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長編雑記:『ヴィーナス&ブレイブス』

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長編雑記:ヴィーナス&ブレイブス(PS2)

『VENUS & BRAVES~魔女と女神と滅びの予言~』

2003年発売(namco)
ジャンル:群像ドラマチックファンタジー

「ブラッド・ボアル、受け取りなさい。あなたに予言書を授けましょう」

中世アクラル百年史考
~11世紀アクラル大陸の奇跡とその功労者~
・・・これは、世界の危機に立ち向かった女神と
不死なる男、そして名もなき少女たちの記録である。


「戦いなさい。100年間戦い続けなさい。あなたの部隊を率いて・・・」

100年以上にも及ぶ群像劇『ヴィーナス&ブレイブス』

これは、無限の刻を生きる”うつろわざる者”と、

破滅の予言を阻止した名もなき少女たちの軌跡である。

――――――――――――――――――――
アクラル正歴 999-1000年

~中世アクラル百年史:破滅の災厄~
999の年。
闇の眷属の最も邪悪なる魔が目覚める。彼は南の地に目覚め時を巡る。

次第に世界に絶望の種を撒くだろう。

アクラル正歴999年。
ブラッドと呼ばれる男がいた。
神殺しのブラッド ー その男は、300年以上生き続けている。
彼が根城としていたのは、アクラル南部の鉱山バルクウェイ。
そこで、『ゴーレム山賊団』と呼ばれる部隊を率いていた。
山賊といっても、仕事はもっぱら魔物の退治。
その山賊団には、ひと際明るく振る舞っていた少女がいた。

彼女はリリー(16歳)という名の若き神官であった。
山賊団を支える彼女こそ、この物語の”はじまりの人物”である。
彼女は、不老不死のブラッドに想いを寄せる少女だった。


ゴーレム山賊団には、リリーのほかに2人の名もなき少女がいた。

幻術師:ヒックル・フィー

当時16歳(999~1013)

神官:マリシア・アリステラ

当時23歳(999~1007)

アクラル正歴999年353日。
鉱山の街バルクウェイに魔物が出現するものの、
ゴーレム山賊団の少女の活躍により、災厄は回避された。
しかし、噂にすぎなかった予言が現実となり人々はうろたえた。
そんな中、団長のブラッドは街のはずれに足を運んでいた。
そこに現れた黒いマントに身を包んだ女性。
その彼女との出会いが、ブラッドの運命を変えることになる。

「受け取りなさい。あなたに予言書を授けましょう」

彼女の名はアリアと言った。何者なのかわからない。
そして、破滅の予言について語りだした。

“1099年、すべての世界が、死ぬ。”

その予言を回避するために、強力な隊を率いて戦うのです ―
こうして、100年以上にも及ぶ戦いの幕が開けた。


同年、バルクウェイに魔物が出現し、山賊団が討伐に向かった。
しかし、団員のひとりが腹痛により動けなくなりあえなく撤退。
この件に対し、ブラッドの前に現れたアリアは非情な宣告をした。

「戦力を半減させてしまう枷となる人物は排除せよ」

ブラッドにとって、そう簡単に決断を下せる問題ではなかった。
小さなときから一緒にいた、家族のようなものだからだ。
しかし、予言書が本当だとしたら弱き者は生きていけない。

確かにアリアの戦力の見立ては正しい。
だからこそ憤りがあった。
腹痛を起こしたウィッペルには、料理を記録する能力があった。
人には向き不向きがある。
彼には料理の道を目指すほうが幸せなのではないか?
ブラッドは予言回避のために戦う決意を胸に、彼を退団させる。
それは、団のためではなく、彼のためを思っての決断であった。

999-1000年 ゴーレム山賊団の主要メンバー

ブラッド・ボアル(騎士)
リリー・ウィルオール(神官)
ヒックル・フィー(幻術師)
マリシア・アリステラ(神官)
ガレフ・バルハン(戦士)
ウォラルス・ファリオン(僧侶)
ウィッペル・マグライネン(騎士見習い)※1000年に解雇

 

 

――――――――――――――――――――
アクラル正歴 1000-1010年


~中世アクラル百年史:バルクウェイ壊滅の予言~
月の年。火の年。岩の塚に腐った蝙蝠がとりつくだろう。そして火の年。
南に目覚めし黒の無限の災、岩の塚を打ち砕き、やがて全ての地を赤く染めるだろう。

次に起こる災厄は予言書によると1010年。
場所は同じくバルクウェイの地。
今回の災厄は、999年の予言よりも大きな被害が出るという。
ブラッドに警告したアリアは、自らの正体が女神であると告げる。
ゴーレム騎士団は隊を強化して、来たるべき災厄に備えた。
ブラッドは悩むことはなかったという。

彼の理想は「女の子だけの部隊を作りたい」ただそれだけだった。

活躍した新入団員
魔女:イグリット・ゼレルフィン(1007-1022)

魔女:エマリッタ・コルメン(1008-1022)

