※12月はまったく更新できませんでしたので、過去にゲームバラエティサイト『ゲマニズム』にて投稿させていただいた記事を掲載させていただきます。
年末年始の暇つぶしに見ていただければ幸いです。
今年は17本の雑記を更新いたしました。目標の20本には届きませんでしたが、今後も細々と続けていきたいです。
それでは、よいお年を。(2024/12/31)
RPGツクールを徹底検証(攻略編)
ここに、連射太郎から授かった1本のゲームソフトがある。
『RPGツクール SUPER DANTE』
ジャンク100円で購入した本作。連射太郎の提案で”中に入ってるデータをやってみよう”ということではじまった。しかし、制作されていたデータはバグであふれかえっておりエンディングを見ることができなかった。
そこで、わたくしがこのゲームを引き継いだのです。幻のエンディングを夢見て必死にプレイした結末をここに記します。
タイトル:なし
制作者 :はまりん
タイトルがないのは寂しいので『はまりんクロニクル』という題名を名付けました。ゲーム中の文章は検閲せず本文まま(漢字変換あり)記載します。日の目を見ることのなかった鬼才のRPGをお楽しみください。
『はまりん、目を覚ましなさい・・』
はまりん「ん・・・ん?なんだ?」
『わたしはこの世界を生み出した神。いまこの世界は危機にさらされています。』
はまりん「それとおれと何の関係があるんだよ。」
『わたしは5人の若者にわたしの力を託しました。あなたが最後のひとり。彼らをひとつにして欲しいのです。』
はまりん「ちょっとまてよ!なんでおれが・・・!」
『あなたの力がなければ彼らは自分の使命すらわかりません。あとのことはたのみましたよ。』
はまりん「お、おい!んな一方的かつ強引に言われても・・・!」
こうして神のお告げを聞いたはまりん。自分の名前を主人公に設定するあたりなかなか香ばしいゲームを予感させる。この作品の物語、それは世界の危機を救うために5人の勇者を集めて魔王を倒すために戦うという設定になっている。
5人の英雄は「はまりん」「ゆう」「しんじ」「イーサ」「しげる」だ。この5人が神の力を授かった者たちである。悪のラスボス『たけし』を倒すための大冒険が、いま始まる!
しかしこの設定には重大な落とし穴がある。
それは・・・
RPGツクールは4人までしか仲間にできないのだ。
はまりんはシナリオを考えたときにはこの事実を知らなかったであろう。
神のお告げが終わると主人公を操作できるようになる。部屋を出ようとするとイベントが開始され、宝箱を開けて装備品を入手しないと先に進めないようになっている。なかなか凝って作ってあり感心する。
装備アイテムは、武器:おたま、防具:フリルエプロン、盾:なべのふた、頭:あつりょくなべ、指輪:ぬきがた。この作品の装備アイテムの多くは台所用品となっている。はまりんの庶民的なセンスがキラリと光る設定だ。
無事に装備を整えたはまりん。階段を下りると”かあさん”との会話がはじまる。文章は長いので割愛するが、夢で神のお告げを聞いたことを母に話すが相手にされなかったはまりん。頭にきたはまりんは「世界を救うまで家には帰らないぞ!」と言って出て行ってしまう自動イベントが発生する。
制作者はまりんの性格が少しずつわかってきた。文章のセンスから見えてくる彼の人間像。おそらく年齢は12歳くらい、小学校高学年がしっくりくる。口調からヤンチャ坊主であると伺える。さらに『腕相撲で女の子にも勝てない』という設定から見るに運動はあまり得意ではなさそうだ。
推定年齢:12歳 性格:ヤンチャ
特徴:腕相撲で女の子に勝てない
はまりんの住んでいる場所はアスリア城下町。ここからは自由に行動できる。街の中には武器屋など各種お店、宿屋、BAR、食堂、NPC部屋など盛りだくさん。まずはBARにいる酔っ払いに話しかけると初の戦闘がはじまる。とても貴重な戦闘である。
なぜなら・・・
はまりんクロニクルには敵が滅多に出ないのだ。
だからレベルがなかなか上がらないという難点がある。
はまりん「ぶっこいてんじゃねーぞてめえ!!!」
はまりんは兵士の股間を蹴り上げ、文字通り急所に当たった!!!というはまりんジョークが飛び出したところで、旅に出る前にお城にいる王様に神のお告げを報告をすることに。しかしお城の入口にいる門番が通してくれない。しっかりとフラグを立てないと城には入れないのだ。イベント制作に関して言うと、はまりんは小学生とは思えないほど緻密に作っている。
NPCに聞いて回ると、どうやら城下町にいる占い師に相談すればいいようだ。
はまりん「どうして神さまは女子に腕相撲で勝てないおれに世界を救えと言ったんだ?」
占い師「まあ簡単に言えば選ばれし者はその人の子孫もそうなのじゃ。」
はまりん「神さまから5人に力を託された者はいるのか!?」
占い師「それはわからないにゃ。この国の王様に聞いて自分で探してみてにゃ。」
はまりん「むかつくわゴルァ!!!」
