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拝啓 校門様より水口宅行

category : レトロゲームアイランド 本章 2014年10月27日 

koumonn
ハイリ先輩との約束を終えた翌日、
僕は約束通り水口の自宅へと先輩を案内する為、
待ち合わせ場所の校門前へとやってきた

 

 

 

「えーと、、、先輩は、、と、、」

 

 

 

辺りを軽く見回すと校門から少し離れた場所に人だかりが出来ており、気になった僕は合間に割って入り様子を覗くと、そこには両脇にサングラスと黒のスーツを身に纏った屈強そうな大男二人を携えたハイリ先輩に男女生徒のカップルが占って貰っていた所だった

 

 
「で、どうなの私たち?」

 

「最高だよな?・・・な?」

 

 

 

返事を急かす二人を目の前に、先輩は目を瞑り、串の様な細い棒を数十本手で持ちジャラジャラとしながら何かを占っている様子だった

 

 

 

「出たわ・・」

 

 

途端カッと目を見開いた先輩は、
二人の方を力強い眼差しで見つめ、緊張した様子の二人にこう言い放った

 

「何も・・無いわ」

 

「はい?」

 

 

 

意外な一言に面を食らった様子の男女生徒は二人揃って気の抜けた声を上げた

そんな二人をよそに、先輩は淡々と結果を話し始めた

 

 

「だから何も見えないのよあなた達の未来。
本来男女同士の相性って付いた事による地運の善し悪しや、経過の予想が大小問わず見える筈なんだけどそれすら無いって事ね。」

 

「そっ、そんな!」

 

 

落胆の声を上げる隣の彼女を見て彼氏側の生徒が憤慨したのか、声を荒げ先輩に食ってかかった

 

 

 

「お前いい加減な事言うなよ!」

 

 

 

今にも殴りかかりそうな勢いの男子生徒に対し、ハイリ先輩の横に立っていた大男の一人が無言で男子生徒の首を押し上げて静止した

 

 

「、、、」

 

「うぶぶ゛・・・」

 

「ヒロシ!」

 

 

大男程では無いとは言え、180cm近くはありそうなガタイの良い男子生徒が、まるで赤ん坊の様に片手で軽々と持ち上げられ、その様子に女生徒が心配そうに叫び声を上げると、その場に居合わせたヤジウマの生徒連中も恐れをなして散っていった

 

 

「止めなさい!」

 

 

 

ハイリ先輩の力溢れる一括に大男は男子生徒を掴む手をパッと離し下に落としてやった

 

 

「うう・・・当たるって言うからみてもらったのにロクな結果にならないじゃないか・・・」

 

「もういいよ、ほら行こう・・・」

 

 

 

涙目になり泣き言を言う彼にさしのべられた女生徒の手を振り払うと、男子生徒はぶつぶつ文句を言いながら歩き去って行き女生徒も小走りで後を追っていった

 

 

「あら、コマツくん、来ていたのね」

 

 

 

一連の騒動を終え、ようやく目の前の僕に気付いたハイリ先輩が声をかけてくれると、横に立つ大男二人が僕の事をキッと睨み付けてきて、僕はその圧力に押されつつも挨拶を交わした

 

 

 

「あ、どうもです先輩。」

 

「友人のコマツくんよ、今から所用で彼の友人の家に行くからあなた達は先に帰っていて頂戴」

 

 

 

先輩は黒服の大男二人に凛とした態度でハキハキと事情を話すと、大男の一人が少し困り顔でこう呟いた

 

 

 

「しかし・・・・」

 

 

 

「いいから先に帰宅していなさい、友人との帰り道にまであなた達に付き添われたらたまったもんじゃないわ」

 

「分かりました、お気を付けて」

 

 

 

黒服の人はそういうと道脇に留めてある高級車の方に向かい去って行った

 

 

「あ、あの先輩、あちらのお二人は?」

 

 

 

僕は見た目がただ事ではない彼等二人の素性が気になり、先輩に尋ねてみた

 

