※この記事は、過去にゲームバラエティサイト『ゲマニズム』にて投稿させていただいた記事です。
RPGツクールを徹底検証(デバッグ編)
人は彼のことをこう呼んだ ―
神の子はまりん、と。
偶然見つけたRPGツクールの中に作られていたRPG『はまりんクロニクル』。その全貌を前回の攻略編で記しましたが、今回はデバッグ編です。ツクールのエディット画面を覗かせてもらい、なぜこの怪作RPGが途中で頓挫してしまったのか検証します。
まずは主人公キャラクター設定画面。
神の力を託された五英雄、はまりん、ゆう、しんじ、イーサ、しげるの情報を閲覧してみよう。
これは5番目の仲間であるしげるのパラメータだ。ぶっ壊れ性能となっている。まさに”最後の英雄”にふさわしい強さの勇者タイプとして作られていた。
主人公キャラクターは10人まで設定できる。律儀にも作者は10人フルに作ってあった。ただ、”じいさん”などモブキャラ扱いのものなどとりあえず設定しただけの代物のようだ。
続いて、敵キャラ編集画面へ。
これがラスボスたけしのパラメーターだ。ステータスは適当に作ったのであろう。最後に修正するつもりだったと考えられる。それにしても、たけしというネーミングセンス・・・やはりはまりんと同じ学校の人物がモデルなのだろう。お山の大将のようなイジメっ子で、ゲームの中ではまりんたちが倒すという設定にしたとも考えられる。
イベントモンスターはかなり多く制作されていたのだが、その中でも気になるネーミングのボスキャラが2体いた。
“みむみむ”と“きたがわ”だ。仲のいいクラスメイトだろうか?みむみむは三村のあだ名だろう。きたがわに関してはそのまんま北川だ。こんな香ばしい名前のモンスターを使うことなく挫折したとはなんとももったいない話だ。
続いて、魔法の編集画面。
こちらも31項目フル活用して作られている。
回復系は『いやしの○○』となっている。攻撃魔法はいくつかFFの魔法と同じ名前があるものの、しっかりした名前だ。補助系の名前はセンスがあり『ぜんそく』『石頭』『短足』など光る部分も見受けられる。
続いて、アイテムの編集画面。
アイテムは127種類作成できるが、さすがに全部は埋めておらず50種類程度。ただネーミングセンスは抜群だ。敵の魔法を封じる効果のアイテムは『ガムテープ』、睡眠効果のアイテムは『5円玉』だ。
気になるのは、途中のナンバーを飛ばして、121番目から4つの武器アイテムが設定されていた。
神の包丁(はまりん専用)
グランド・ロッド(ゆう専用)
エンペラーダガー(しんじ専用)
ヒュージ・ドリル(イーサ専用)
どれも最強の攻撃力を誇っている。まさに最後の神器にふさわしいアイテムだ。
そして最後に、マップシナリオ編集画面へ。
RPGツクールSUPER DANTEはフィールド画面のマップ編集はできない。マップが作れるのは、町、城、ダンジョンの3種類となる。はまりんは実に14種類のマップを作成してあった。
そして、最後に編集していた14番目のダンジョンが問題のアスリア王の墓だった。
前回の攻略編でどうしてもカギが開けられなかったダンジョン。ここではまりんは苦悩していたと想像できる。しかもなんと、カギのかかった先のエリアがしっかりと作られていたのだ!
そこではイベントボス戦が用意されており、緻密なイベントデータが書かれていた。しかしそのイベントは誰も見ることなく終わってしまった。そう、カギが開かない問題がはまりんを挫折へ追い込んだ。
その問題のカギ開けイベントの設定を確認したが、私にはよく理解ができなかった。なぜなら私はRPGツクールを作った経験がない。説明書ももっていない。そこで、RPGツクールの勉強を兼ねて攻略サイトで勉強することに。いい大人が小学生の作ったゲームを真剣に解析する作業がはじまった・・・
15分ほど学習したものの、はまりんの仕掛けたカギ開けイベントに穴は見つからなかった。こりゃバグじゃないのか?と疑いたくなるものの、ひとつだけ気になることがあった。
問題のカギ開けポイントには、なぜか扉のオブジェクトが設置できないのだ。
はまりんが仕掛けに使ったマップが上記画像の緑枠の部分だ。これが重大な落とし穴だった。くぼみのある穴蔵・・・作成者なら心理的に何か設置したくなる場所だ。はまりんはここをカギ開けタイプの隠し通路にしようと考えた。しかし、この場所ではカギ開けイベントを設定しても効果が現れないようになっていた。
これは完全にRPGツクール側の落ち度である。
このせいで、若き天才の手がけた怪作RPGは未完成のまま終わってしまったのだ。
さあ、ここからがデバッグ編の醍醐味だ。
私がここを手直しして、その後の物語を堪能しようではないか!