突然語尾が変わる占い師のことは置いといて、これで城内に入れるフラグが立った。城に侵入するために門番をだますイベントが発生する。
城内は広大すぎるため同じNPCがウロウロいる。話しかけた際の文章はみんな同じなのでコピーで作られたのだろう。そんな中、ひとりだけ動かないNPCがいる。そのNPCの先には、いかにもな階段があるが中には入れないようだ。はまりんの仕掛けるイベントは緻密だ。おそらくきっとフラグがあるに違いない。非常に気になる場所だ。
ようやく王様との謁見へ。このイベントで『はまりんクエスト』の世界観が語られる。
古い言い伝えでは
世界が破滅に追い込まれるとき
神は5人の若者に力を託し
その結果平和がもたらされた
聖なる山、海の下、風の塔、炎の中、死の城に神がいる ―
過去に存在した五英雄は、上記5か所にいる神との関係を匂わしている。そしてアスリア王の娘が、はまりんと同じく世界を救おうと考えているとのことだ。さっそく姫様を連れてくるよう命じられた。
はまりん「おれ名ははまりん!おまえの名を答えろ!」
女の子「『ゆう』よ。ところであんたはなにしに?」
はまりん「姫様を探しに・・・っておまえが・・・姫?」
ゆう「あら、なんでローブを着てまだ自分のことを何も言ってない人が姫だとわかるの?」
こうして1人目の仲間ゆうちゃんがパーティーに加わった。魔法使いタイプの女性キャラです。これは私の勝手な想像ではありますが、ゆうちゃんは製作者はまりんのクラスメイトだと考えられる。仲のいい女友達もしくは幼なじみであろう。ゲーム中でのゆうちゃんは、怒ると怖い女の子として描かれている。はまりんが”腕相撲で女子に負ける”という設定は、おそらくゆうちゃんに腕相撲で勝てなかったことが起因しているのだろう。
小学校高学年のはまりんは、ゆうちゃんに対してまだ恋愛感情は芽生えていないだろうが、気になる存在であることは間違いない。酒場で酔っ払いに絡まれるイベントがあるのだが、彼女は「かわいいねえちゃん」と声をかけられるのでルックスも悪くない少女なのだろう。そして彼女を”姫”という設定にしているというところが、なんとも甘酸っぱいではないか。
推定年齢:12歳 性格:おてんば
特徴:普段はおしとやかだが怒ると怖い
ゆう「わたし旅に出る!だいじょうぶ!はまりんがいるから!」
ゆうちゃんを連れて王様のもとへ。王様の許可を得てゆうちゃんとともに神の力を持つ者を探す冒険へ出ることになった。城下町へ戻るとゆうちゃんからヒントがもらえるイベントが発生。
ゆう「風の戦士はワットという町に住んでいたような・・・いってみよう!」
次に目指すのはワットの町。いざ、広大なフィールドへ!
おっとバグったわ。
突然海の中に放り出された・・・のではなくフィールド画面が斜めになっており明らかにバグ発生。連射太郎宅でプレイしたときはこんなことはなかったのだが。
カセット入れ直しを何度試しても修正されないので致命的なバグのようだ。
幸いにも、メニューコマンドを開いているときだけバグが直るようになっていた。つまりこまめにメニューを開きながら手さぐりで進めるしかない。まあ『はまりんクロニクル』はフィールドで敵が出ないのでなんとかなるか・・・
さて、まずは教えてもらったワットの町探しなのだが、道中で気になる洞窟がある。
洞窟に入ることはできず、謎のメッセージが表示された。
はまりん「おれバカ!!」
今までのじっくりと練って作り込まれたイベントと似つかわしくない文章だ。
なにかがおかしい・・・後にこのメッセージの謎が解明できたのだが、それはまだ先のお話。これは最終回のマスターアップ編で触れているのでお楽しみに。この洞窟を西へ進み、海岸を沿って歩いていくとワットの町が見えてきた。
敵が出ないのですんなりとワットの町へ。風の戦士がいるというので新たな仲間がいそうな予感。風の戦士というのは、王様から教えてもらった古き言い伝えのひとつ”風の塔”の神と関係しているのだろう。
聖なる山、海の下、風の塔、炎の中、死の城
王様から聞いた5つの神。これが主人公たちと関係しているのは間違いない。はまりんの頭の中の世界観がだんだん見えてきた。そんなことを考えながら油断してワットの町を探索していると・・・
とんでもない事件が起きた。
防具屋「いらっしゃいませ!どれにする?」
防具屋「ありがとうございました。またおこしくださいませ!いらっしゃいませ!どれにする?ありがとうございました。またおこしくださいませ!いらっしゃいませ!どれにする?ありがとうございました。またおこしくださいませ!いらっしゃいませ!どれにする?ありがとうございました。またおこしくださいませ!いらっしゃいませ!どれにする?」
防具屋と話すと会話ループによりデッドロック。
これは連射さんと一緒にプレイしたときも発生したバグ。買い物しても帰らせてくれない地獄の商売人だ。衝撃的だったので憶えていました。こうなったらリセットするしかない。このトラップが『はまりんクロニクル』一番の見せ場だ。