 

 

「ん?ああ、私の護衛よ。パパが心配性なもので帰宅時間に合せて派遣するのよ、全く鬱陶しいたらありゃしない」

 

「そ、そうすか・・・」

 

 

 

予想はしていたが何となく僕等一般民とは違う彼女の家庭環境に対し、僕もこれ以上首を突っ込むと痛い思いをしそうなので、それ以上は何も尋ねず、約束通り水口の家へと彼女を案内する事になった

 

 

 

「先輩、さっきの生徒二人は何だったんすか?」

 

 

 

水口の家までの道すがら、無言のまま進むのも悪いので、僕は先程の騒動の二人について聞いてみた

 

 

 

「ああ、あの人達。私が校門前で貴方の事待ってたら男の方がいきなり相性みてくれって言ってきたのよ」

 

「知り合いスか?」

 

 

 

僕がそう尋ねると先輩は少し笑いながら話しを続けた

 

 

 

「全然、何か図々しい奴でね、女の方もベタベタしててムカつくから占うフリして適当な事言ってやったのよ」

 

 

 

満面の笑みで毒を履く先輩の姿は無邪気さも相まって一層恐ろしく感じ、
僕は少し引き気味になりつつも愛想笑いをして空気を和ませながら先輩に対し話しを合せてみた

 
「うわ、、、キツイですねー、結構ショックだったんじゃないでしょうか?」

 

 

 

僕の言葉を聞くと先輩は少々真面目な顔になり僕の目を見てこう問いかけてきた

 

 

「コマツくん、貴方、本当に運命の人と出会えたとして、他人から「アンタ達、相性良くないわよ」って言われただけで疑問に思ったりする?」

 

「え?」

 

 

 

先輩の禅問答の様な唐突にして深い問いかけに、思わず言葉に詰まった僕は何も言えなくなり、思わず声を上げてしまった。そんな僕の様子をよそに先輩は話しを続けてくれた

 

 
「世の中の男女なんて、みんな私達だけは特別だって自惚れてんのよ、その癖、自分達に自信が無いから適当な裏付けが欲しくて、占いに頼ったりしたがるのよね」

 

「はぁ・・・」

 

 

 

もっともな先輩のその言葉に、僕は気押しされつつも話しに聞き入っていた

 

 

 

「そんな私利私欲な理由で別れ話考える様なカップルならそれまでだし、元々好き合っているなら占いなんて遊び以上に考えたりしないデショ」

 

「成る程」

 

 

 

納得する僕に、先輩は少し悪い顔でこう言った

 

 

 

「だから何かね、相性バッチリな二人なのに、相性見えないって言ってやったらどうなるか気になってそう言ってみたのよ」

 

 

 

思わぬ一言に僕は困惑の表情で先輩に尋ねてみた

 

 

 

「え、あの人達相性良いんすか!?」

 

「ええ、多分私が今までみた中では最高、もしかしたら運命の相手かもね」

 

「だって先輩何も見えないって、いつみたんすか?」

 

 

 

僕が驚きながらそう聞くと先輩は軽くため息をついてこう言ってきた

 

 

 

「恋愛運とか相性運なんて当事者の手相一瞬でもみれば大筋の流れは分かるのよ。
で、始めに二人の手を見て良かったんだけど、何か鬱陶しいからそう言って帰ってもらった訳」

 

 

 

悪びれる様子もなく話しを続ける彼女に対し、少し引け目を感じながらも話しを続けてみた

 

 

 

「いや、でもそうしたら相性良いからって言って適当に済ませておけばいいのでは・・・」

 

「良いなんて言ったら、しつこく聞かれまくるでしょ。私、学校の遊びでその手の相談もう飽き飽きしてるのよ。今日は貴方からの依頼もあったし早く済ませたかったの」

 