穴蔵のないマップに差し替え扉を設置完了!色々とフラグスイッチの設定がしてあったはまりんのカギ開けデータをコピーして扉の箇所に設置した。これで念願の『はまりんクロニクル』の続きがプレイできるようになったのだ!
さっそく前回までのセーブデータを使って、アスリア王の墓へと向かった。
扉は無事に開き、ボス部屋でのイベントが発生した。
ゆーれい「俺らの目的はアスリア王を脅して光の神殿の扉を開くことさ。俺様はあくまで魔界の王たけし様の命令通りに聞いたことさ。」
ここで、ようやくラスボスたけしの名前が出てくるのだ。たけしの目的は”光の神殿の扉を開くこと”であると判明する。そして今、アスリア王が危ない!!
久しぶりのモンスターとの戦闘。ボス戦だが、やることなくてLV8まで上げていたので余裕で倒すことができた。さっさとモンスターを倒して、アスリア城へ向かわなくては!
この後の展開もしっかりと作られていたことに、私は猛烈に感動している・・・レトロゲームのRPGのドキドキが、今、ここによみがえったのだ。興奮が止まらない状態でダンジョンを脱出すると、そこにはさらにうれしいイベントが待っていた。
しんじ「え?アスリア城が敵に狙われているって!?」
神の力を託されし風の戦士しんじがパーティーに加わった。しんじははまりんと違ってスマートな思考型のタイプ。クラスメイトの子の名前だと思うが、もしかしたらはまりんのお兄さんのような気がしてならない。しんじだけタイプが違う口調だし、装備できる防具がスーツだったりする。なので、しんじははまりんの兄であると推測して物語を楽しもうと思う。
推定年齢:16歳 性格:冷静沈着
特徴:スーツにバンダナをコーディネートする勇敢な青年
急いでアスリア城へ向かいたいところだが、ワットの町から出ることができない。丸腰のしんじの装備を手に入れないと進めない設定が設けられている。
まずはBARにいるしんじの友と会話するとフラグが立つ自宅誘導イベントへ。しんじの自宅へ向かうと、そこには装備一式が手に入った。
ここで、はまりんの驚くべきクリエイター精神が垣間見えた。しんじの部屋のマップは孤立して作成せず、最初の場所であるはまりんの部屋のマップの一部を活用しているのだ。これによって作成できるマップ上限を節約している。これはレトロゲームにつきものの”制限”を活用するという高い技術である。はまりんはツクールで作れるマップ数を完全に埋める計画のもとで進めていたのは間違いないだろう。
急ぎアスリア城へ向かったはまりん一行。アスリア城といえば、例の動かないNPCである。そのNPCが場所を1マス移動していた。なんとここにフラグが設定されており、アスリア城深部ダンジョンへの道が開かれていたのだ。
二手、三手先のイベントを完璧に仕掛けてくる天才・・・これが、神の子はまりんなのだ。
アスリア城深部ダンジョンは一階層だが、ワープを駆使して移動していくダンジョン。そして玉座がある場所へ出ると自動イベントが始まった。
はまりん「あんただれ?」
『フハハハハ!俺様はたけしの右腕!この世界を魔界に変えるため、神の力を探し求めているのだ!!』
しんじ「そんなことはさせない!!」
『ふっ度胸があるな!だか今のあんたらにはそんなことはできるまい!フハハハハハ!!』
せっかくの見せ場でちょっと噛んでしまったたけしの右腕。本当にこんな噛ませ犬感の漂うやつが魔王たけしの右腕か?と思いつつ戦闘開始。
やっぱり噛ませ犬じゃねえか
逆によかった。急にここで強いイベントボスとの戦闘があったらシナリオ進めることができなくなるからね。たけしの右腕を名乗る雑魚モンスターたちを倒し、アスリア王のもとへと急いだ。王様からはお礼に『ふねのきっぷ』を与えられた。
これを入手したあとに港町グーンへ行って、船を入手する段取りとなっていたようだ。しかしながら港町グーンの行動不能バグは、残念ながら私の技術では直せそうにない。グーンの町のエディット画面を覗くと、”ライブじいさん”が中央広場でオルガンを弾いているという面白そうな仕掛けが設定されている。なんとかバグを直すことはできないものか・・・
その前にお城から出れないデッドロックのバグがあったので修正しようとしたがうまくいかない。仕方がないので強制的に城下町へワープさせるイベントを作って難を逃れた。ともかく、これで新たなイベントフラグが設定されていた。まだ見ぬ英雄のひとりイーサ登場フラグだ!
