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あなたとコンビニ

category : レトロゲームアイランド 本章 2014年9月9日 

 

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放課後、僕は水口の話を聞く為、奴の働き口である駅前近くのコンビニ前へと連れだってきた。

 

 

「おい、コマツこっちこっち」

 

奴に誘われるがままに店の裏口へと回りスタッフルームに入ると、中は広さ10畳程の部屋で、長テーブルの側にパイプ椅子が四つ置かれ、部屋の奥には店員用と思われるロッカーが整然と並んでいた。

 

 

「いやー、悪いな付合わせて、ここなんだけどその辺に座って待っててくんね、俺一応店の人に挨拶してくるから。 あ、それとこれ俺の奢りで飲んでいいから」

 

 

水口はそういうと店の物と思われる缶ジュースを僕に手渡し、小走り気味で店内へと走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

水口の居ない間、時間を持てあました僕はスタッフルームを軽く散策してみたが、これといって特に何も無いので、奴が居ないのをいい事に悪戯心で水口のネームプレートの入ったロッカーの中を覗いてみると何故か引き戸の裏にPCのエロゲーと思わしき裸の女のアニメポスターがデカデカと張られていた

 

 

「うわぁ・・・」

 

 

 

途端、激しくテンションの下がった僕はロッカーを投げつける様に閉め、そのまま大人しく元の席に変って5分程待っていると両手に店の商品であろうジュースと肉まんを持って奴が戻ってきた

 

 

「いやー、わりーわりー、待たせたな。これ、俺からの差し入れ」

 

 

水口はそういうとテーブルに袋入りの肉まんを2つ置き、僕と向かい合う形で席に座った

 

 

「あっそうだ!」

 

 

そういうと、水口は何か思い出した様に手を叩き、僕に手招きをして奴のロッカーの前へと誘い出した

 

 

「・・・・・」

 

「ヒッヒッヒッ・・いいか、ちょっと見てくれよ」

 

 

水口はいやらしく笑みを浮かべると、自分のロッカーを開け、先程既に僕が目にしたエロゲーのポスターを見せつけてきた

 

 

「ジャーン!」

 

「・・・」

 

 

いまいちリアクションの薄い僕を気にして水口が問いかける

 

 

「なんだおいテンション低いな?」

 

「いや、さっきもう見たし・・・」

 

「酷いな君!」

 

「つーか、これなんだよ」

 

「いやー、バイトの女とか近くに居る時これ全開にしてみると反応がたまらないんだよ!恥ずかしがったり、ちょっと怒ったり、軽蔑の眼差しで見てきたり!」

 

「・・・」

 

 

 

「分かるよな?」

 

「いや、分からんな」

 

 

 

 

 

 

 

変らず続く奴との無駄な応酬に僕もいい加減嫌気がさしてきたのかその返答の後、5秒程奴を軽蔑の眼差しで見つめ、奴と僕との間に何とも言えない微妙な空気が流れた後、水口は静かに頷いて元の位置に座りようやく話しが始まった

 

 

「今日、お前に視聴覚室で話しかけた事は他でも無いんだけど」

 

 

今度はさっきとは打って変わり真面目な口調で僕の目を真っ直ぐに見て話しかけてきた水口。僕もその雰囲気を察し、彼の話を真面目に聞く体制を整えると奴は話しを続けた

 

 

「で、話しの前に、お前に一つだけ確認をしておきたい事があるんだ」

 

「なんだよ?」

 

 

 

僕が確認すると奴は一つ息を吐いて真摯的な表情でこう呟いた

 

 

 

 

「コマツ、お前幽霊って信じるか?」

 

「おい水口、帰っていいか?」

 

 

 

 

奴の話を真面目に聞き入っていた事に心底後悔した僕は、返事を待つ前に、カバンに手をかけ帰り支度を調えると、水口は慌てて話しを続けた

 

 

「いやいやいやいやっ ちょっと待ってくれって!これマジでマジだっていう話しでサ!」

 

「お前いい加減にしろよ!学校でグループ割り込んできたから何事かと思ってきてやったら!」

 

「いや、だからさ、話しは最後まで聞いてくれって・・・!」

 

 

帰ろうとした僕の腕を掴んできた水口が割と本気で困っている様子だったので僕は深呼吸を一つして呆れながらも奴の話を聞いてやる事にした

 

 

「で、なんだよ?それで俺の返答が今回のお前に関係あるってのか?」
水口は少し複雑そうな顔で考え込んで話した

 

 

「いやぁ~・・・俺もこの歳になって人様にこんな話しするのも恥ずかしいかとも思うんだけど」

 

 

「なんだよ?話しにならないからとりあえず続けてくれよ」

 

 

僕が返答を急かすと今度は少々重い表情で奴は口を動かした

 

 

 

「出るんだよ、俺んとこ・・・」

 