「す、すいません・・・」

 
言われてみれば先輩はこちらの無理なお願いを快諾して、面倒な水口の世迷い言に付き添ってくれたのだから、それに関してこれ以上突っ込んだ話しをする権利も無いと感じた僕はそのまま水口の家まで彼女をエスコートした
そして歩く事10分程、僕とハイリ先輩は水口の住むアパートの前にやってきた。

 

 

 

「えーと、ここだっけな?」

 

 
僕は水口から渡された手書きの地図で自宅の位置を確認すると横に立つハイリ先輩がボソりと呟いた

 

 

 

「キテるわね」

 

「はいっ?」

 

 

 

その一言に思わずビクっと反応すると、ハイリ先輩は両親指と人差し指でワッカを作りそこを覗く様にして僕に説明を続けた

 

 

 

「元来、この様な古い建物には霊が棲み着きやすいのよ。加えてここは風水的に見ても立地条件がサイアクネ。」

 

 

 

言われてみると目の前に建つ二階建ての木造アパートは老朽化がかなり進み、建付けのあちこちの板が剥がれかかっている。普通に見てもどことなく不気味さの残る印象で霊が棲み着いていてもおかしく無い。

僕は先輩の説明の事もあり少々腰が引けた状態で二階にある奴の部屋の前に立つと
インターホンを一度押して自宅で待っているという奴を呼び出した

 

 

 

「おーい、水口、先輩連れてきたぞー、ここ開けてくれー」

 

「あ、はーい、ちょっと待っててくれ!」

 

 

 

インターホン越しに聞こえるドタバタという忙しない生活音の余韻も残さぬ内にドアの鍵が開く音がして水口は我々の前に姿を表した

 

 

 

「いや、どうも!今日はありがとうございます!」

 

「・・・」

 

 

 

出てきた奴の姿は何故かリーゼントで髪を七三にビッチリと決め、全身白のタキシード姿に蝶ネクタイという、さながらパーティー帰りのピーウィー・ハーマンといった感じの訳の分からない姿だった

当の水口はその場違いな容姿も自慢気にして真っ直ぐとこちらを見つめ、我々を自宅に手招いてきており、僕は隣で奴の格好に対して同じく唖然としているハイリ先輩に一言挨拶をしてから奴に注意する為、先に家に上がり話しをつける事にした

 

 

 

「先輩、すいませんちょっと先に上がるんで待っててもらえますか?」

 

「ええ」

 

 

 

僕はそういって玄関に押しかけると早速奴の襟元を握りしめながら奴に優しく挨拶をした

 

 

 

 

「お前なんだよそのフザけた格好は・・・」

 

「いや、お前ほら、霊媒師の人とかよく白い衣装着てんだろ、だから俺もなんかそれっぽいの着ようかと思って・・・」

 

 

 

奴はいたって真面目な様子で襟元のネクタイをパチンパチンと伸び縮みさせ、これみよがしに僕に見せつけてきた

 

 

 

「なんでタキシード着てんだよ!」

 

「この前親戚のおっちゃんのパーティー出た時のがあったんだよ、正装っぽいのこれしか無いし」

 

 

 

水口は僕の注意もよそに、相変わらず髪をワサワサと手グシで整えながら蝶ネクタイの位置を確認して身なりを整えていた

 

 

 

「全身白ならまだしもなんで赤の蝶ネクタイまで着けてんだ」

 

「ほらお前、女性を部屋に上げる訳だし、マナーだよ」

 

 

 

力強い眼差しでそう言う奴を見て、彼なりのマナーを心得てる事は理解したが、その心構えが明らかに間違った方向に向いてると察した僕は指を部屋の奥に向け、場違いなその格好を着替える様、奴に強く指摘した
「説得して来てもらった俺の立場を考えるモラルがあんならさっさとその服着替えてこい!」

 

「えー!?」
自慢の格好を否定された水口は悲壮感漂う表情で僕の指示を本気で嫌がってみせた

 

 

 

「いいからほら!」

 

 

 