戦士・僧侶を早々に脱退させ、山賊団を桃色に染め上げた。
10年間で魔女を4名、神官3名、たくさんの女の子を育て上げた。
そして季節は巡り、予言の年を迎える・・・

魔物の出現に備え、バルクウェイの街に待機していた山賊団。
しかし、幼女フウリが魔物に襲われたという知らせが入る。
ブラッドは当然、壊滅の予言よりも幼女救出を優先する。
片腕である老将ウォラレスを街に残し、幼女救出に向かった。

ブラッドは幼女の救出に成功する。
しかし、その間に災厄は襲いかかっていたのだった・・・

魔将ナグゾスサールが出現した。
災厄がバルクウェイを襲い、〈業火の災〉ディーの手によって
老将ウォラレスが戦死してしまう。
駆けつけたブラッドと少女たちによって、
なんとか魔物を撃退することができた。

しかし、ブラッドはひどく悔やんだ。
アリアの示すとおりに、年老いた者を脱退させればよかったと。
“あらゆるものは通り過ぎてゆく”
無限の歳月を生きる彼は、老いの虚しさを改めて痛感していた。
しかしながら、幼女救出を優先したことは間違ってないはずだ。
自らの生きる道に迷いはなかった。


1010年。
ブラッドは、次の予言回避のために旅立つ決意をした。
しかし、長く仕えてくれたリリーはそれを拒んだ。

「100年先の未来を見据えて戦うのは立派なことよ。ただ…」

同じ山賊団のガレフとの間に子供が宿っていたのだ。
ブラッドはひどく絶望したという。
気付けば、少女はいつのまにか女性になっていたのだ。
母となったリリーを団に置くことはできない。

ゴーレム山賊団を、ウォラレス、ガレフ、リリーが去った。
ブラッドは山賊団の名称を捨て、少女を率いる騎士団となった。
人々は、彼らのことを“ロリコン騎士団”と呼んでいたという。

1000-1010年 ゴーレム山賊団の主要メンバー

ブラッド・ボアル(騎士)
リリー・ウィルオール(神官)
ヒックル・フィー(幻術師) ※山賊団最強の人物
イグリット・ゼレルフィン(魔女)
マリエッタ・コルメン(魔女)
リグリット・ボーブロ(魔女)
マリシア・アリステラ(神官)


ウォラルス・ファリオン(僧侶)※1010年に戦死


リリー・ウィルオール(神官)※1010年に退団
孤児となったフウリと身ごもった子を育てながら、町の復興に努めた。
1047年没。人気者だった彼女の葬儀には、町民全員が参列したという。

 

 

――――――――――――――――――――
アクラル正歴 1011-1020年

~中世アクラル百年史:スクーレ襲撃の予言~
葉脈に浮かぶ時を記す槍の台座。その羊水は黒き沈殿により汚されるだろう。
穢れは瞬く間に世界を覆い、滅びの歌を歌うだろう。
1020年。南に目覚めし”黒き無限の災い”、霧深き緑の世界に翼を下ろす。

次の災厄が起こる場所は、ローズベリー山道の先にある。
予言によると、水上都市スクーレが危機におよぶ。
その道中、ロリコン騎士団の一行は奇妙な三人組と出会った。

ギルドの依頼で訪れていた魔女ミレッタと出会う。
ミレッタにはすでにオルガという恋人がいたのだが、
気の強いミレッタを気に入ったらしく、快く手助けした。
しかし、彼女を入隊させると恋人のオルガもペアで加入する。
オルガはすでに衰退期を迎える剣闘士だった。
この人材運用に、女神アリアはかなりきつく諌めたという。


スクーレに到着した騎士団、まずは拠点となる場所を探した。
手分けして情報を聞きつけていたブラッドとミレッタ。
二人は酒場にて、謎多き美女と出会うことになる。
ヴィヴィという、年をとらないと噂の美女だった。
彼女にスクーレを案内してもらい、宿場を提供してもらった。
ボロボロだった宿の廃屋だったが、オルガに立て直してもらい
その場所を騎士団本部として、来たるべき災厄に備えた。

活躍した新入団員
祈祷師:テルマリ・ヴァロス(1012-1021)

騎士団初の巫女。素早さを生かして前線で戦った。


1015年。
ブラッドは女神アリアに呼び出された。
オルガの影響で騎士団の戦力が低下していることを指摘される。
オルガは騎士団のお荷物となっていた。
ブラッドは、オルガの大工としての才を生かせるよう
騎士団を脱退させて時計塔の修復を命じた。
しかし、それが原因でミレッタとの距離が離れていった。

1020年、予言の年。
スクーレに災厄の元凶である魔将ナグゾスサールが出現する。
騎士団は若き少女たちの活躍により勝利する。
しかし、ナグゾスサールは何度も転生するという事実を聞かされる。

少女たちは絶望した。
今までの戦いは何だったのか?
限りある人生を無駄に過ごしてしまったのか?
そして、ミレッタの心も同じように離れていった。
彼女は恋人のオルガの後を追うように団から去っていった。
残ったのは、ミレッタと同じギルド団員のレオだけだった。

