トリックピエロ

 

喉越し悪い時間割


彼女の名は「竹下八重」
>28歳
>独身
>血液型=B型

高校を卒業後 芸術大学に入学するも、
教育方針に背を向けた彼女は1年で中退。

その後、在学中にアルバイトで貯めた貯金を下ろし
単身ニューヨークに転居。

渡米後、数ヶ月間はヒッピーまがいの生活日々が続く。
そんな生活を続ける内に始めた暇潰しに行っていた
街頭でりスプレーアートが現地の美術雑誌編集者の目に止まり、
彼女の名は瞬く間に全米各地に知れ渡る様に。

そうした経由を経て、
異国で人気イラストレーターとして依頼の絶えない
裕福な環境を手に入れた彼女だったが、
4年間の活動に自ら見切りをつけその翌年母国に帰国。

5年の海外生活の内、彼女が過ごしたそのライフスタイルは
元々オープンな八重の性格に輪をかけた
アバウトな毒舌口調に現在も色濃く現れている。


日本に帰宅後、彼女が教職資格を持った理由は、
アーティスト活動に飽きたのと、
「刺激的そうだから」との事から

























明彦
「え…と」




八重
「アンタ校門前でブッ倒れてたんだよ、
風紀委員会の女の子が血相変えて呼びにきて…」




明彦
「ああっ…!」




明彦は思い出す共に膝を叩くと
目を細め口をギリっと結び声をあげた




明彦
「痛っ…!あれ?」




彼が叩いた膝には見覚えのない包帯が巻いてあった




八重
「寝起きに何やってんの…(苦笑)」




明彦
「これ、ヤエネエ?」




八重
「打撲してたから、ついでに巻いといたよ。
ま、頭は軽い脳震盪だろうから心配ないでしょ。」




明彦
「ありがと」






明彦が微笑みながら礼を言うと、
八重は視線を落とし明彦の膝を見た後、
口をスボめ伺う様な目つきで低くこう呟いた




八重
「バカが多いわね…」





明彦
「ハハ…(笑)」




カラっとした明彦の態度を見るなり、
一変表情が明るくなった八重は彼にこう訊ねる




八重
「頭打ってんだし、少し寝ていきなさい」




明彦
「今日はテストあるから」




八重
「四時限目でしょ?
まだ2時限目だから 平気 平気。」




明彦
「そっか…うん、まあ…」




八重
「よしっ決まりっ」




八重の型破りな決断力は優柔不断な明彦にとって実に頼もしいものだ。
同時に彼の主体性の無さを自らに痛感させられる部分でもある。




明彦
「でも、もう眠くねえや。」




八重
「グースカ寝たもんねぇ(笑)」




明彦
「ん」




八重
「それじゃ茶でも入れるから」




八重はそういうと保健室の隅にある冷蔵庫の中から
麦茶入りの瓶を取り出し机の上のコップに注いだ



<ジョボボボ…>






明彦
「サンキュっ」




明彦は軽くそう言うと麦茶の注がれたコップに口をつけ容器の1/4程を喉に通した




明彦
「プハァッ…!」




彼が一つ息をつくと八重がやや神妙な面持ちでこう尋ねた




八重
「あんた2年の伊勢君って知ってるかい?」




明彦
「C組の人でしょ?風紀委員の。
眼鏡かけてて、真面目そうな…」




八重
「そう」




明彦
「俺、話した事ないけど。」




八重
「亡くなったんだって」




明彦
「マジ…?」




八重
「昨夜近所の公園で遺体が発見されたって…」



明彦
「え?」
















・・








・・・





老人
「時計…壊れたんでしょ?」



明彦の脳裏に今朝ベンチで覗いた龍の時計盤が浮かぶと同時に、
学校のチャイムが鳴り響いた。









<キーン コーン…>









Last Update : 2003/06/30