トリックピエロ

 

伊勢佐木町の女?






< 伊勢佐木町 >









ここは横浜は伊勢佐木町の「イセザキモール」
並木道に挟まれ空気の落ち着いたレンガ路を軸に
様々なショップが立ち並び人々を飲み込んでは吐いていく。

この辺りは骨董品店やカジュアルショップ、
玩具、本屋、レストラン、ブランドデザイン店
等、多種多様な店が建ち並んでいる事から「若者世代〜老夫婦」まで、
訪問者の色も十人十色で、
客層に偏りの無い遊び場として地元他遠方からの訪問者も多い人気の歓楽街だ。

また、港が近い為、外国人の訪問が多い場所でもあり、
夜中は近辺の風俗店が活気付き、
客引きやホストの出入り作業で禍々しい空気を臭わせる闇の側面も含んだ町である。


この町の不二家レストランに黒のスーツに赤ネクタイをつけた細身の男が
ビンボー揺すりを大きく繰り返しながら
ある人物が表れるのを今やまだかと待ち続けていた



黒スーツの男
「早くしてくれよおっ…」



<コッコッ…>



その時、他の客の話し声に混じって奥の方から響き聞こえたブーツの足音が彼を振り向かせた



スーツの男
「…あ」




ちぢれたオカッパ頭に度入りの青サングラス。

頬に彩られた柔らかなファンデーションの化粧が
その丸顔をコケティッシュに演出している。
唇に引かれた鮮やかなルージュラインの端には
カラフルなスティックキャンディが咥えられていた。




スーツの男
「マリー!」




彼の名前は大嶺秀俊

性別 男
年齢 不詳
経歴 不詳

神奈川県警の捜査課で犯罪心理の研究・調査に当たる女装趣味の異端刑事。
本業は精神科医だったが現在は退職。

職を下ろした現在も、患者からの依頼を元に
休日等の時間を利用してフリーで診療を行っている。

過去のオトリ捜査で変装したのをキッカケに女装に目覚め、
現在では私生活〜言動までも異性化してしまった。

が、やたらトーンの低い濁声と
恋愛の対象範囲は以前変わらず、
手癖の悪い女好きとしても悪名高い。


いつも口端にスティックキャンディを咥えてシャブり続けてる様と
オトリ捜査で真似たオカマパブのマリリンを当てて、
いつしか署内で女装好きの「キャンディマリーという
愛称が定着する様に。

本人は眼が合うまで相手の事を無視するタチなので
名乗り出る時以外は「名前なんかどうでもいい」
との事で意識はしてないらしい







マリー
「あら、早かったねアンタ」




スーツの男
「早いじゃ無いだろう!
事件当日の待ち合わせに10分も遅れてくるなんて…」




その時マリーは左手を大きく上げ店員の目を自分の方に向かわせると、
手を上げたまま片方の手を口端に添えメガホン代わりにこう呼びかけた




マリー
「あ、ゴメンよ!ショートケーキ二つ!」




スーツの男
「…」




男はマリーの様子を見るなり喋るのを止め、
バッグから携帯を取り出しある場所にコールをかけた




スーツの男
「もしもし…捜査課の竹内です。アクシデントにより30分遅れて現場に…」




彼の真剣な眼差しを他所に
マリーは目元を一杯に垂らし満面の笑みを表情に浮かべ口を開いた




マリー
「ここのショートは美味いんだよお」




<プツッ>




男は瞬時に携帯を切った

Last Update : 2003/07/11