1011-1020年 ロリコン騎士団の主要メンバー

ブラッド・ボアル(騎士)
ミレッタ・マグウェリン(魔女)※2020年に退団
テルマリ・ヴァロス(巫女)
カムリッタ・ヴェルヴィア(魔女)
クラリッタ・ウルマンサ(魔女)
トゥリメラ・モンドゥール(神官)
レオ・ガッタカム(冒険者)


オルガ・ドゥーガ(剣闘士)
1015年に退団。後を追うように退団したミレッタと結婚し、工房を開業。
5男6女と子宝に恵まれ、大家族の大黒柱となり仕事に励んだという。

 

 

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アクラル正歴 1021-1031年


ロリコン騎士団は若返りと強化を目指し、魔物撃退を続ける。
騎士団の活躍を耳にして、多くの入団希望が訪れた。
しかし、ブラッドは頑なに男性の入団を拒んだという。
そんな中、1023年に心強い少女の巫女シュリカが入団。
さらに1024年、聖騎士エルメーナが入団し騎士団は強くなる。


1025年。
リーヴェ修道院にて凄腕の戦士が士官先を探しているという。
それを聞きつけたブラッドは、念願のニンジャを仲間にする。
巫女・聖騎士・ニンジャの活躍により、魔物を撃退してゆく。
ブラッドは戦闘に参加せず、少女たちの成長を見守ったという。
こうして、1026年の予言も見事に回避したのだった。

活躍した新入団員
ニンジャ:レイ・アリステラ(1025-1033)

素早い連続攻撃と攻撃補助を武器に、必殺の大ダメージを与える。


しかし、人間は老衰してゆく。
衰退期を迎えた老兵は、若き芽に技を託して去ってゆく。
語り継がれている中世アクラル百年史 ―
それは、名もなき少女たちの活躍があってこその物語。
師は弟子に。親は子に受け継いでゆく・・・

気が付けば、リリーたちと別れてから17年が経過していた。
そんなある日、ひとりの若者がブラッドの前に現れた。
アッシュと名乗るその若者は、リリーとガレフの息子だった。

100年以上続いたという中世アクラル時代であったが、
団員の子が騎士団に入ったのはアッシュだけだった。
女性ばかりの騎士団員のほとんどが、生涯孤独を貫いたという。

そして、1030年。
ロリコン騎士団の歴史を揺るがす事件が起こる。


幻術師キャップルと、魔女カムリッタが結婚した。
ブラッドは知らなかった。
幻術師が男だという事実を。
ピンク髪の幻術使いが男のはずがない・・・
そんな固定観念がブラッドのハーレム計画を狂わせた。
ブラッドは怒りに震え、即日キャップルを解雇したのだった。

以降、騎士団に幻術師が入団することはなかったという。

1021-1032年 ロリコン騎士団の主要メンバー

シュリカ・リスキス(巫女)
エルメーナ・ルシオール(聖騎士)
テルマリ・ヴァロス(巫女)
レイ・アリステラ(ニンジャ)
メルロッサ・ベルソルド(魔女)
カムリッタ・ヴェルヴィア(魔女)
キャップル・マザク(幻術師) ※男性であることが発覚し解雇
イルヴェレア・キョウガ(ヴァルキリー)

 

 

――――――――――――――――――――
アクラル正歴 1032-1036年


~中世アクラル百年史:時計塔破壊の予言~
水に浮かぶ台座に守られた槍は、無限の災いに気に入られるだろう。
かつての友愛と別れを記した槍は、無邪気な兵隊ごっこによって粉々になる。
失われた契約は元には戻らない。

リーヴェ修道院に保護された赤子の物語。
生後間もない孤児の女の子は、ミレイという名を授かった。
体の弱かったその孤児は高熱により衰弱していた。

1032年。
ゴルドア平原を遠征中の一行は、修道女のフィルシアと出会う。
そして、ミレイを救うため薬草を入手しフィルシアに渡した。

時は流れ、1035年。
フェルシアが騎士団のもとへお礼にやってきた。


修道女に呼ばれて小走りにやってきたのは、
目をくりくりと動かす可愛らしい幼女。
その子こそ、3年前に助けた孤児ミレイだった。

「ミレイ、大きくなったら団長さんのお嫁さんになるの!」

曇りのない瞳でまっすぐに見つめ、ブラッドの膝に乗ってきた。
ブラッドは、不老不死の後ろ暗さが消えてゆくようだった。
ミレイとの出会いは、予言回避に大きな影響を与えた。


1036年、予言の年。
時計塔を守る少女マユラが、騎士団のもとに助けを求め訪れた。
転生したナグゾスサールが時計塔を襲撃したのだ。
魔将ナグゾスサールは、16年前にスクーレを襲ったときより
強大な力をつけて蘇った。
しかしながら、騎士団も同様に強くなっていた。

ナグゾスサールを撃退したブラッドは、マユラと語り合う。
彼女も永遠ともいえる長い時間を生きていた存在だった。
何百年もの間、たったひとりで孤独に時計塔を守っていた。
徐々に彼女はブラッドに心を開くようになった。
女性だけの騎士団を目指す彼は、マユラを同行させることにした。