露骨に嫌がる水口に対し少々強めの剣幕でけしかけると、奴は服を着替えに渋々奥へと引っ込んだ。

その様子を確認した僕は玄関を出て表で待つハイリ先輩に挨拶をした

 

 

 

「どーもすいません先輩」

 

「彼パーティー帰りかしら?」

 

 

 

きょとんとした表情でもっともらしい事を言うハイリ先輩の問いかけに、僕は愛想笑い風の含み笑いをしながら適当に相槌を合せて流した

 

 

 

「えー、まあ、なんか帰宅した直後だったみたいですね」

 

「そう、」

 

 

 

水口のふざけたサプライズ演出のお陰で5分程無駄な時間が過ぎると、ようやくマトモな服に着替えた水口が玄関前で待つ我々の前に姿を表し、自宅内へと招き入れた

室内に入ると、細い廊下がありその先のドアを開けると水口の部屋が見えた

 
「うわぁ・・・・」

 

 

僕とハイリ先輩は奴の部屋を見て思わずため息の様な一言を漏らした。

中は8畳程のワンルームなのだが、部屋の壁のあらゆる所にアニメやゲーム等、様々なポスターが貼りめぐらされたその様子はさながらパッチワークアートの様で、外光を通さない室内は真っ昼間なのに薄暗く、また、部屋の四隅に配置されたショーケースに大小様々な種類のフィギアやプラモデル等が雑多に並ぶ光景は異様そのものである。

 

 

 

「ようこそ我が家へ」

 

 
これでもかという程の笑顔で一般人には理解し難い我が家を自慢気に誇る奴の態度は
ふてぶてしくもあるが、それ以前に部屋を埋め尽くさんばかりの趣味道具の数々に圧倒された僕は呆れた具合にこう呟いた

 

 

 

「お前凄いなこれー・・・」

 

 
そんな僕の横でハイリ先輩は表でアパート全体を見た時の様に両親指と人差し指を合せ輪っかを作り、その中をのぞき込む様にして部屋全体の様子をグルっと見回すと、カバンの中からいくつかの探索道具の様な物を取り出し探索を始めだした

その様子を不思議がった水口が僕の横にきて小声で僕に尋ねてくる

 

 

 

「おいっ・・・コマツっあれどーしてんだ・・・?」

 

「ああ、なんかあれやると建物の空気とか流れとかそんなんが分かるんだってよ」

 

「ほー、そいつは凄い」

 

 

 

感心する水口と僕の姿をよそに、先輩はそうやって5分程水口の部屋の様子を見て回った後、僕等の方に振り返り言い放った

 

 

 

「居るわね」

 

「えっ!?」

 

 

 

あまりに断定的な唐突な一言に面を食らった僕と水口は思わず声を合せて驚きの声を上げた

 

 

 

「マジっすか!?」

 

「ちょっとまだ全ては見きれてる訳じゃ無いんだけど、外でも伝えた通りここ元々風水的に見ても最悪なのよ」

 

 

 

我々が真剣な表情で話しを聞いていると先輩はテンポ良く説明を続けてくれた

 

 

 

「加えてこの室内ね、元々空気の流れが悪いだけでも問題なのに、部屋にポスター貼りめぐらしているせいで気の流れが最悪なの」

 

「気?」

 

「気功って聞いた事あるでしょう?生物の源を司る重要なエネルギーで自然の空気や光からも取り込まれるものなんだけど、要はその流れが極端に悪くなっているって事」

 

「一体どうすれば・・・」

 

 

 

下を向き落ち込んだ様子でシリアスな面持ちで一言をもらした水口にハイリ先輩は説明を続けてくれた

 

 

 

「とりあえず部屋の明かりを全て落としてくれるかしら、霊体って基本的には明るい場所だと掌握し難いしハキリとした位置も掴めないのよ」

 

「ガッテンです!」

 

 

 

