと赴いた。
光の神殿の中央大広間。そこにいた人物とは・・・
はまりん「貴様がたけしか!!!」
「いいや、わしこそ5人目の勇者『しげる』じゃよ。お前さんでは、たけしを倒せんわ。」
この最終決戦前に”しげる”を投入することにした。
しげるのキャラクターオブジェクトには2種類あり、紫の仮面で顔を隠した状態のグラフィックも用意されていた。偶然か、それともはまりんの計画通りなのか?とにかくこの2種類のグラフィックを利用して謎の人物を演出することができた。
しかし問題はここからだ。
このRPGツクールは4人までしか仲間に入れることができない。これでははまりんの理想とした物語が完成することは永久に不可能なのだ。
いいシナリオが思いつかなかった。
私は神の子ではないのだ。
そして、苦し紛れのシナリオを作成した。ここから先の物語は、作者はまりんの世界観を完全にぶっ潰す結果となる。
クソゲーにしてしまったのだ。
はまりんよ、才能のない私を恨まないでくれ。
“はい/いいえ”の選択肢イベントを作った。魔王たけしから逃げようと迫る選択だ。
ゆう「そうよ、はまりん。戦いなんてやめて、一緒につつましく暮らしましょ!」
“はい”を選ぶと、はまりんとゆうがパーティから離脱する。これによってしげるが仲間入りできるようにした。
これは私の勝手な妄想でしかないのだが、はまりんは英雄と呼ばれる存在にはなりたくなかったのではないか?と感じたのだ。ほかのキャラクターと異なり、はまりんだけが普通の一般人だったからだ。それは装備品に顕著にあらわれている。
はまりんの装備できるアイテムは、どれも台所用品なのだ。
おたま、フリルエプロン、鍋のふた、まないた、泡だて器、三角巾、神の包丁・・・
もしかしたら、はまりんの将来の夢は料理人だったのではないか?
そう思った時に私が導き出した答えは、”普通の人間”でありたいと願うはまりんの想いだった。
それぞれの才能を役立て、それぞれの暮らす世界でみんなのために頑張る。それが大地に平和をもたらす根をおろす力となる。
はまりんにとって”魔王を倒した英雄”の肩書きは邪魔になるだけなのだ、と。
だから、はまりんとゆうは戦いの舞台から降りる決断を下した。
魔王たけしが現れた。
しげる「若造ども、指をくわえて見ているがよい」
しんじとイーサもパーティーから外れ、伝説の英雄はマントを翻し魔王へと歩み寄っていく。
最終決戦はまさかの一騎打ちイベントに。
とは言えラスボスたけしのHPはたったの1。たけしは暴力的な攻撃力9000と防御力5000を誇るが、どうも初手でMP吸引魔法を唱えてくるようになっている。そのため魔王との一騎打ちは、まさに一瞬にして雌雄を決することとなった。
伝説の英雄しげるは、魔王たけしを打ち破ったのだ。
たけし「…おーれーはジャイアン……ガキ大将……」
ゆう「え・・・?剛田くん・・・なの?」
はまりん「ゆう!!リサイタルがはじまる前に逃げるぞ!!」
『はまりんクロニクル』 ~ END ~
マスターアップ編、およびこの企画はこれにてすべての幕を閉じる。
この『はまりんクロニクル』が収録されているRPGツクールは、のちほど駿河屋にでも買い取ってもらうことにしよう。他の誰かに楽しんでもらえたら幸いだ。
ただ・・・
怪作RPGをこんな形でしか完結できない私を許してくれ
企画案:連射太郎
シナリオ:(詳細不明)はまりん
コメント
コメントはありません。