・・・一瞬の出来事だった。
散らばった魔物の肉片が、時間を巻き戻すようにくっついてゆく。
魔将ナグゾスサールは早くも転生したのだ。
マユラは魔物に囚われ、レイラント砦へ連れ去られてしまう。

1036年121日。
マユラ奪還作戦を敢行する。
しかし、女神アリアはこれを認めなかった。
次の災厄の予言まで40日しかない。
すぐに旅立たなくてはならないからだ。

しかし、ブラッドは引かなかった。
少女ひとり救えずして、世界を救えるわけがない、と。


アリアの忠告を無視して、レイラント砦へ向かった騎士団。
しかし、砦の門は固く閉鎖されてびくともしない。
ブラッドは、スクーレの闇ギルドの力を借りることになる。
巷で噂の爆弾魔を雇うことになる。
彼女の名はユマ・ランカン。爆発物のエキスパートだ。

ユマの活躍もあり、レイラント砦の内部への突入に成功する。
そこには、バルクウェイを壊滅させた業火の災ディーがいた。
マユラを奪還した騎士団は、ディーの炎から逃走する。
このままでは砦は崩れてしまい、生き埋めになってしまう。
だが、ユマの無茶とも言える爆撃により風穴が開いた。

そこに、女神アリアが現れた。
スクーレの災厄を回避し、レイラント砦を強襲し、
命がけでマユラを救ったブラッドにアリアが発した言葉は、

「急ぎなさい」

たった一言だった。


1036年137日。
本来なら、次の予言にある王都ヴァレイへ向かう道のりは、
西の方角にある城塞都市を経由して進むはずだった。
予言まで残りひと月もない。
季節は冬。
騎士団は極寒のキーディス山脈越えを強いられた。

道案内を申し出たのは、修道院のフィルシアミレイだった。
目の前にそびえる山脈は、想像以上に厳しい雪に覆われていた。
激しい吹雪は、少し前の仲間の背中さえ見えなくなってしまう。


ミレイは当時6歳。
猛吹雪の中では、少女の体は胸元まで雪に埋もれてしまう。
しかし、少女は引かなかった。
過去に命の救ってくれたブラッドへの恩返しをしたかったのだ。
こうして、ロリコン騎士団に神官ミレイが加入する。

「ミレイも大事なものをちゃんと守れる人になりたいよ」

「あなたの大事なものって?」

「えーっと・・・それはまだ考え中なの」


少女は6歳でありながら、非常に高い能力を持っていた。
ブラッドは、ミレイの成長が楽しみでならなかったという。
ロリコン騎士団の明るい将来を夢見て、
ミレイを守るようにして進んでいった。

しかし、騎士団の前に強力な魔物が次々と襲いかかる。
はげしい消耗戦に、フィルシアとユマは途中で脱落。
山間の山小屋で体力の回復に専念することになる。

修道院で育てられたミレイには、特殊な能力があったという。

ミレイには、妖精が見えていたというのだ。

妖精と少女は、春先になると楽しそうに一緒に遊んでいた。

ただ、その少女は妖精の存在を知らず”虫さん”と呼んでいた。

その妖精は、女神アリアに仕える妖精のフィニーだった。

 

「虫さんに伝えて・・・友達でいてくれてありがとうって」


ブラッドの腕の中で、ミレイが血を流し苦しそうに息をしていた。

「・・・マユラ?・・・へへ。・・・ミレイも・・・大事なもの・・・みつけたよ」

魔物からブラッドをかばったミレイは、永遠の眠りについた。

享年6歳。

少女は、最期まで笑っていた。


〈業火の災厄〉ディーが現れたのだ。
ミレイの死により、騎士団は魔物と戦う気力まで失っていた。
もはやここまでだと、騎士団の誰もが悲観していた。
ただひとりを除いては・・・

「ミレイの遺志を無駄にしないで!」

ブラッドは、マユラの声がたしかに聞こえた気がした。
しかしそこには、彼女の姿はなかった。
大きな白きドラゴンは、自らの体に炎を噴きつけると、
火の玉のようになって業火のディーにぶつかってゆく。


ディーは大きな悲鳴を上げると、よろよろと飛び去っていった。
焼け焦げた白きドラゴンは、空中で灰になる。
その灰は雪に乗り、黒く染まってブラッドたちの頭に積もった。

マユラの姿は消えていた。

彼女は神竜だった。
その存在はおとぎ話の世界だけかと思ってた。
神竜は”忘れ去られし者”と呼ばれていた。

「・・・もう忘れないさ。マユラのことも。ミレイのことも」


山脈を抜け、王都のあるアクラリンド大陸が見えかけたころ。
女神アリアはブラッドの前に姿を現した。

これはしかるべき結果であると。
予言回避を優先せず、正しい選択をしなかっただけだと。

未来ある幼き神官の少女。
時計塔を守るために永遠の時を過ごしてきた神竜の少女。
彼女たちの尊い犠牲は、
ブラッドの方針を根底から覆すことになった。

ブラッドは女神アリアと決裂することを決意した。
彼は、妖精のフィニーにミレイが死んだ事実を告げた。
「友達でいてくれてありがとう」と言っていた、と。
それだけを言い残し、ブラッドはアリアのもとを去っていった。
自らの”正しさ”を貫く決意を胸に・・・

