トリックピエロ

 

シニカリズム


<去影社>


ここはオカルト、アンダーグラウンドマニュアル等の
情報を糧にしたコア雑誌を中心に製本を続ける
業界随一の曲者出版「去影社」


今月発行のオカルト情報誌「月夜」の編集担当
「中野正太郎」の帰りを待つ副編集長「島田」が、
貧乏揺すりをしながらパイプの口を噛み締めつつ時計を眺めていた。



島田
「おぉーいー、中野はマダかよ!」




社内に響き渡る罵声に対し黙々とデスクのPCに向かいキータイプを続ける
茶色のショートヘアの女性が空返事をした




ショートヘアの女性
「連絡ないですよぉ」



島田
「ったく、あいつはよー…
マトモな仕事見つけた時は決まって
時計通りに来やしねえ」



ショートヘアの女性
「出張時間利用して
どっかで遊んでたりしてー」





彼女の言葉に向かいに座る不精髭を蓄えた長髪の男が反応した





不精髭の男
「あ、そういや先週の金曜、
俺、中野君に旅行誘われて行って来たよ」



神山 俊二

「正太郎の同僚。
白のTシャツにサイズの大きいジャージで合わせた
ラフな服装が彼のスタイル。

元々は大企業のSEに就任し若くして重役となり
将来有望株として期待されたが、
組織の形態に肌が合わず自主退社。

その後、晴れて無職となり
新宿のバーで知り合った正太郎と意気投合。

そして、正太郎の口車に乗せられ、
成り行きで去影社に同時入社。
名付けて、悲劇の犠牲者第一号である。








沢村 美香

「去影社の編集+デザイン担当。

高校卒業後、
地元から上京し東京の美術専門学校に
入学するも飽きて2ヶ月で中退。

その後、フリーターとして、
ウェイトレス、アパレル販売員、ベビーシッター等々、
数多くのバイトを体験。

趣味は音楽。
クラブミュージック〜クラシックまで、幅広く聴く。
週末には様々なライブハウス〜クラブに足を運び、
好みの音探しを行っている。

また、彼女の月夜での担当企画として「ホラー映画と音響」がある。
オカルト映画、ホラー、スプラッター映画に使用された
SEやエフェクト、コアなローカル音源を製作者に直接インタビューし
誌面で紹介するのが彼女の仕事。


これが予想外の反響で人気企画となる。
それにより入社当時雑用だった彼女のポストはグンと上がり
その功績を活かして現在は趣味と仕事の兼ね合いで
社の経費をおろしては仕事の題材と称し、趣味のレコードを買い漁っている。」





島田
「おいよー、
その日爺さんの葬式だった筈だろ・・」



美香
「えーっズルーいっ!どこお!?」



神山
「京都、彼の実家旅館だからさ。
美味しい郷土料理ご馳走になってね、
舌でとろけんだよ刺身なんか♪」




「ゴッ!」







その直後、神山の後頭部に島田の筆箱が直撃した






神山
「いてっー!くうぅ…!
何すんですかー島田さん!?」



島田
「何すんだじゃねー!
何サボり魔に便乗してんだよ!」



美香
「そーだっ私も誘いなさい!」



島田
「おめーらマトめて仕事しろ!」






「ガチャッ」






その時、罵声が飛びあう去影社のドアが開いた。



中野
「ただいまーっと♪」



美香
「土産ー!」



島田
「てめー何時間遅れてんだよ!」



神山
「正太郎君何とか言ってやってくれよ!」



中野
「ちょっ、マトめてくんない…(^^;」

Last Update : 2004/11/02