水口はガッツポーズを取ってそういうと、室内の灯りを全て落とした。まだ日のある時間なのだが、部屋中に貼られたポスターのせいで室内は遮光され、まるで真夜中の様な暗さの中、少し経つと室内に軽妙なBGMと共にカラフルな光が降り注いだ

 

 

 

「何事!?」

 

「ラップ現象か!?」

 

 

 

僕と先輩がその様子に驚いていると水口は僕の横で独特のステップを踏んで曲を聞き入っていた

 

 

 

「おい、水口なんだこれは?」

 

「あ、これ?通販で買ったミラーボール。室内の灯り関知して自動的に動作して内蔵スピーカーから音が出るんだよ」

 

 

 

 

「・・・」

 

「ちなみに曲は内蔵のテープを変更すれば好きなものに変更出来るんだけど今かかってるのは特撮物の・・・」

 

 

 

 

 

ミラーボールが照らす七色の明かりの中、奴を見る冷たい視線に本人が気付いて無さそうなので僕は冷静に話しを続けた

 

 

 

「おい、水口、一度電気つけ直してくれるか」

 

 

 

聞くや否や水口は部屋の明かりをつけ、室内に明りが灯るとハイリ先輩が重い口を開いた

 

 

 

「あんた除霊する気あるの?」

 

「勿論です!」

 

 

 

勢いよく飛び出したその返事に情けないやら腹が立つやらで僕は奴の襟元を両手で掴み、ギリギリと締め上げながら静かに呟いた

 

 

 

「おい、マジメにヤレ」

 

「止めてくれ壊れてしまう!」

 

 

 

5秒程その状態で奴の態度を悔い改めさせた僕は室内に設置されているミラーボールを排除させ、改めて室内の霊探しが始められた。

暗闇の中ハイリ先輩はたまにペンライトの様なものを部屋の隅に当てたり、光の先にパイプで煙を吹き付けたり独特な方法で霊の探索に当たっていた。水口も流石に反省したのか静かな様子で探索が終わるのを黙って待っていた。

そして10分程度経過した後、ハイリ先輩から「もういいわ」という声がかかり、水口は部屋の電気をつけた

 

 

 

「うーん・・・」

 

「どうしたんすか先輩?」

 

 

 

何か思い悩む様な表情でうなり声をあげるハイリ先輩。僕が気になり理由を問いただすと先輩は話しを続けた

 

 

 

「居る場所が分かったワ。今この部屋に居る。というか棲み着いてるの」

 

 

「何てこった・・・」

 

 

 

若干芝居がかった様子で静かに驚く水口をよそにハイリ先輩は物だらけで足場の取りにくい一室の中をテクテクと歩き、
部屋の隅に配置されたタンスの前に立ち、それを指し示した

 

 

 

「アナタ、これって私物?」

 

「あ、それすカ。いや、俺ん家にあるけど自分のじゃないんすよ。アパートの備え付けみたいなもんらしくて、別に邪魔になるもんでもないし置いてあるだけで」

 

「ヤッパリね・・・」

 

「どうしたんすか?」

 

 

 

ハイリ先輩は合点がいったという様子で僕等に事のあらましを話してくれた

 

 

 

「この家の怪奇現象の元となってる幽霊サンね。今この中に篭もってるの」

 

「えっ!?」

 

 

 

僕と水口は揃って驚きの声を上げた。そりゃそうだ、何せ対処に困っていた当の原因が目の前のタンスにあるというのだから

 

 

 

「で、不思議な事に地縛霊って、棲み着くと言っても憑いた家の中は自由に行き来したり、するんだけどライトでちょっかい出したり音で威嚇しても出たがらないのよね」

 

「ふてぇ野郎だ!姉さんやっちまいやしょう!」

 

 

 

いきり立った様子で相変わらず一人テンションが妙な水口を放置して、僕はハイリ先輩にその霊の事を聞いてみた

 

 

 

「で、その幽霊ってどういう奴か分かったんですか?」

 

「ええ、女の子よ・・。」
「えっ!?」
その言葉を聞いた途端水口の顔色か一瞬パッと華やいだのを僕は見逃さなかった

 