1032-1036年 ロリコン騎士団の主要メンバー

ブラッド・ボアル(騎士)
シュリカ・リスキス(巫女)

イリレーン・ヴェルヴィア(聖騎士)※騎士団最強の人物
メルロッサ・ベルソルド(魔女)
ティルリッサ・アルローサ(魔女)
フィルマレア・メンフト(神官)
アルヴァラ・ウベラヒル(ヴァルキリー)


ミレイ・シミュオール(神官)
※1036年に戦死。
キーディス山脈強行の際、度重なる魔物の襲撃を受け、その短い生涯を終えた。
後に教会は少女の功績を称え、リーヴェ修道院にミレイの銅像を建立した。
雪が積もる季節になると、どこからともなく小さな光が集まってきたという。
「ミレイが寂しがらないように妖精が遊びに来ている」と噂された。

 

 

 

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アクラル正歴 1036-1049年


~中世アクラル百年史:王都襲撃の予言~
災いは大陸の中心にある都に呼び寄せられる。蝙蝠・黴・悪夢・嘆き・絶望。
災いはその翼を下ろし、餌は簡単に平らげられ、
その巣がなくなると、死の世界はあっという間にやってくる。

ブラッドの悲しみは癒えぬまま、王都ヴァレイにたどり着く。
しかし、そんな傷心に浸っていられる時間すらない。
王都は魔物に食いつくされてしまっていたからだ。

ヴァレイはあちこちで火の手が上がっていた。
平和に慣れ過ぎた民は、魔物に対抗する術は何もなかった。
ロリコン騎士団は休む間もなく、魔物と戦うことになった。
そんな中、魔物を一刀両断する若きサムライと遭遇する。
彼は山間の町フェルミナのスルギ・ウォスマといった。
入国管理局長アルヴィを護衛を務める人物だ。
スルギの圧倒的な剣技により、ヴァレイ防衛戦に勝利。

ブラッドは王都に騎士団本部をおき、新たな拠点とした。
アリアと決別した彼は、たったひとりで予言書を紐解く。
次の予言の年は、1043年。
場所は、山間の町フェルミナにも及ぶと予想できた。
災厄の対処のために、ブラッドたちはフェルミナへ赴いた。
しかし・・・
フェルミナの人々は決められた規則と法に縛られ、
同時に、そこへ逃げ込むことで日々の安寧を得ていた。
故に、未来の予言に危機意識を持たせることは難しかった。


災厄に対抗する協力を得られず苦悩するブラッド。
時を同じくして、女神アリアも自らの使命に苦しんでいた。

予言回避のための〈正しい〉選択を疑うことのなかった女神。
それはブラッドによって否定された。
アリアもまた、フェルシアの民のように規則に縛られていたのだ。
それでも、自分には何ができるのかを考え続ける。
そして、ヴィヴィの助言もあり、女神は答えを見つけ出した。

世界は、そこに住まう人間すべての努力によって存続する。
アリアはひとりで足を運び、人々に協力を要請した。
同じくして、騎士団も決してひるまなかった。
頑なだったフェルミナの民の心を解きほぐし、共に戦った。

1049年予言の年。
王都とフェルミナの災いは、人々の協力もあり回避に成功する。
共に戦ったスルギは、己の役目を全うするため騎士団に入団した。
そして、ブラッドと女神アリアのわだかまりもようやく解けた。
50年かけてようやく見つけた新たな方針に理解を示したのだ。
女神アリアの顔は、とても穏やかだった。

1036-1049年 ロリコン騎士団の主要メンバー

ユマ・ランカン(ニンジャ)
ユマ・サラズラム(ニンジャ)
イリレーン・ヴェルマク(聖騎士)※騎士団最強の人物(歴代2位)

ミルメッサ・クルシャ(魔女)
メルセット・ティー(魔女)
ウェルレア・ヴェルヴィア(神官)
エルヴァル・アチェス(ヴァルキリー)

 

 

 

――――――――――――――――――――
アクラル正歴 1050-1078年


~中世アクラル百年史:呪われる七勇者の予言~
災いの領分は七勇者の地にも及ぶだろう。
暴かれた七勇者は七色の災いを新たにもたらすだろう。
かき回され混ざり合った七色はやがて邪に色付き、世界を塗り潰すだろう。

次なる災厄は1058年。
かつて、偉大なる騎兵隊がその地を治めたというモールモース。
ロリコン騎士団は、とうとう大陸をも越えることになる。
しかし、長年にわたる王都防衛により騎士団は疲弊していた。
隊を支えたユマ・ランカンが体力の衰えにより勇退。
ブラッドは新たな少女を探しに、東の大地へと旅立つ。