城下町へ出ると、食堂にひとりの兵士が出現していた。彼こそがイーサだった。
はまりん「それ、うまい!?」
「うめぇーぞ!・・・すまんすまん。おれの名はイーサ!今も旅している!おまえらもしてるのか!?」
ゆう「そうだけど・・・それがいったいどうして聞くの?」
イーサ「ずっと前におれの村『フジ』のそばにある祠にある石の様子が変わった理由を探すためだ」
しんじ「おれらは世界を救う5人の若者を探しに行くんだ」
はまりん「と言ってもそのひとりはおれだけど・・・」
ゆう「でもなんかその2つの話ってどこか関係あるかも」
はまりん「ゆう、そうなるんならいっそイーサも一緒に行こうよ」
こうして神の力を託された4人目の仲間が加わった。攻略を断念したときには、まさか4人パーティが完成するまで作られているとは思いもよらなかった。イーサとの会話はよくわからなかったが、とにかくフジにある祠へ向かえばいいようだ。
フジに到着した一行は、開けることができなかった宝箱のもとへ。イーサ加入フラグにより宝箱が開き、イーサ専用の武具一式が手に入った。
イーサの装備は、武器きづち、防具ダボダボズボン、頭ヘルメット、指輪タオルとなっている。完全にドカタの兄ちゃんご用達のワークマン仕様。イーサのモデルは誰なのか?彼だけ名前がカタカナで人名らしくない。考察の結果、イーサははまりんの知り合いの兄ちゃん、もしくは親戚のたぐいかもしれない。”イーサ”・・・”いいさん”・・・”井伊さん”なのではないだろうか?ってことでキャラ設定決まり。
推定年齢:高卒20歳 性格:バカ
特徴:力自慢のやる気わくわくワークマン
フジの村で情報を集めた結果、炎の洞窟へ行けるようになった。ダンジョン内部は文字通りマグマに囲まれたマップになっていた。ここでもモンスターは出現しないので楽々と最深部へ。途中でセーブと全回復できる場所まで設けてくれてある親切設計。
最深部へ到着すると自動イベントが発生。フジの村で聞いたえりちゃんが登場。モンスターに襲われている最中だった。さあ次はどんなボスモンスターがお出ましなのか!?
うしおに戦が始まった。うしおにという直球ネーミング、嫌いじゃない。
結構攻撃力が高いモンスターだったが、防御が多いので誰もやられることなく6ターンほどで撃破。無事にえりちゃん救出に成功した。
そしてフジの町へ戻ってこれたのだが・・・
どうやらシナリオはここで頓挫したようだ。
そう、フジの村と言えばあのNPCがいたところ。
はまりん心の叫びNPCの言葉だ。ここまで緻密なイベントを仕掛けてきたものの、カギが開かない問題も重なりここでRPGツクールをやめてしまったのだろう。
デバッグ編はこれにて幕を閉じるとしよう。
仲間が4人集まるまでイベントが作られていた『はまりんクエスト』を存分に堪能できたのではないか?
否、この怪作RPGを完成させないまま死にたくない。
実はこの『はまりんクロニクル』には作成途中のダンジョンがまだ存在していたのだ!
・迷いの洞窟
・東の洞窟
・炎の神殿
・光の神殿
次回、『はまりんクロニクル』マスターアップ編へと続く・・・
企画案:連射太郎
シナリオ:(詳細不明)はまりん
コメント
コメントはありません。