プレイステーション大ヒットの真実
(
業界本
)
文庫
モノクロ
P
219
★★★
g
\
1200
発行:
1998/7/15
何とも手前ミソなタイトル名だが
現在も業界の王者だから、
と納得するしか無いソニー『プレイステーション』(以下 PS)の伝記。
スクウェア(現:スクウェア・エニックス)
がFF7ごとSCEに移転し大ヒットを収めた翌年
デジキューブで乗りに乗ってた98年次期だけに、
その王者っぷりが本書の随所から香り立つ。
と、
単に手前味噌なホームビデオ的著書かと言えばそうでは無い。
内容の方は、
それまでゲームに関しアマチュアであったソニー陣営が
94年のPS発売を機に王者任天堂に立ち向かい
ビジネス的観点から業界の価値観に切り込みを入れ、
セガを含めた『ハード接戦』や『価格競争』といった修羅場を掻い潜り
勝利を収めていくまでをドキュメントタッチで書き綴った
緊迫感ある内容になっている。
本書から面白い話を一部抜粋させて頂くと、
ソニーがをPSを発売する94年時
同時期に電化製品として業界に参戦してきた、
松下電気『3DO』や『ピピンアットマーク』といった
【今ハード名出してパッと反応出来る奴居るのか?】的、極マイナーなゲームハードが『高スペック製品』
としてライバル視されていた事。
これは現状のSCEからすれば考えにくい事実だが
本書の内容から見ると、
PS以前までSCEは『業界のアマチュア』であり
後押しに強いソフトの権利を所有して無い事から察するに、
恐らくは「揺ぎ無い任天堂」より、
『ライバル製品』に対策を練る程の余裕しか無かった事が理解でき、
この辺、短期間ながらもSCEの下積みが垣間見える。

価格設定を見誤った松下3DOを煽る新聞記事。
弱肉強食+業界の厳しさを思い知らされる1コマ。
本書に出てくるソフトについても
行下のスペースで詳しく解説がされており、
ゲームユーザー以外にも見やすい工夫が施されている。
また、これはネットや業界内部では有名な話となってるらしいが
ソニーはPS発売まで、それまで業界の根元として
君臨していた任天堂と提携契約を結び
「PSX」という名で共産の新ハードの開発を予定していたが、
内部決裂により結局ソニーが独自で新ハード開発を決行したとの事。
その後、発売に踏み切られたPSは、
当初「ハードの月産3万台」という極少売上を目安としてたというのに、その後の全世界1000万台突破を思えば、正に勝てば官軍である。
こうした内部事情他、ソニー前線以前の3強
『メガドライブ』『PCエンジン』『スーパーファミコン』
等の接戦模様がそれぞれ【ソフト】【ハード】共に
丁寧な解説付で掲載されているのも、
ゲーム情報を史学的に詳しく求める
マニアなユーザーにとっては嬉しい仕上がり。

もはや目にする事は不可能になった
幻のSFC接続型CD-ROMシステム。
結局SFCはその後もロムで通されたが
当メーカーを含め現在は主流メディアになってる辺り
何とも皮肉っぽい。
等々、他にもソフトを仕入れる問屋からの流れ作業の詳細や、
中古問題についての論争をTheBESTシリーズの発売効果で和らげた等、
【ハードの解説】【内輪もめ】に留まらず、
企画や商品を立ち上げる際の参考書としても
非常に役に立つ名書だったりもします。
(少なくとも最近ゲームに興味の無い俺でも
戦国時代の一説覗いてるみたいで楽しかったです(笑))
という訳で、ちょっと人とは違う知識を頭に入れて彼女に自慢したいうんちくゲーマーや、
業界人を気取って電車の隅でコッソリとゲームトリビアを繰り広げたいなんて方は是非どうぞ。
繰り返しますが、普通に読んでも面白い本なので
ゲーム好きじゃない方にもお勧めです。