魔法都市ウェロー。
ここには魔女を志す者のための学校がある。
優秀かつ若い魔女の獲得を目指して長期遠征に向かった。
そこで、幼女のロッタを出会う。
ロリコン騎士団にあこがれる幼き女の子だった。
世界を災厄から守る美少女たちの噂は、全大陸に広まっていた。

「すぐに大きくなるさ!色気だってちゃんと出るはず、うん!」

ロッタはロリコン騎士団の大いなる魔女ミレッタの孫だった。
ブラッドの脳裏に15年前の悲劇がよぎった。
ミレイを救えなかった後悔はもう二度としたくない、と。
本当は幼女と一緒に過ごしたいという欲望を抑え込み、
ロッタには自分のペースで人生を生きてほしいと願った。

1058年。
幼女の入団を諦めた騎士団は、ようやく船を手に入れる。
モールモースを襲撃した魔物を撃退し、災厄は回避された。


1070年前後、騎士団は隆盛期を迎える。
城塞都市ゼレスでヴァンパイアを追っていた少女と出会う。
ヴァンパイアと化したかつての恋人に引導を与えた彼女は、
罪滅ぼしのために世界を救うために立ち上がる。
1066年、魔剣を携えた聖騎士レイスが入団した。


世界は徐々に蝕まれてゆく。
アクラリンド大陸に疫病が蔓延し始めていた。
山賊団で活躍したフリーも発症した〈黒の霧〉が猛威を振るう。
人々の心も荒んでゆく。
各地で盗賊団やならず者集団が暴れまわるようになってきた。
1072年。
水上都市スクーレで正義感あふれる少女と出会う。
ならず者討伐に協力してくれた神官フィアが入団した。


~中世アクラル百年史:北海の危機の予言~
時を越えた北海に黒き無限の災いが辿り着くだろう。
不透明な波。死者のダンス。それらは光沢のない鱗に吸い込まれていく。

さらに、各地で士官先を探している凄腕の聖騎士を集めた。
成長を重ねた彼女たちは、無敵の騎士団となってゆく。
攻撃・回復・補助を兼ねそろえた聖騎士軍団の活躍により、
各地に出現する魔物は着実に減っていった。
しかし、予言とは関係のないところで世界を蝕む〈黒の霧〉。
ブラッドとアリアは不安を覚えつつ、災厄に立ち向かう。


1078年、予言の年。
〈災の翼〉の一員である、威力の災・ゾルードが動き出す。
同じ眷属のジークとは相いれず、独断でブラッドの前に現れた。
ただ、全盛期を迎えたロリコン騎士団の敵ではなかった。
再度転生したナグゾスサールも楽々と退けた。

予言は回避された。
しかし、〈黒の霧〉の被害はアクラル全土に蔓延し始める。
人々は見えない敵に怯え続け、ただ死を待つだけだった。
それはまるで、あと20年後に訪れる破滅の予言へ向けて、
世界が加速度をつけて転がり落ちていくようだった。

1050-1078年 ロリコン騎士団の主要メンバー

スルギ・ウォスマ(サムライ)
フィア・ファルテル(神官)
レイス・メルヴァイク(聖騎士)

エイレーン・ウェスメリン(聖騎士)※騎士団最強の人物(歴代1位)
リディア・ヴェク(聖騎士)※(歴代3位)
マルネ・コーブス(聖騎士)
ウチャマリ・ウェリングレン(巫女)


ユマ・ランカン(ニンジャ)※1051年退団
ロリコン騎士団のレイラント砦強襲に貢献し、王都防衛戦でも尽力した。
勇退後、デナスの農村に定住。いつもシルの塔を見ていたという。
長寿に恵まれたが、1099年に襲撃した抗体に襲われ、戦死。

 

 

 

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アクラル正歴 1079-1099年


伝染病は破滅の予言を待たずして、人間を無慈悲に殺していく。
ブラッドは災厄との戦いと同時に〈黒の霧〉の正体を追った。

1082年、湾岸都市メゾネア。
魔物を撃退したブラッドは、ひとり泣いている女の子と出会う。

「わたし・・・帰る場所がないんだ。病気持ちの子はいらないって・・・」

両親を〈黒の霧〉で亡くした幼女はマキ・シスシャといった。
たったひとり世界から取り残されてしまったのだ。
そんな女児を、ロリコン騎士団が放っておけるはずもなかった。

マキは女神アリアの連れている妖精を見ることができる子だった。
そう・・・
曇りのない女児の眼差しに、50年近く前の悲劇が脳裏をよぎる。


ミレイのときみたいな悲劇は二度と繰り返したくない。
ブラッドが処遇を決めあぐねていた。
するとマキは、スクーレに連れて行ってくれればいいと言う。
知り合いの伝手があるというのだ。
ロリコン騎士団は護衛を兼ねて、マキを連れていった。

