- 2006年2月26日 01:26
1995年 5月28日 日曜日
虹野さんがマネージャーになって以来
彼女にいいとこ見せようと俺は
はりきって毎日練習にのぞんだ。
走りこみでも常に一番。
筋トレでも常に一番。
俺のがんばりはだんだん先輩の目にもとまるように
なってきた。
先輩「マカオのヤツいつもすごい気合だな。」
合田「ああ。」
でも虹野さんはなかなか俺のことを
気にかけてはくれない。
少し切ないけど彼女に認めてもらえるまでがんばるぞ!!
そうそう、最近毎日好雄に電話している。
恋の相談だ。
俺の恋の相手はもちろん虹野さん。
この前の日曜日なんてまる一日好雄と電話してしまった。
そのおかげで好雄と妙に仲良くなってしまい
最近では好雄に「雄吾」と下の名前で呼ばれるようになった。
好雄に虹野さんのことをいろいろ聞いた。
彼女の誕生日から趣味、電話番号、そしてスリーサイズに
至るまで。
しかし俺はまだ虹野さんとしゃべったことすら
ほとんどないし
いつも自分の頭の中で妄想することや
たまに虹野さんの帰りを付けていくことしかできない。
今度勇気を出して電話してみよう。
今日も練習試合があった。
試合の間俺はグランドの草刈をしていた。
ここまではいつもと同じだった。
しかし、ここからがいつもとは違った。
(よし、いい感じに刈れたぞ。)
自分の草刈の出来に満足していると
先輩が急に俺に声をかけてきた。
「おーい!マカオはいるかー??」
「ここにいますけどどうしたんですか??」
俺は初練習の時におかま声を出して以来
先輩達からはマカオと呼ばれている。
この大勢の新入部員の中から顔を覚えられているのは
いいがマカオはやめてもらいたいものだ。
マカオがあだなではもてない。
「今デッドボールで選手が一人怪我をした。
お前が代わりにバッターボックスに立て!」
「え、えーーー???」
あまりに急だったので俺は大した準備も
できずバッターボックスに立った。
怪我した選手の代わりに俺を選んだのは
合田キャプテンが俺のがんばりを見ていて
俺にチャンスを与えたかったかららしい。
8回の裏ツーアウトランナー2塁。
5−3でこっちが一応2点リードの場面だ。
(どうしよう。。。)
おどおどしている内に
相手ピッチャーのするどい直球が内角高めに
決まった。
「ストラーイク!!」
(はえええええ。。。。)
さすが高校野球。
中学時代とはレベルが違う。
ピッチャーが2球目を投げてきた。
今度もストレートだ。
(ちくしょう、やぶれかぶれだー!!)
カツ!!!
「ファーーーール!!!」
(えっ!!!)
完全に振り遅れたと思ったのに
バットにボールがかすった。
筋トレの成果が出て
スイングのスピードが飛躍的に上がっていたのだ。
(いける!)
3球目、俺は自信を持って振り込んでいった。
ボールが途中で曲がってきた。
フォークだ。
ストレートだと思っていた俺は
明らかにタイミングが合っていなかった。
(くそーーー!)
しかし、日々の走りこみで下半身が
強化されており、
しぶとくボールにくらいつくことができた。
キン!!
会心の当たりとは言えなかったがボールは
ショートの頭を越え外野を転々とした。
「穴吹くんナイスバッティング!!」
虹野さんが初めて俺に声をかけてくれた。
俺は満面の笑みでベースを回った。
結局俺の駄目押しタイムリーツーベースが効き
試合は6−4で勝った。
試合後合田キャプテンに声をかけられた。
合田「ナイスバッティングだった、マカオ。
来月の練習試合にベンチ入りしてもらう。」
「は、はい!」
決して野球盤の話ではない。
ちゃんとした野球の話だ。
プロ野球選手が少しだけ夢ではなくなった
のかもしれない。
今月の穴吹
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