デッドロックになる前に宿屋でセーブしてあったので再開。ここワットの町でもフラグが立つイベント会話が盛りだくさん。長老らしき人物から『マータの子孫』なる言い伝えを聞いてから墓地の最奥へ行く、とある人物が出現するようになっている。本当によくできている。普通はNPCとの会話は同じことの繰り返しだ。しかし、はまりんはイベントフラグによって会話が変わる仕掛けを多く作っている。12歳(予想)が考えて作ったのだから、はまりんはまさにゲームデザイナー界の神童と言っても過言ではない。
広い墓地の奥にひっそりと建てられた墓石の前に、ひとりの少年が現れた。彼こそが3人目の英雄であるしんじだ。後にわかったのだが、この墓地イベントの作り込みは凄まじかった。
しんじと話す→右の墓地を調べる→アスリア王家の墓だと判明→しんじと話す→隠し階段が出現→しんじが消える
1つのオブジェクトで設定できるイベントはフラグごとに4種類。今回は隠し階段側の自動発生イベントも組み込んで設定してある。しんじのオブジェクトでは、後に仲間入りするためのイベント用も設定されている。荒削りではあるが作者はまりんは天才なのだ。
隠し階段の中はアスリア王の墓というダンジョンになっていた。ここで最初で最後の敵エンカウントが設定されていた。出現するモンスターはゆーれい。入手経験値5の雑魚モンスターだ。しかしこれ以外に敵が出ないのでレベルを上げる場所はここしかない。
ダンジョン内は3部屋あり、右の部屋でカギが入手できる。左の部屋は書庫で風の神について書かれた本がある。入手したカギで、中央の部屋のカギがかかった場所を開けるようになる。
しかし・・・
カギを使っても先に進むことができない。隠し通路があるのか?それとも巧妙なギミックが仕掛けられているのか?色々と試すものの進展しない。
これは手詰まり
結局カギのかかったダンジョンの先へ進む手段はなく、しんじを仲間にすることもできない。緻密なイベントを作り続けていたはまりんだが、ここで挫折したのか?私はその答えを求めて、まだ見ぬ大地を目指して旅立った。
アスリア城下町から北にある毒沼を抜けると、船が見える港町が見えてくる。
ここは港町グーン。
念願の船が手に入ること間違いなしの魅力的な町だ。
恐るべき港町グーンの罠。ひとたびその地に足を踏み入れると、突然の状態異常。
一切のコマンドが効かなくなりデッドロック
これは完全にバグだろう。やはりここでもリセットするしかない。こんなあからさまなバグをはまりんがテストプレイで見落とすはずがない・・・やはり、途中で制作を挫折したとしか考えられない。
ただ、なんとこの港町グーンの左にある波止場には秘密があった。街に入らずに直接船に触れればそのまま船に乗ることができるのだ!
複雑な水路の先に桟橋を発見。その先に洞窟があったのだが、残念ながら中に入ることはできない。やはり途中でツクールを挫折している。
ただ、ここで終わらせたくない。複雑な水路を辿っていけば別の島まで行けるのではないか?そう考えて水路を辿っていくと・・・
『このさき、きゅう』
というメッセージが出るイベントが設定されており進行不可だ。この先に船でワールドマップへ出られたら困るということを見越して設定されている。はまりんに抜かりはない。
私は海路をあきらめ、大陸内部にある最後の町フジへと向かった。ここが移動できる場所と想定される最後の町だ。
フジの町は仲間になる5人の勇者のひとりイーサの故郷である。NPCは皆イーサのことを口々に話している。この町の左右には別のエリアへ移動できる箇所がある。しかしその先へ進むことは現時点ではできない。そして、徘徊するNPCのひとりが不吉な言葉を残す。
NPC「あーーっつかれた!」
これは、はまりんの心の叫びだろう。
ここで挫折してしまったのだ。
序盤の緻密なゲームイベント。しっかりと確立されているシナリオ設定。『はまりんクロニクル』はツクールに組み込まれている”サンプルロード”を利用して作られたものではなく、自分でダンジョンを形成し、各種イベントを設定しているのだ。12歳の少年がここまで作ったのだから褒めてあげたい。
おそらくフジの町で4人目のイーサを仲間になる予定だったのだろう。もしかしたら、はまりんもここで気付いてしまったのかもしれない。
仲間パーティーは4人までだという事実を。
最後の5人目の戦士であるしげるのイベントがどこにも見当たらないことを考えると、”5人の英雄”を軸に考えていたはまりんの構想が崩れてしまったのかもしれない。
こうして『はまりんクロニクル』攻略編は幕を閉じる。
しかし、この怪作RPGの全貌を知らずに死にたくない。
天才ゲームクリエイターはなぜ挫折してしまったのか?
次回、『はまりんクロニクル』デバッグ編へと続く・・・
企画案:連射太郎
シナリオ:(詳細不明)はまりん
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