時は流れ、アクリル全土に恐ろしい噂が立ち始めていた。
黒いローブに魔女のような帽子を被った者の噂だ。
その女は墓を荒し、死体を喰らう。
女が訪れた村には〈黒の霧〉が蔓延するという・・・
ブラッドは信じたくなかった。
〈黒の霧〉が広まった頃から、ヴィヴィの姿を見ていなかった。


~中世アクラル百年史:湾岸都市滅亡の予言~
東の岸を凝視していた沈殿物はその傷口から入り込み、次第に大地を壊死させる。
腐った細胞に打ち勝てぬその身体は、
すべての世界を腐らせるのに格好の舞台となろう。
腐食は止むことなく、世界の死まで行進し続けるだろう。

1092年、湾岸都市メゾネアが再度襲撃される。
疫病の影響で、騎士団の入団希望者は大幅に減りつつあった。
来たるべき破滅の予言まで残りわずか。
全盛期に活躍したスルギや聖騎士たちも現役を退いていった。
それでも、数少ない少女たちは未来のために戦い続ける。

そして、ブラッドはマキと再会することになる。
巫女として成長したマキの姿にブラッドは涙を流したという。
10年の月日が流れていた。
マキは、本当はスクーレに知り合いなどいなかった。
闇ギルドで生きながらえていたのだ。
ブラッドは彼女を引き取り、共に戦う誓いを立てた。


1099年。
予言の日まで1年を切ったある日。
リーヴェ修道院の長が〈黒の霧〉に倒れた。
天候の厳しい季節だった。
60年ぶりに修道院を訪れたブラッドが見たものは、
英雄に祭り上げられたミレイの像だった。
雪の中、彼女は永遠に幼く、ブラッドに微笑みかけていた。

出迎えてくれたのは、ミレイにそっくりの女の子だった。
レムと名乗った女児は、ミレイの生まれ変わりと言われていた。
人間の魂は〈ウルの塔〉へ運ばれ循環すると、妖精はいう。
運命とは時に残酷なほどに巡ってしまう。
疫病の特効薬を取りに、レムは雪山を超え王都へ行くという。


同じ過ちを繰り返さないため、ブラッドはレムを護衛した。
今の力ならば、どんな魔物が出ようとレムを守れると思っていた。
しかし、レムの命は”人間”によって危険にさらされてしまう。

猛吹雪の中、レムが行方不明になった。
それは、同行した神官クレオンの仕業だった。
クレオンはネル教の信者で、レムを儀式の生贄にする計画だった。
〈黒の霧〉の特効薬の情報も嘘であったと判明する。
必死にレムを探す騎士団の前に、レムを連れた男が現れる。
〈狂犬〉と恐れられた殺し屋イゴールがレムを背負っていた。

そして、イゴールから〈黒の霧〉の真実を聞くことになる。
この疫病は、奇行を繰り返す宗教団体ネル教の仕業だった。
そのネル教を率いている魔女が〈黒の霧〉をばら撒いている。


騎士団はイゴールを連れて、死都と化したジグーへ向かう。
そこでは、ネル教に惑わされた人々が
集団自殺を決行しようとしていた。

まさか、本当にヴィヴィの仕業なのか?
そこでブラッドが見たものは、あまりにも老いた魔女だった。
無限の災いの眷属〈黒の災〉ニーザが待ち受けていた。
そこへ、独自にニーザを追っていたヴィヴィが現れた。


ヴィヴィとニーザは、かつて同門の魔女であり、友でもあった。
大魔女となり不老不死を手に入れたヴィヴィ。
大魔女になれず人肉を喰らい魔力で生き延びたニーザ。
二人の決着を見届け、ブラッドは王都へ帰還した。
ブラッドはヴィヴィの告白に、ようやく答えを口にした。
それは、男女の仲たがいというより、
もっと広くて深い意味を持った別れであった。
不老不死という同じ境遇にいた二人が決断した異なる選択。
大魔女ヴィヴィのあまりにも長い片思いは終わりを告げた。

破滅の災厄まであと100日。
“闇のしずく”と呼ばれる皆既日食が訪れることになる。

1079-1099年 ロリコン騎士団の主要メンバー

マキ・シスシャ(巫女)
エイレーン・ウェスメリン(聖騎士)※騎士団最強の人物
キリ・ヤイック(ニンジャ)
ヨギ・シー(ニンジャ)
ベルメット・ガルサ(魔女)
アズリット・モリン(魔女)
アルヴィラ・メルウッド(ヴァルキリー)

 

 

 

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アクラル正歴 1099年


多くの友が死んでいった。
あらゆる出来事が、あらゆる命が通り過ぎていった。
限りある生を最後まで生き抜いた者。
魔物と戦い命を絶った者。
「100年先の未来を見据えて戦うことは立派だ」
そんな大層なことじゃない。
英雄になりたいわけでもない。
今を生きる少女たちが”幸せ”であることを願って戦い続けた。
リリーが教えてくれたことだ。
間もなく、破滅の予言の年が訪れる。
100年にも及ぶ戦いに終止符を打つときが来るのだ。


