目的地の医院までの道路運行途中、
自らの不注意で目の前に斜線変更してきた車体に
運転する車を衝突させてしまった透は
ガードレール脇に車を一旦停車させた
透
「ごめんっ俺ちょっと前の車内の様子見て来るから!」
マリー
「…」
「バタン」
透は動揺しながらそう言うと、
蒼ざめた面持ちで前方200メートル程先に
並ぶ様にして停車された白い車体に駆け寄っていった
《前方車内》
道成
「ったく冗談じゃねーぞ!
早朝勤務終えたらバカ息子の子守り
オマケに衝突事故とくらぁ…」
その車内には署で同行捜査にあたる
中尾道成が乗車していた
道成は苦虫を噛み潰した様な顔でそう口にすると
後方から駆け寄る加害者の姿をバックミラーで確認した
道成
「どこのバカか知らねーが
お灸すえてから署まで連行してくか…」
透
「参ったなあ…」
そこには冷や汗をかきながら自分の車に駆け寄る
見覚えのある長身の男が写っていた
道成
「(あの野郎確か…)」
道成は透を見てフトうつむき現場の状況を思い返すと、透が車体の窓ガラスを叩く音と共に
パワーウィンドウをONにして透の顔を再確認した
透
「すいません!こちらの不注意で衝突してしまっ…」
道成
「カブから教習され直してこいバカ野郎が」
透
「あれ?」
道成
「お前等の担当事件と同捜査にあたってる中尾だ」
透
「あ゛ー!?」
道成の顔を見て驚愕した透は彼の顔に突き指を立てると
その指の横を瞬く間も無くすり抜けた道成の鉄拳が頬にヒットした
「ゴキャンッ!」
透
「ぐぁっ…!」
鈍器の如く重い衝撃を受けた透はその場に崩れ落ち、
道成はその様子を確認すると煙草に火をつけ車の戸を開いた
「バタン」
道成
「物じゃねーんだよ俺は」
透
「痛タタタ…すいません」
そして車から出てきた道成の姿がマリーの視界に入った
マリー
「あーっ!ていの悪い馬鹿は何時も時間無駄にしやがる!」
ストレスの溜まりきった彼はいつしか男型の口調に戻り、
不穏な静寂漂う車内で怒号していた