「出るって何が?」

 

「いや、だからサ、その幽霊が・・・」

 

 

 

いつもだったらこの辺で水口の首筋に天空×字拳を一発お見舞いして寝てる所にツバを吐いて帰る所だが、今回の奴の執拗な対応に僕も友人として様子が気になり、もう少し詳しく状況を聞いてみる事にしてみた

 

 

「マジかよ、つーかお前確か独り暮らしだったよな」

 

「そうそう、だから余計に何ツーか心細いって言うか不気味で不安でよー」

 

「具体的にはどんな事が起きてるんだよ?」
「とりあえずあのよくテレビとかでもよくあるラップ音っていうの?深夜急に天井からパーン!て、でかい音がしたり・・・」

 

「それお前近所の人がなんかやってんじゃねーの?」

 

「いや、俺ん所、今両隣二つとも空き部屋で、上の階は人入ってねーはずなんだよ」

 

 

事細かに状況を話す水口の目は真剣そのもので僕のチャチャ等入れよう隙も無い感じだった。奴は話しに聞き入る僕に対しそのまま今自宅で起きてる現象について話しを続けた

 

 

「後はなんか急に風呂場の蛇口が全開になったり、それとテレビの電源が点いたり消えたり、誰もいねーはずの天井から足音したり深夜に無言電話続いたり、ここん所特に酷くてさー・・・」

 

 

にわかには信じがたい話しだが、かなり本気で困ってる水口の話を聞いた僕は彼に今回の相談の核について尋ねる事にしてみた

 

 

「まあ、お前の相談が悪ふざけじゃないって事は分かったけどよ、俺にどうしろっての?霊能力もねーし、こんなんやってるんだったらマスコミにネタ売って宜保愛子でも呼んだ方が話しは早いぜ」

 

「あのお前さ、確か霊媒師の知り合い居たよな」

 

 

 

 

奴が言う霊媒師というのは恐らく1学年上の白美鈴(パクメイリン)の事である。

 

父が中国人、母が日本人のハーフらしく、父親は中国の高名な易者だそうで、中学卒業まで向こうの女学校で過ごした後、日本人である母方の希望で母国に戻り本校に入学したらしい。

 

以前、帰宅途中に彼女が落としたポーチを偶然拾った僕が、中に入っていた生徒手帳を頼りに彼女の自宅に届けた際、同梱してあった物の中に大変な貴重品があったらしく、大仰とも思える感謝をされ無理矢理運勢を占ってもらって以来の合縁奇縁である。

 

学年が違う事もあり校内では殆ど顔を合わせる事も無いのだが、彼女の家が僕の自宅と近いせいか帰宅途中にバッタリでくわす事も多く遠からず近からずの関係が続いてるという具合である。

 

ちなみに、ハーフの女学生という事で一聴して甘い夢が広がるが、実際の彼女の風体はボリュームのあるお団子頭に、異様に切れ長の細目、そして占い道具として使用するらしくアルプスの天然水のミニペットを常備しており、僕は彼女の顔つきが女優の片桐はいりに瓜二つなので、彼女が居ない場所では基本的にアルプスの聖女ハイリ(略称ハイリ)と呼んでいる。まあ、要するに不美人という事である。

 

 

 

 

 

 

 

「あー、ハイリ先輩な、でもお前さして面識もないだろ、俺にどうしろってんだよ」

 

「いや、だからさ、そこを一つ頼むよお前が仲介に入って!友人の危機だと思ってサ」

 

 

手を合わせて願い倒された手前、無下に断るのにも気が引けた僕は、腕を組み奴の依頼を受けるか少し考えてみた

 

 

「う~ん・・・」
「あっそうだ!この前買ったOVAお前にやるよ!だからなっ」

 

「だからそれはいいっつってんたろ!俺そこまで熱心なアニオタじゃねーんだよ」

 

「それじゃあさ、今度の中間テストの問題と解答にヤマはったシートお前にやるよ、これでどーだ?」

 

 

僕は奴の誘いに大きく食指をそそられた、こいつは普段からこんなんで別談、ガリ勉という訳でも無さそうなのに全科目通して異様に成績が良く、点数発表の際にも学年通して毎回5位以内にはかかさず入る程の秀才だからだ。そんなこいつの作成したシートなのだからさぞかし信頼がおけるのだろう。

 

 

「乗った!」

 

「よしっ!そんじゃさ、まず先に先輩と交渉してきてくれよ」

 

「えー?」

 

「いや、お前を疑う訳じゃ無いんだけど、一応、来てくれるっていう確証が欲しい訳よ。現在進行形で霊に脅かされる身のこちらとしては」

 

 

 

まあ、奴の言い分にも一理あるので、僕は一先ず水口と軽い握手を交わし翌日校内でハイリ先輩にこの事をお願いする事にした。

 

 

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