~中世アクラル百年史:滅びの大災厄~
全ての世界。砂褐色の空。鋼色の月。
鳴り止まぬ不協和音。その矛に震える大地。
災いは巡る先に翼を下ろし、黒の根を張るだろう。
滴り落ちた涙。射ぬかれる聖女。世界は絶望に塗り潰されている。
1099年
そして、すべての世界が、死ぬ。

最期の予言の災厄のため、騎士団はベリアス湿地帯へ向かった。
そこに現れたのは、業火の災ディーと嘆きの災ジークだった。
ジークの圧倒的な強さの前に、騎士団は完敗に終わる。

“闇のしずく”が始まってしまった。
太陽は血を流す。血だまりから、ナグゾスサールが転生する。
魔将は禍々しき破滅の槍を大地を貫く。
ナグゾスサールによって開かれた精霊の門の中に、
ディーとジークたちは飛び去って行った。

1099年345日。
精霊の門へ突入したブラッドは、精霊郷へとたどり着いた。
最終決戦の地は、死んだ生物の魂が集まる〈ネルの塔〉。
ナグゾスサールに吸収されたディーとの決着をつける時が来た。
ロリコン騎士団はマキを筆頭に、魔将の撃退に成功する。
災いの崩御により〈ネルの塔〉はその機能を失い崩れ落ちた。

すべての予言は回避された。
しかし、ネルの塔の消失は精霊界の理性を狂わせてしまう。


予言の回避を命令した、大精霊エルゴーフェンが怒り狂う。
回避の正予言に〈ネルの塔〉を壊せと書いてあったのか、と。
塔を守りきれば、人間などいくら死のうが魂は循環する ―
魔物を倒そうが人間が滅びようが、どちらでもよかったのだ。
〈ウルの塔〉さえ守りきれれば ―

エルゴーフェンは、”再組成”を決行する。

生命を無限に喰らい尽くす抗体〈アグレス〉が人間界に放たれた。
ウルの塔が崩れ、歪んだ世界を作り直す。
それが、”再組成”だった。

世界に、貪欲な抗体が放たれた。
人間たちが築き上げた世界は、無残に喰いたいらげられてゆく。
1099年。
そして、すべての世界が、死ぬ。

 


アグレスの猛威に、アクラル全土は壊滅した。
それでも、人間は強かった。
生き残ったわずかな人々は力を合わせ、世界の危機に立ち向かう。

禍々しき破滅の創造主ザイ=アングレアが生まれた。
“再組成”を願って世界を滅ぼそうとするエルゴーフェンは、
強大な死の化身へと姿を変えてしまった。

魔物すら消滅してしまった世界。
ロリコン騎士団は〈アグレス〉を倒し続けていた。
1110年。
世界の均衡は崩れつつあり、次元の境界が曖昧になっていた。


KOS-MOSと名乗る銀髪の美少女が現れる。
謎多き女性は、アグレスを簡単に消滅させる力を持っていた。
ブラッドはこの女性に、なにやら人形を手渡したと記述がある。
この女性については、これ以上のことは不明。
多くの著作物にこの少女と似たような人物が見受けられる。
“邪神”であったとの見解も多い。

1115年。
アグレスの侵攻を食い止め続けたブラッドの前に、
とうとうザイ=アングレアが姿を現した。


異次元に追放する大精霊の攻撃により、少女たちは消えゆく。
激しい消耗戦の末、
ブラッドはついにザイ=アングレアを倒した。

長きにわたり、ブラッドの苦しみの種であり生きる目標だった
災厄の予言はすべて回避された。
今、全員で守り抜いた世界の上で、
生きとし生けるものに、新しい人生が始まろうとしていた。
精霊郷は消えて、この世界に存在した不思議な力はなくなった。
ブラッドは不老不死ではなくなった。
アリアも、女神ではなく普通の人間になったのだった。

誰かが言った。

「あらゆるものは通り過ぎる」

こうして、一つの時代が通り過ぎていった。

中世アクラル百年史考
~11世紀アクラル大陸の奇跡とその功労者~

全ての歴史は、通り過ぎた人々によってつくられたものだ。
この記録を、通り過ぎて行ったすべての少女たちに捧げる。

少女たちよ、永遠に。

 

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アクラル正歴 2003年 

こうして、長い長い戦いを終えたブラッドは、
小さな農村でつつましく暮らしはじめた。
寒さの厳しい季節が近づくと、
彼は毎年リーヴェ修道院に足を運んだ。
ミレイ像の前で涙を流す姿を見かける者が多かったという。

彼は生涯孤独を貫き、妻と子をなすことはなかった。
はじめてミレイと出会ったときの約束を守ったのだ。
そして彼は、マリスベルの地で静かに息を引き取った。
彼は、最期まで笑っていたという。

 

2003年。
『中世アクラル百年史考』が出版される。
著者は、ヴィヴィ・オールイン

しかし、主人公の小児性愛の描写が批判を受ける。
結局、児童ポルノ禁止法のあおりを受け、
『中世アクラル百年史考』は出版禁止となる。

ブラッドの人生は後世に語られることはなく、
人々の記憶から通り過ぎていった。