ユースケとケイ

category : レトロゲームアイランド 本章 2014年8月8日 

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ここは公立 市大高校 6年2組の教室
校内に退屈な鐘の音が鳴り響く。

季節は6月。空では曇と風が空を忙しなく動き、
その間のどんよりとした空気が太陽を包み込み、
雨の気配を感じさせる、嫌な湿気が校内全体を包み込んでいた。

彼の名は、小松雄介。高校2年生。

成績は中の下、スポーツに興味も無く、
女子生徒の割合が比較的多い多い我が校において、
異性交遊にすらさして興味が無いゲーム趣味のしがない在校生で
本日ようやく終わりを告げる6時限目のチャイムを聞き流している所だ
気候による欠伸と偏頭痛に悩まされながら、
頬杖をつき退屈そうな溜息をしていると
後ろから「ガラガラ」と教室のドアを開ける音がした

 


「こんにちわ~ ユっさん居る?」

「ん?ああ、ケイ、俺ここだよ」

 

 

その呼びかけに応じる様に左手を挙げたユースケを見るや否や
小走り気味に近づいてきた彼は、
ニコニコしながら僕の前の空いてる席にドカっと腰をかけて
話しかけてきた

 


「あのサ、オジさんが新しい筐体入荷したって言うんだよ、
ちょっと遊びたいから帰り空いてたら寄ってかね?」

 

 

この狐目が特徴的な生徒は僕の友人の同級生で
名は美津島啓(みつしまけい)と言う。

雄介と同じでゲームを趣味しているのだが、
叔父がビデオショップ「パレスト」を経営しており、
そこに店長の趣味で店内に併設されたゲームコーナーを身内のよしみで自由に行き来出来る夢の様な特権の影響で、
通信販売で自腹を切ってゲーム基板を購入する領域にまで手を出してしまった筋金入りのゲームキッズだ

クラスは2年5組の所属で、教室も下階の離れにあるので、
基本的に休み時間や登下校時にしか顔を合わせる事は無いのだが、
それでも校内校外併せての同行時間は一番多い気の置けない親友の間柄である

 

 

「ああ、いいけどさ、
部外者の僕が無料で連コするのは周りの目が痛い様な・・・」

 

「あ、それ大丈夫、オジサンが昨日は法事で疲れたから、今日は店の方は臨時休暇って事にして俺たちで貸し切りにしていいって言うから」

 

「・・・」

 

 

ケイの快い申し出にユースケが若干引け目を感じ、引きつり笑いが流していると
教室にホームルームを知らせるチャイムが鳴り響いた

 

 

 

 

 

「あっ、やべっホームルーム始まるじゃん、
で、どうする?行ける?」

 

 

ケイは腰掛けた椅子から立ち上がり教室の外に注意を向けつつ
頭を掻きながら返事を急かすと僕は笑顔で答えた

 

「ケイがいいなら付合うよ」

 

「分った、それじゃ下駄箱ん所で待ってるから」

 

 

ケイはそう言い残すと教室に戻ってくる生徒に紛れながら、
セカセカと自分の教室へと帰って行った。

そして、チャイムが鳴り終わり、
生徒達が全員着席すると共に我がクラスの担任が教室へ入ってきた。

日直の生徒の号令で、生徒達が一連の挨拶を終えると担任が口を開く

 

「はーい、おつかれ様でーす。本日のホームルームを始めたいと思いますが、
その前に~ これをちょっと見てみましょう」

 

 

担任はそういうと小脇に挟んでいた雑誌を手に取り僕ら生徒に見せびらかした

 

 

「えー、これ、45ページ、
関東プログラム大賞の項目 最優秀作品賞 細田英治」

 

 

「お~!」

 

 

 

 

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