マリー
「事件のいきさつお聞かせ願えるかい」
須藤警部
「連絡は入ってないのか?」
須藤がそう言うと横に立つ透が割って説明に入った
透
「心理捜査課は昨今多発している凶悪犯罪を
内壁から正す為に設立された特別捜査の一環で、
基本業務は関係者の精神ケアや、現場状況から見た犯行の推測が主業で、
捜査に関する具体的な情報は現場で直接確認する様にされているんです。」
須藤
「成る程」
須藤は一つ頷くと事件の説明を始めた
須藤
「ガイシャは <伊勢 健太郎> この先にある「炎陽中学」に通う14歳の中学二年生。
一昨日の深夜、彼の自宅近所に住む住人から彼の生徒手帳を発見したと通報が一件。」
須藤はそこまで言うと、
白の手袋を装着後、傍に敷かれた青いビニールシートの中から
先程健太郎の母に見せた手帳を再び抜き出しマリーに見せた
須藤
「彼だ」
須藤は赤茶に染まった手帳の保護シート部位下に見える顔写真を
マリーに見やすい様にと手袋を着けた人差し指でニ、三、軽く拭うと、
そこには先程よりクッキリした健太郎の顔が見えた
マリー
「男前じゃないの」
透
「マリー!」
透は眼を強く細めるとマリーの不謹慎な一言に喝を浴びせた。
その呼び名を耳にした須藤は透の顔をキョトンと見つめている。
須藤警部
「…?」
一瞬、気配を察知したマリーは須藤に目配せした後言伝た
マリー
「仇名だよ。」
須藤はマリーの言葉を聞き流す様に話を続けた
須藤
「が、手帳は見ての通り」
須藤は先程手帳を拭った右手の人差し指を見せ、
ペッタリ貼りついた手帳の横溝を左手の指でなぞる素振りを見せる
マリー
「ペンキかいこりゃ」
眉をしかめたマリーが怪訝そうに言葉を返す様を透は息を飲んで見つめる
須藤
「相当の出血量がないとこうはならん」
間に入る須藤のカラっとした言い切りの裏腹にある重さに
一瞬冷ややかとした空気が流れ
マリーの横に立つ透は一歩足を退きその掛け合いを見ている
マリー
「まあ、致死量には」
透
「十分でしょうね…」
透が少し震えた声で反応した後、
須藤は屈み込むとシートの下からもう一つ何かを取り出すと、
後ろを振り向きマリーに言った
須藤
「そっちの坊や平気かい」
マリーは眉をしかめ、
隣に立つ透に視線を合わせず口を訊いた
マリー
「あんた 甘党?」
透
「は?」
透はマリーの突拍子な問答に唖然とすると、
しばし戸惑い聞き返した
透
「何だよソレ」
マリー
「甘辛どっちが好き」
透
「辛子はあんまり…」
マリー
「これ舐めときな」
その返事を聞いたマリーはジャケットの内ポケットを探り、
二本のスティックキャンディを取り出し透に押し付けた。
透
「は?」
マリー
「甘党なんだろ。口放り込んどけ」
透
「?…ムグムグ…」
マリー
「見せて頂戴。」
マリーはそういうと、
静止する須藤に首で指図を向けた
須藤
「…」
須藤はシートの中をゴソゴソと探りながら何かを取り出し終えると、
2、3手で払ってから両手の平からシーツの上にそれを転がした。
< コロン… パラパラ >
それは砂利と土埃が疎らについた卵の様なもの二つと、
切断された指が10本。
透
「…」
透は上の空を眺める様に目の前の異物を視線にしている。
須藤
「分かりずらいか」
須藤はそういうと2つの球状の物体に気遣いながら
向きを変えてマリーの方へ向けた。
それは濁った黒の大きな斑点と、
疎らに彩られた赤の線をこちらに向けた
マリー
「コッチ見んじゃないよ」