球がない！！

　１９９５年　４月１６日　日曜日
　
　
　今日はいよいよ野球部の初練習日だ。
　前日はたくさん食べた。
　たくさん寝た。
　オナニーも控えた。
　
　「今日が俺の栄光への架け橋だー！！」

　気合入りまくりで学校のグランドに着くと
　そこにはもうすでに真っ白なユニフォームに身を包んだ
　新入部員が50人ほど一列になり並んでいた。
　ただ人数が多いだけじゃない。
　地区大会で活躍した選手や中には全国区の選手もいた。

　（さすが野球名門校。緊張してきたぜ。）

　しばらくするとぞろぞろと先輩部員が現れた。
　そしてその中の見たことのある顔が話しはじめた。

　「朝早くごくろうさま！俺がキャプテンの合田毅だ！
　　よろしく！」
　
　「よろしくおねがいしまーっす！」
　50人ほどいる新入部員が一斉に頭を下げた。

　どうりで見たことあるわけだ。
　合田毅。。。
　今年の春の選抜高校野球大会で３HRを放った
　プロ野球スカウトの注目の的だ！
　今年のドラフトでは数球団が獲得に動くのでは
　ないかとささやかれている。
　
　合田「春は惜しくも準々決勝で敗れてしまったが、
　　　　夏こそは全国制覇を狙っている。
　　　　そのためにも戦力の上積みが必要だ。
　　　　この新入部員の中から新戦力となるような
　　　　選手が出ることを期待している。」

　　　　「はいっ！！！」

　合田「いい返事だ。じゃあ今日はまずお前らの実力を見極めたい。
　　　　一人ずつ、守備とバッテイングをしてもらう。」

　　新入部員がそれぞれ交代で守備位置につき、交代で
　　バッターボックスに入ることになった。
　　俺はライトの守備位置に入った。
　　
　　（フライが飛んできませんように。）

　　俺はフライが取れない。
　　初めてノックを受けた時、ボールを頭で
　　キャッチしてしまい、それ以来恐怖心が
　　頭から離れないのだ。

　　カキーン！

　　「ライトバーック！」

　　願いもむなしくボールはライトに飛んできた。
　　今日道を聞いてきた人を無視したツケが回ってきたのだろうか。

　　「きゃっ！」

　　俺はおかまのような声を出してボールをよけてしまった。
　　新入部員はどっと沸き、先輩達からは大きなため息が漏れた。

　合田「もうお前は守らなくていい！とりあえず打ってみろ！」

くやしい。。。。
　　でも俺は地区大会のホームラン王。
　　バッティングで見返してやるぜ！
　　俺はバッターボックスに入った。
　　ピッチャーは２年生の先輩。
　　きらめき高校の控えピッチャーだ。
　
　　（相手は控えなんだ。余裕だぜ。）

　　ピッチャーがボールを投げ
　　俺はタイミングよくバットを振った。

　　（もらったー！！）
　
　
　
　
　
　
　　
　
　
　
　
　
「きゃっ！！！」

　　俺はまたおかま声を出して
空振りすると同時に地面に倒れこんだ。
　　それと同時にまた周りがどっとわいた。
　　
　　（早い。。。
　　　球が全く見えなかった。。。）

　　

　　今日の練習で俺のポジションが決まった。

　　ポジション：球拾い

　
　　４月は球拾いだけで終わった。

　　今月の穴吹