 

 

「どうしましょーか?簡単な祓いをした後、そのタンスごと焚き上げて処分してしまえば、もうこの部屋にも戻る事は無いし霊も成仏出来ると思うのだけど」

 

 

 

ハイリ先輩が親切に除霊の提案をしていると、水口は腕を組み何やら難しそうな顔をして考え込んでいた

 

 

 

「うーん・・・・・・・・・・ すいません、先輩、様子を見るという事で今日は帰ってもらえないでしょうか・・・」

 

「えっ!?」

 

 

 

先輩の優しさを打ち砕く水口の不遜な一言に僕は先輩と声を上げて驚くと共に無意識に水口の胸ぐらを掴んでこう言った

 

 

 

「オイ、フザケルナヨ オマエ」
ギリギリ締め上げられた水口はたまらず呟く

 

 

「ぐぇっ・・・止めてくれ、助・・けてポパイ」

 

 

 

5秒程その状態が続いた後、見かねたハイリ先輩がさり気なく間に割って入り、話しは続けられた

 

 

 

「ゲホッゲホッ!お前なんて事すんだよっ、本当に苦しかったぞ」
「誰の為に時間割いてきてやったと思ってんだよ!ちゃんと俺と先輩に説明しろ!」

 

 

 

すると水口はハイリ先輩がここに取り憑いていると指摘したタンスの前に立ち、それを指差して先輩に語りかけた

 

 

 

「先輩の話によると俺の部屋でキャリーしてる悪戯の張本人がここに棲み着いてるって訳ですよね?」

 

「キャリー?」

 

 

 

水口のマニアックな例えにハイリ先輩が頭からハテナマークを放りだしていたので、すかさず僕はフォローに入った

 

 

 

「お前面倒くさい例えすんなよ、あ、先輩、映画のタイトルっす、女の子が超能力でポルターガイスト起こして学校ずたボロにするっていう」

 

「ああ、アレ、少し観た事あるわ、いい例えね。そうよ、それで?」

 

「今すぐにでも先輩に祓って頂きたいんですが、あいにくここ賃貸物件でして、備え付けの物処分するのって面倒くさい手続きが必要なんすよ。で、処分する理由付けるにしても僕が「幽霊が憑いてるから」なんていっても病院に通報されるのがオチなんで、処分する理由も別に考えたい訳でして・・・」

 

 

「事情は分かったワ、それであたしにどうしてほしいの」

 

「重ね重ね面倒かけて申し訳ないんですが、もし良ければ大家に手続きお願いしてこのタンス処分できる日取りが決まったら、またコマツと一緒に自宅へ来て頂けませんかね」

 

 

 

相も変わらず身勝手な事ばかり言う水口に僕がイライラしてると先輩は軽いノリで応じてみせた

 

 

 

「私は構わないけど、コマツ君はどうかしらね?」

 

「あ、はい、まあ僕は先輩さえ良いんでしたらお任せします」

 

「ですって、で、いつ来ればいいの?」
「恩に着ます!大体2週間後の同じ日には手続き済ませてコマツもわりーなっ頼むよ」

 

「めんどうくせーなー・・・」

 

 

 

仏の様に大らかなハイリ先輩の粋なはからいに免じて渋々承諾した僕は部屋をぐるりと見渡すと一つ気になるポスターが目に入った。

アニオタらしく部屋中に貼りめぐらされた数々の漫画・アニメと所々映画らしきポスターも貼ってあるのだが、その中で部屋の脇にポツンと貼られてあるロゴや背景等のない無地の黒に長い髪の青年が不気味な笑みを浮かべてこっちをじっと見つめているポスターというよりは何かの肖像画の様な写真、水口の家族か何かの写真だろうか?

と、僕は目に入ったそれが何となく気になったがもう時間も遅く奴に問いただすのも面倒くさかったのでその日は黙って帰る事にした。

 

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