日本のゲームミュージックシーンを底から切り裂くRedbull企画 Diggin’ In The Carts が素晴らしい

トレイラー

いったい、あの音楽は、誰がどんな風に作ったのか?

Episode 1: テレビゲームミュージックの到来

主な出演者:小沢純子、田中宏和、Havoc(Mobb Deep)、J-Rocc、Thundercat、Kode9

Episode 2: 次元を越えた8ビットの世界

主な出演者:影山雅司、Fatima Al Qadiri、Anamanaguchi、Oh No、Flying Lotus

Episode 3: 新時代の夜明け

主な出演者:松尾早人、崎元仁、下村陽子、松前真奈美、Thudercat、Dizzee Rascal、Flying Lotus、D Double E

Episode 4: クール・キッズ

主な出演者:古代祐三、川口博史、光吉猛修、Just Blaze、Ikonika、Joker、J-Rocc、Flying Lo-tus、Thundercat、Ladyhawke

Episode 5: ロールプレイが叶えた夢

主な出演者:植松伸夫、Arnie Roth、Thomas Bocker、Groundislava、Fatima Al Qadiri、Flying Lotus、Oh No

Episode 6: 終わりが告げた始まり

主な出演者: 山根ミチル、小島秀夫、Teruta、Ludvig Forsell、原田勝弘、柿埜嘉奈子、高柳佳恵、佐野信義、岡部啓一、遠山明孝、三宅優、濱本理央、井上拓

【番外編】Hidden Levels – Fatima Al Qadiriが語る「悪魔城ドラキュラ」

【番外編】Hidden Levels - 下村陽子と松前真奈美が語る当時

【番外編】Hidden Levels - KODE9が語る8ビット・ミュージック

画像出典 : Red Bull

Redbullは少し前からこういう前衛的なクリエイター協賛系の企画をやっているらしいのですが、とにかくその内容が素晴らしい。

これまで、映像メディアでのゲームミュージック特集というと、大抵が、ゲームのプレイ映像に合わせてそのゲームを特にプレイした事も無いナレーターや自称ゲーム好きタレントが2~3度プレイした想い出を語るという、非常に狭い範囲での想い出語りに留まるものが多かったのですが、本作では今までそういったダメ企画に押し出されて中々日の目を浴びる事の無かった、ゲーム業界の超一流トラックメーカー、コンポーザー(この場合は自ら公にせずこうした企画を待機していたとも考えられる)の方々が、80~00年代における、CDメディア以前の内臓音源によるゲームミュージックの成り立ちや、当時の制作環境について、ウソ偽りなく、当時を振り返りながらこれからのゲームミュージックの展望も合わせて真摯に受け答えしています。

本企画に名を連ねる面々の一部紹介

・山根ミチル
代表作
・悪魔城ドラキュラシリーズ
・幻想水滸伝シリーズ
他多数

古代祐三
本人SoundCloud有
代表作
・ベアナックルシリーズ
・カルドセプトシリーズ
・ソニック・ザ・ヘッジホッグ
他、SEGA作品、X68000作品等多数

光吉猛修
代表作(Voとして)
・ソニックシリーズ
・デイトナUSAシリーズ
・セガラリーシリーズ
・バーニングレンジャー
。レンタヒーローNo.1


植松伸夫

代表作
・ファイナルファンタジーシリーズ
・クロノトリガー
・ブルードラゴン
他、スクウェア作品を中心に多数

田中宏和
本人SoundCloud有
代表作
・ドンキーコングシリーズ
・バルーンファイト
・MOTHER2
他、任天堂黎明期作品を中心に多数

下村陽子
代表作
・ストリートファイター2
・ライブ・ア・ライブ
・キングダムハーツシリーズ
他、多数

と、そうそうたる顔ぶれ。

紹介した他にも海外のアーティストによるFM音源解説、ファミ通出身のゲームコラムニストローリング内沢氏によるナレーション、出演とコアな人選で、「ゲーム音源を媒体とした単調なアルペジオ~ミニマル構成~オーケストラ編成~POPカルチャー~シンフォニックサウンズへの飛躍、展開」等について、深く分かりやすく解説してくれています。

他、本企画で素晴らしい点はゲームミュージック、及びゲームについて、フライング・ロータス、レディホーク等、欧米区域の著名なミュージシャンによるインタビュー等を挟む事で、ゲームミュージックに対して「専門職だけの狭い視野のカテゴリ」という印象を払拭している点。

ゲーム音楽はコンピューターミュージックとしてはそろそろ半世紀経とうとしている事もあり、それなりの文化的背景も仕上がってきているのですが、テクノミュージック等と同様、その造詣の深さ故、敷居の段差が生まれてしまいがちなのですが、発言に一定の影響力がある著名人によってキャッチーな解説をするなーという印象です。この辺りは、脚本構成した人物に改めて感服。

また、そういったポップカルチャーの前線で活躍するミュージシャンの他にも、バンドやDJ等から転身して実際にゲーム業界に身を投じたコンポーザーの方の制作までの流れや思想等、ゲーム音楽というものが限られた制約の中でどういった技術、工夫で発展してきたのかが分かるのも素晴らしい。

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エピソード3より元レベッカのメンバー土橋安騎夫による、担当作品ラグランジュポイントのインタビュー

この辺は限られたゲームマニア、もしくはアーティストにしか理解できない領域だと思うのですが、エピソード3ではシティコネクション株式会社、吉川延宏から「特色を出す為にファミコンの音源で色々なジャンルの音楽に挑戦した」という、サンソフトミュージックについての言及があります。

例えばスーパーマリオがサンバ調、ロックマンが文字通りのロック等、ドラクエがオーケストラサウンズから展開したクラシックミニマル等、限られた音源の中で様々な特性を試みた作品があります。ファミコン等はカセットの仕組みを利用して、ソフトの中に特殊なチップ等を搭載し、ファミコン単体では鳴る筈も無い音を表現したりもしてます。その辺についてはエピソード2、KONAMIと拡張音源で詳しく語られています。


参考動画

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エピソード3よりギミック制作者 影山雅司インタビューの一コマ。

「本当に、子供のゲーム体験がゲームミュージックから入ってしまう事ってあるとおもうんですよね。難しい場面がきたら何回もそこを一緒に音楽が流れる訳です。で、もう耳障りな音楽だったらゲームが嫌になっちゃう。だから、それだったらなるべく良質な音楽で色んな音楽を聴いてもらいたい」

本当に素晴らしいインタビュー構成の数々で、どれも甲乙つけ難いのですが、特にお薦めな回は僕がゲームコンポーザーとして一番尊敬している古代祐三氏の出演されてる Episode 4: クール・キッズ

以前こちらでも少し取り上げたFM音源について興味を持つキッカケになったFMサウンズのスペシャリストです。

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Episode 4: クール・キッズより、自身の作品ベアナックルのBGMについて語る古代氏

と、まあ、近年稀に見る良企画で少々熱っぽく長くなってしまいましたが、ゲーム好き、音楽好きな方は是非一度ご覧下さい。未だかつて、ここまでミクスチャーな音楽が楽しめたのはブルースブラザーズやテクノの教典、MODULATION以来。

Red Bullの企画担当者さん本当にありがとう!翼を授かりました!

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